「『いちよんいちに』ってなんだ?」
「…白なの。」
「なにが?」
「いちよんいちにはね、白なの。
まっしろで、かっこいいの。」
「ふーん。」
「あなただれ?」
「おれ?おれは―――」








「―――か、い…と」

フラッシュバックする記憶。
あの時、あの場所で、私に『いちよんいちに』のことを尋ねてきた少年は、私に笑顔を向けてきた、あの男の子は、確かにそう言った。


「そう。―――黒羽快斗。」
「……っ……!!!」

知らなかった。気付きもしなかった。
忘れていた、というのが正しいかもしれない。
この前まであまり話したこともなく、ただのクラスメイトだと思っていた、今では私の中で存在が大きくなっている彼に、私は幼い頃に出逢っていたんだ。

「…ほんと、に…?」
「…………。」

彼はまた、感情がわからないような笑みを浮かべた。
貴方は今、何を考えているの…?

「時は経ち、偶然か、はたまた運命のイタズラか。
少年と少女は知らず知らずのうちに再会を果たしていた。
そして、運命の日。
少女は再び、白――『いちよんいちに』に出逢うことになる。」
「………っ、」

彼は私の方へ向き直り、私の頬へと手を伸ばす。
そう、あの日と同じ。"運命の日"と同じように。
彼はまた、魔法のように、白いバラを出した。

「……種明かしは主義じゃないんですが。
このことは、明かすべきではない、けれど。
今日だけは、貴女だけは特別ということで。
…もう名前嬢はお気付きでしょうが、私は――俺は、」

シルクハットを彼はそっと取る。
露になった顔は、やはり。私のよく知る人物のもので。

「……黒羽、くん…」
「お前ぇには敵わねーよ。」
「…わかるよ、だって…黒羽くんだもん。」
「んだよ、それはよ。」
「いいの。…教えてくれて、ありがとう。」

言いたくないことだったろうけれど、教えてくれて。
むしろ、教えてはいけないことだったろうけれど。
どうして怪盗をしているのか、とかはわからないけれど。
それでも、教えてくれたことが嬉しい。
少しだけ気恥ずかしそうにしている彼を、愛しく思ってしまった。

「……白いバラ、いっぱいになってきちゃったな。
綺麗だよね、このバラ。ほんと、キッドみたい。」
「これは、お前ぇに合うと思ったから―――」
「え…?」

バラを受け取ろうとした手が止まる。
私に合うというのはどういうことなんだろう。
また少し照れたような顔をする黒羽くん。
キッドのときのポーカーフェイスとは違う、感情を出した表情をする彼を、可愛いと思ってしまった。

「白いバラの花言葉、知ってるか?」
「え…っと、純潔、じゃなかったっけ…?」
「そう。純潔、清純、尊敬とかが有名だな。」
「それがどうしたの?」
「俺が最初に渡したのは、清純って意味。」
「え?」
「その次のは、まぁ花言葉というより、俺が無事って意味で、それで、これな。」
「…これは?どういう意味なの?」
「その他にも花言葉あんだよ。これは―――」

バラを持った私の手に重ねるように触れた手。
ふと近付いた距離に息が止まる。
耳元へと寄せられた唇。耳に触れた吐息が、熱くて。
甘い痺れが体を走る。


「『私はあなたにふさわしい』」
「―――…っ…!!」


少しだけ離れた距離。覗きこまれた彼の目は、真剣なもので。
一気に顔へと熱が集まる。
どういう意味か、なんて考える余裕もなくて。
こんがらがる頭とどんどん加速する心臓。
そんな私を見て、彼は少しだけ笑った。
そしてまた、恭しい素振りでこう言った。

「それでは、いよいよショータイムといきましょう。」
「は…っ?」
「最も美しい星を頂いてごらんに入れましょう。」
「なに、…!?」

真っ暗になる視界。瞼を覆うぬくもり。
彼の手によって、私の目は覆うように塞がれた。

「なにして…っ」
「最も美しい星、貴女の瞳に映る星を頂きました。」
「は…っ?な、にそれ、キザ……っ…!」

言葉を遮るように唇に触れた熱。
離れてはまた触れるその熱に翻弄されて、思考はもう働いていなくて。
この熱を与えてくる彼にしがみつくことしかできない。


熱い、"恋の吐息"を与えてくる白いバラのような貴方が、

ただ、愛しい。











ホワイトローズ






fin.



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