6.
「それにしても、安室君もそうだが、何故苗字君もここにいるんだね?」
「あ、私は、仕事帰りに偶然、依頼人を待ってる毛利さんに出会いまして…」
この前事件に巻き込まれたことや、ここまでの経緯を目暮警部に話すと、そうか。と呟いた。
元気そうでよかったよ、と言ってくれた目暮警部に、ありがたい気持ちとほんの少しの罪悪感に襲われ、それを誤魔化すように笑って、目暮警部も。と言えば、笑ってくれた。本当に優しい人だ。
警察の方が引き上げていく中、安室さんは車を回してきますと言って出ていった。
しばらくして戻ってきた安室さんに呼ばれ、皆で下へ降りると、そこに停まっていたのはマツダ、白のRX-7。私は呆然と立ち尽くした。この車が愛車だということは知っていたが、ただのアルバイトしてる私立探偵っていう設定で、こんな車乗ってていいのか。
呆然としている私を他所に、皆その彼の愛車へと乗り込み、車は発進した。
「そういえば、この車って佐藤刑事の車と色違いだよね!」
「あーそういえばそうね。美和子は赤でね。」
「名前さん、佐藤刑事も知ってるんだね。」
「ええ、美和子は1個下でね。結構仲はいいのよ。」
蘭ちゃんは、色違いだなんて可愛らしいこと言っているけど、目敏い人なら車代、維持費諸々くらいは大体わかるだろうし、どこから出てくるんだその金ってなるだろう。彼はれっきとした公務員だからこそだろうが、それを知る人は数少ないのだから。こんな堂々と乗ってていいのか。まぁ彼のことだから、上手い言い訳でもあるんだろうが。
「てか、なんでお前らまで乗ってんだよ。狭いじゃねーか。」
「す、すみません。この車、後ろに4人も乗せるように出来てないもんで…」
「あ、いえ、そんなこと…お父さんこそなんで乗ったのよ!」
「お、俺は圭さんが心配でだな…」
「私だって、人が自殺した事務所でコナン君と2人きりじゃ心細いもん!」
「だったら英理の所にでも行ったらいいじゃねーか!」
言い合いを始めた毛利さん親子を横目に苦笑する。
確かに狭い。私が降りましょうか?という気分だ。後が怖いからそれは叶わないのだけど…
助手席には樫塚さんが座り、後部座席に毛利さん、蘭ちゃん、私と並んで座り、コナンくんは蘭ちゃんのお膝の上だ。コナンくんは最初恥ずかしそうにしていたが、今では少し慣れてきたのか、何かを考えているような難しそうな顔をしている。
それにしても事務所のトイレで自殺されるなんて、住んでいる毛利さんや蘭ちゃん、コナンくんがすごく可哀想になってくる。特に蘭ちゃんは年頃の女の子だし。綺麗に片付けられて清掃したとしても、気味が悪いだろう。
運転席をそっと見れば、色素の薄い綺麗な金髪がさらりと揺れる。運転している彼を後ろから見るのは、なんだか新鮮な気分がした。ましてや、また彼の運転する車に乗ることがあるなんて、誰が思っただろう。
私は気付かれないようにそっと息を吐いた。
車が到着したのは、綺麗で大きめなマンション。
エントランスからエレベーターへ乗り、最上階の6階へと上がる。
親のスネで兄と二人暮らしを、なんて樫塚さんは言っているが、それにしてもいいマンションだ。
「あの、もうこの辺で結構ですよ?誰も待ち伏せしてないことはわかりましたし。」
「そ、そうですな…」
「じゃあ私達はここで…」
「あー!トイレ行くの忘れてた!どうしよう!漏れちゃうよ!
お姉さん、トイレ、トイレ貸して!おねがい、もう、ガマンできない!」
突然大きな声を出してじたばたもじもじとしだしたコナンくん。そういえば夕方頃にトイレ行くって言ったきり行ってなかったな…ってかそんなにトイレ我慢してたの?膀胱炎になるよ?
渋々樫塚さんは家の鍵を開け、コナンくんはトイレへと向かった。
「あの、すいません、実は自分も我慢してまして…」
「お、俺も…」
「もぉ…」
トイレ行きたいアピールをする安室さんの胡散臭さよ。
絶対なんか企んでるやつじゃない?これ。
毛利さんはどうかわからないけど…もしかしてさっきのコナンくんも…?
「じゃあ、皆さん少し寄っていきます?
お茶くらいしか出せませんけど…」
「すみません、圭さん…」
「いえ…しょうがないですよ」
「出物腫れ物、所嫌わずってね」
「もう、お父さん…」
コナンくん以外の皆がリビングへと入る。
それにしてもこの部屋…少しだけ変な臭いする気が…なんの臭いだろう。
リビングのテーブルの上には、お菓子や酒のゴミが散らばっている。大学時代の友人が集まって宴会をしていたらしいけど…それにしてもすごいな。
蘭ちゃんと一緒にゴミを片付けようとしたとき、マナーモードにしたままの携帯が鳴った。ディスプレイを見れば、明後日に予約のあるクライアントからだ。
「すみません、仕事の電話が…」
一言詫びを入れてから、リビングを出た。
通話ボタンを押して応答するが、電波が悪く聞き取りづらい。
すぐ折り返します、と言って通話を切り、エレベーターへ乗り、マンションを出た。
明後日の予約の確認と、世間話で少し時間がかかってしまった。
戻ろうかと思ったとき、エントランスから樫塚さんとコナンくんが出てくるのが見えた。
向こうからこちらは見えていないようだが、2人でどこへ行くんだろうか?
