知らない間に急展開

(Turn117『交わらない道』までのネタバレを含みます。また、夢主のことをアバターネームではなく本名で呼んでいます。)



土砂降りの雨がまるで幻だったかのように
眩いほどの光の中で
リボルバー様が、負けた。


手札事故もなければ調子も悪くなかった、
むしろ早々に相手のライフを削り、トポロジックゼロヴォロスの効果で相手のカードを全て除外したり、除外されたカードの分自身を強化するなど、リボルバー様に有利な展開になっていた。


それでも、負けた。



リボルバー様がソウルバーナーに負ける、という予期せぬ展開に私は酷く衝撃を受けた。
なぜだか私は、リボルバー様はプレイメーカー以外に負けることなど万に一つも無いと思っていた。

私が崇拝しているリボルバー様だって一人の人間であり、ずっと勝ち続けることなど不可能に近いことなど分かっていた。
それでも、リボルバー様を負かすことができるのはプレイメーカーただ1人である
と信じて疑っていなかった。

未だに心乱れている私を嘲笑うかのように
太陽は優しく私を照らしている。



ソウルバーナーの最後の攻撃が決まる時、
リボルバー様は彼に向かって「見事だソウルバーナー」と優しく微笑んだ。
それは今までに見たことがないほど、慈愛に溢れる表情だった。その表情を引き出したソウルバーナーを羨ましい、と心の底から思った。きっとリボルバー様のそんな表情、私には一生かかっても引き出せない。

そしてデュエルを終え息を切らしているふたりを黙って見つめることしか私にはできなかった。


「お前を繋ぎとめていた過去の呪縛も今の光とともに消えていったようだな」
「リボルバー、お前最初からメールなんてどうでもよかったんだな、俺のために」
「いや、これは最初から自分の為にやった事だ。だからこそ本気で戦った。私自身の呪縛を解くために」
「リボルバー・・・・・・」
「闇のイグニスがプレイメーカーと接触してきたのなら、それが最後の戦いになるだろう。奴は再戦の余地など残すまい。全てはプレイメーカーの肩にかかっている。私の、いや、私たちのすべきことは終わった。なあ、名前」
「そう、ですね。私たちのやることは終わったようです」

これで本当に終わりなのだと、リボルバー様の表情を見て悟った。私だってハノイの一員としてリボルバー様と共に自首をするつもりであった。その事をリボルバー様も承諾してくれた。だから自首しに行くのは苦でもなんでもなかった。
でも、まだリボルバー様と共に過ごしていたかった、という私の小さな我儘が私の胸を酷く締め付けていた。

「リボルバー、名前」
「お前達まさか」

プレイメーカーとソウルバーナーがリボルバー様と私の表情を見て何かを悟ったのだろう。


「私達は自分の罪を償う」
「待て」

ソウルバーナーの制止の言葉に、歩き出したリボルバー様は足を止め振り返った。
私もリボルバー様に着いていこうとその背中を追いかけようとしたが、同じように足を止めソウルバーナーの方を見つめる。


「それは俺が許さねえ。特にリボルバー、俺はお前が法に裁かれ罪を償うなんて許さねえ。お前達はこれからもネットワークの監視者を続けるんだ」
「どういうことだ」
「ソウルバーナー、どういうこと?」

私たちの自首を止めようとし、ネットワークの監視を続けることを示してきたソウルバーナーの真意が掴めない。


「俺は今の件が片付いたら故郷に帰るつもりだ。俺はそこで以前のように暮らす。きっと時が経てばロスト事件を知っている人々の中で、その記憶は薄れていく。俺もそうなるだろう。もしかしたら事件のことなんて忘れて生きられる日が来るかもしれない」
「ソウルバーナー」
「だからこそ!お前が罪を償い事件を忘れることなど許さない。たとえみんなが事件を忘れても、俺が事件を忘れても、リボルバー、お前はずっと覚えていてくれ、あの事件の苦しみを、あの事件の悲しみを!」


ソウルバーナーはリボルバー様にロスト事件のことを忘れないでくれ、と強く願った。
そこに私の名前が上がらないのは、この中で私だけロスト事件になんの関与もしていなかったからだろう。その事は私だけ蚊帳の外であることを強く感じさせた。



「それが望みか」
「あぁ」
「ならば私はその旅を始めるとしよう。
名前お前も着いてきてくれるか?」
「もちろんです、リボルバー様。私はリボルバー様と何があってもずっと共にいます」