すると樫塚さんとコナンくんは、車へ乗り込んだ。
樫塚さん、免許証持ってるの?じゃあさっきなんで、身分証として提示しなかったのか…嫌な予感がする。
発進した車を見つからないように、小走りで追いかけるが、段々と離されていく。さすがに車だしこのまま追いかけるのは無理…か。
追いかけるのを少し諦めかけた頃、遠くで車が路肩に停車したのが見えた。しめた、と小走りで追いかけ、物陰に隠れるように様子を見る。
樫塚さんが1人車から降り、どうやら自販機でジュースを買っているようだ。
すると、樫塚さんは車に乗ってるコナンくんからは見えないところで、ジュースのキャップを開けた。バッグから取り出した何かをジュースの中に入れているようだが、ここからではそれが何かは見えない。でも、キャップを開けて入れているということは、多分、睡眠薬か何か…
もしかして、誘拐―――?
再び走り出した樫塚さんの車。もしあれが睡眠薬だとすると、コナンくんが危ない。
私はすぐにタクシーを止め乗り込み、無理を言って樫塚さんの車を追ってもらった。少し困りながらもちゃんと追いかけてくれる優しいおじさんでよかった。
それにしても、なんで樫塚さんが誘拐なんて…もしかして、この事件の一連の犯人が、樫塚さん…?
だとしたらあの部屋の臭い…嫌な予感が頭を過ぎる。
そうだとすると、殺人犯にコナンくんは誘拐されたことになる。
コナンくん、無事でいて―――
しばらく走った車は、ガソリンスタンドへと入っていく。
チャンス!と思い少し手前で運転手さんにお礼を言って支払いをしてタクシーを降り、ガソリンスタンドへと駆け寄った。
車を降りてトイレへと向かった樫塚さん。
作業をしてるお兄さんの目を掻い潜り、お兄さんが少し離れたとき、私はそっと車へと近付く。
後部座席には、コナンくんが眠っている。…やっぱり、さっきのは睡眠薬だったのかもしれない。
私は大胆にも、そのままそっと車へと乗り込んだ。
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「それにしても、安室君もそうだが、何故苗字君もここにいるんだね?」
「あ、私は、仕事帰りに偶然、依頼人を待ってる毛利さんに出会いまして…」
この前事件に巻き込まれたことや、ここまでの経緯を目暮警部に話すと、そうか。と呟いた。
元気そうでよかったよ、と言ってくれた目暮警部に、ありがたい気持ちとほんの少しの罪悪感に襲われ、それを誤魔化すように笑って、目暮警部も。と言えば、笑ってくれた。本当に優しい人だ。
警察の方が引き上げていく中、安室さんは車を回してきますと言って出ていった。
しばらくして戻ってきた安室さんに呼ばれ、皆で下へ降りると、そこに停まっていたのはマツダ、白のRX-7。私は呆然と立ち尽くした。この車が愛車だということは知っていたが、ただのアルバイトしてる私立探偵っていう設定で、こんな車乗ってていいのか。
呆然としている私を他所に、皆その彼の愛車へと乗り込み、車は発進した。
「そういえば、この車って佐藤刑事の車と色違いだよね!」
「あーそういえばそうね。美和子は赤でね。」
「名前さん、佐藤刑事も知ってるんだね。」
「ええ、美和子は1個下でね。結構仲はいいのよ。」
蘭ちゃんは、色違いだなんて可愛らしいこと言っているけど、目敏い人なら車代、維持費諸々くらいは大体わかるだろうし、どこから出てくるんだその金ってなるだろう。彼はれっきとした公務員だからこそだろうが、それを知る人は数少ないのだから。こんな堂々と乗ってていいのか。まぁ彼のことだから、上手い言い訳でもあるんだろうが。
「てか、なんでお前らまで乗ってんだよ。狭いじゃねーか。」
「す、すみません。この車、後ろに4人も乗せるように出来てないもんで…」
「あ、いえ、そんなこと…お父さんこそなんで乗ったのよ!」
「お、俺は圭さんが心配でだな…」
「私だって、人が自殺した事務所でコナン君と2人きりじゃ心細いもん!」
「だったら英理の所にでも行ったらいいじゃねーか!」
言い合いを始めた毛利さん親子を横目に苦笑する。
確かに狭い。私が降りましょうか?という気分だ。後が怖いからそれは叶わないのだけど…
助手席には樫塚さんが座り、後部座席に毛利さん、蘭ちゃん、私と並んで座り、コナンくんは蘭ちゃんのお膝の上だ。コナンくんは最初恥ずかしそうにしていたが、今では少し慣れてきたのか、何かを考えているような難しそうな顔をしている。
それにしても事務所のトイレで自殺されるなんて、住んでいる毛利さんや蘭ちゃん、コナンくんがすごく可哀想になってくる。特に蘭ちゃんは年頃の女の子だし。綺麗に片付けられて清掃したとしても、気味が悪いだろう。
運転席をそっと見れば、色素の薄い綺麗な金髪がさらりと揺れる。運転している彼を後ろから見るのは、なんだか新鮮な気分がした。ましてや、また彼の運転する車に乗ることがあるなんて、誰が思っただろう。
私は気付かれないようにそっと息を吐いた。
車が到着したのは、綺麗で大きめなマンション。
エントランスからエレベーターへ乗り、最上階の6階へと上がる。
親のスネで兄と二人暮らしを、なんて樫塚さんは言っているが、それにしてもいいマンションだ。
「あの、もうこの辺で結構ですよ?誰も待ち伏せしてないことはわかりましたし。」
「そ、そうですな…」
「じゃあ私達はここで…」
「あー!トイレ行くの忘れてた!どうしよう!漏れちゃうよ!
お姉さん、トイレ、トイレ貸して!おねがい、もう、ガマンできない!」
突然大きな声を出してじたばたもじもじとしだしたコナンくん。そういえば夕方頃にトイレ行くって言ったきり行ってなかったな…ってかそんなにトイレ我慢してたの?膀胱炎になるよ?
渋々樫塚さんは家の鍵を開け、コナンくんはトイレへと向かった。
「あの、すいません、実は自分も我慢してまして…」
「お、俺も…」
「もぉ…」
トイレ行きたいアピールをする安室さんの胡散臭さよ。
絶対なんか企んでるやつじゃない?これ。
毛利さんはどうかわからないけど…もしかしてさっきのコナンくんも…?
「じゃあ、皆さん少し寄っていきます?
お茶くらいしか出せませんけど…」
「すみません、圭さん…」
「いえ…しょうがないですよ」
「出物腫れ物、所嫌わずってね」
「もう、お父さん…」
コナンくん以外の皆がリビングへと入る。
それにしてもこの部屋…少しだけ変な臭いする気が…なんの臭いだろう。
リビングのテーブルの上には、お菓子や酒のゴミが散らばっている。大学時代の友人が集まって宴会をしていたらしいけど…それにしてもすごいな。
蘭ちゃんと一緒にゴミを片付けようとしたとき、マナーモードにしたままの携帯が鳴った。ディスプレイを見れば、明後日に予約のあるクライアントからだ。
「すみません、仕事の電話が…」
一言詫びを入れてから、リビングを出た。
通話ボタンを押して応答するが、電波が悪く聞き取りづらい。
すぐ折り返します、と言って通話を切り、エレベーターへ乗り、マンションを出た。
明後日の予約の確認と、世間話で少し時間がかかってしまった。
戻ろうかと思ったとき、エントランスから樫塚さんとコナンくんが出てくるのが見えた。
向こうからこちらは見えていないようだが、2人でどこへ行くんだろうか?
すると樫塚さんとコナンくんは、車へ乗り込んだ。
樫塚さん、免許証持ってるの?じゃあさっきなんで、身分証として提示しなかったのか…嫌な予感がする。
発進した車を見つからないように、小走りで追いかけるが、段々と離されていく。さすがに車だしこのまま追いかけるのは無理…か。
追いかけるのを少し諦めかけた頃、遠くで車が路肩に停車したのが見えた。しめた、と小走りで追いかけ、物陰に隠れるように様子を見る。
樫塚さんが1人車から降り、どうやら自販機でジュースを買っているようだ。
すると、樫塚さんは車に乗ってるコナンくんからは見えないところで、ジュースのキャップを開けた。バッグから取り出した何かをジュースの中に入れているようだが、ここからではそれが何かは見えない。でも、キャップを開けて入れているということは、多分、睡眠薬か何か…
もしかして、誘拐―――?
再び走り出した樫塚さんの車。もしあれが睡眠薬だとすると、コナンくんが危ない。
私はすぐにタクシーを止め乗り込み、無理を言って樫塚さんの車を追ってもらった。少し困りながらもちゃんと追いかけてくれる優しいおじさんでよかった。
それにしても、なんで樫塚さんが誘拐なんて…もしかして、この事件の一連の犯人が、樫塚さん…?
だとしたらあの部屋の臭い…嫌な予感が頭を過ぎる。
そうだとすると、殺人犯にコナンくんは誘拐されたことになる。
コナンくん、無事でいて―――
しばらく走った車は、ガソリンスタンドへと入っていく。
チャンス!と思い少し手前で運転手さんにお礼を言って支払いをしてタクシーを降り、ガソリンスタンドへと駆け寄った。
車を降りてトイレへと向かった樫塚さん。
作業をしてるお兄さんの目を掻い潜り、お兄さんが少し離れたとき、私はそっと車へと近付く。
後部座席には、コナンくんが眠っている。…やっぱり、さっきのは睡眠薬だったのかもしれない。
私は大胆にも、そのままそっと車へと乗り込んだ。
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