ネットワークの監視者を続けることを決めたリボルバー様が私を誘ってくれたことがとても嬉しかった。
ロスト事件になんの関わりをもっていない、ただのハノイの騎士の一員である私と共に居てくれる選択肢がリボルバー様の胸にあったことが酷く嬉しかった。


「リボルバー、お前に会えて良かったよ」
「私もそう思う。さらばだソウルバーナー、プレイメーカー。行くぞ、名前」
「はい!じゃあ、さよなら。ソウルバーナー、プレイメーカー」

それだけ言い残し、私とリボルバー様は直ぐにリンクヴレインズからログアウトした。









現実世界に戻ってきて目を開けた私が一番最初に見たのは、至近距離で私を見つめるリボルバー様、いや、了見様だった。


「りょ、了見、様」
「どうした?」
「あの、近い、です」
「あぁ、すまない」


そう言うと了見様は微笑みながらほんの少しだけ距離をとった、はず、なんだけど、
それでも、距離がいつもより近くて心臓に悪い。激しく動く心臓の音が、了見様にも聞こえてしまいそうだった。



スターダストロードよりも美しい青をもつ瞳に見つめられ、何も出来ない私を見つめていた了見様が「フッ」と声を出して笑った。


「な、何がおかしいんですか!」
「いや、困ったような表情のお前が随分と愛らしくてな」
「了見様は私が困ってるのをわかってて見つめてたんですね」

じとーっと恨みがましい瞳で了見様を見つめるが、私のそんなささやかな対抗なんて了見様は全く気にしない。それどころかさっきよりさらに楽しそうだ。

「名前は本当に可愛いな」
「了見様のお綺麗な顔に言われても嫌味しか感じませんよ。そしてお世辞ありがとうございます」
「私が世辞等言わないのはお前は十分知っているだろう」
「そう、ですけど」

了見様と過ごした時間はスペクター様や三騎士の皆さんと比べれば短いけれど、ほかのハノイの騎士に比べるとそれなりに長いので、了見様のことならある程度分かっているし、了見様も私のことを少しは分かっている、と思いたい。


あぁ、そういえば、
ログアウトしてから起きてからの密かな疑問を了見様に聞くのを忘れていた。

「了見様、あの」
「なんだ?」
「ログアウトした後どうして私の顔を見つめてたんですか?」
「あぁ、名前が私にプロポーズをしてくれたことが嬉しかったのと早く起きないかと思って見つめていた」
「えっ」


頭の中が真っ白になった。
今了見様はなんと言った?私が了見様にプロポーズ?え?

「あの、私いつプロポーズなんてしました・・・?」
「言っただろう、『私はリボルバー様と何があってもずっと共にいます』と」
「言った!言いましたけど!プロポーズじゃないですよ!?」
「そうか残念だ。好きな相手から一生共にいたいと言われて柄にもなく浮かれてしまったようだ」


頭が真っ白になるのは本日二回目だ。
了見様が私を好き?ありえない、ありえないでしょ。これはもしやなにかのドッキリで、もうすぐスペクター様達が現れる展開だったりする?


「名前」
「はいっ」

了見様に呼ばれ変に意識しちゃって声が裏返った。恥ずかしい。
そんな私を了見様は微笑ましく見守っている。なにこの状況、すごく照れる。

「私は名前のことが好きだ」
「あ、ありがとうございます・・・?」
「そしてこれからも共にいたいと思っている」

真剣な目で了見様に告白をされた。
そして私の解釈が正しければこれは了見様からのプロポーズだととってもいいんじゃないか。


了見様を崇拝の対象とし憧れの目で見ているだけと押さえ込んでいた私の恋心が再び顔を覗かせてきた。

ここは恥ずかしさを捨てて勇気を振り絞って返事をすべき、と口を開こうとした瞬間




「すまない名前、私は今から藤木遊作のもとへ行き渡さねばならない物がある」


それだけ言い残すとクルーザーの鍵を持ち了見様は足早に消えてしまった。




・・・・え?
告白してきて返事も待たずにどっか行っちゃうの?了見様めちゃくちゃマイペースすぎない?ていうかなにこの急展開色々頭が追いつかないんだけど。
とりあえず言えることはただ一つ


数分前の私へ
前言撤回します。
私、了見様のこと全然わかってなかったみたいです。



Top