8.
「なんなの…!?何者なのよ坊や!?」
本当に…この少年は何者なのだろうか。
「江戸川コナン…探偵さ。」
「た、探偵…!?」
「お姉さん前!前!信号赤だよ!!」
「…っ…!」
キキーッっと音を立てて止まる車。
ガタンと大きな揺れと共に、いてっという私の情けない声が響いた。
「えっ!?」
「あ、はは…どうも。」
「名前さん、大丈夫?」
「大丈夫だけど痛いわよ…」
「あ、あなた…!」
ガソリンスタンドでいざ車に乗り込んだものの、助けようとした少年はまさかの狸寝入りで、拍子抜けして頭がついていかない私に隠れて!なんて言い、無茶言うなと反論する余裕もなく、寒かったときの為にと持ってきていた暗めの色のストールを広げ頭から隠れるようにかけた。
これ絶対バレるんじゃない…?と聞いたのに対して少年に頑張ってなんて他人事のように言われてからしばらく。
いつバレるかとドキドキしていたが、動揺していたのか見えてなかったか、はたまた私の隠れ方が完璧だったのか(?)、バレることなく成り行きのままコナンくんの推理を聞いていた。
が、突然の急ブレーキによって頭をぶつけ、思わず漏れた声で気付かれてしまった私は鈍痛のする頭を擦りながら体を起こし、椅子の間という狭い所から抜け出した。
樫塚さん…基、浦川芹奈さんは驚いたように目を見開いていて、逆上されてはまずいと宥めようと口を開いた。
「あー待って待って、警戒しないで。警察に連絡とかまだしてないから。」
「…っ、どうして…いつからそこに…?」
「さっきのガソリンスタンドで、ね。ここまで気付かれないとは思わなかったけど…コナンくんが心配で追いかけてきたのに、まさかそのコナンくんに隠れろなんて言われると思わなかったわ。」
「えへへ…」
「えへへじゃないわよ。」
憎たらしいお口はこの口か〜?とコナンくんの頬を引っ張れば、ごめんなさいと呂律の回らないながらに謝ってきたから許してやろうと手を離した。
にしてもなんてやわらかいもちもちの肌。羨ましい。
すっかり緩い雰囲気を出してしまった中、浦川さんは小さく溜息を吐いて口を開いた。
「…じゃあ私の名前は、財布の中のキャッシュカードを見たからかしら?」
「ううん、お姉さんのカードだとはまだわからなかったし。でもネットで調べたら色々わかったよ。」
コナンくんは、浦川さんが少し席を外してる間に調べたことや、そこから考えられる推理を次々と述べていく。
彼女が兄だと言っていた待受の男性が先日の銀行強盗で殺害されてしまったということや、浦川さんがその強盗犯を探し回っているということ。1人はさっき行ったマンションで遺体が見つかったらしく、もう1人は探偵事務所で亡くなっていた男性だということ、そしてもう1人は、浦川さんがさっきからずっと電話を掛けている女性の内の誰かだということ。
そして、浦川さんもそこの銀行員で、殺害された男性が、恋人だったということなど。
ほんとに、この子は何者なんだろうか。
初めて会ったときも、よく気のつく子だとは思っていたけれど。
前は毛利さんがいたからあんまり言わなかっただけなのかしら…?
こんな風にどんどん推理して述べていく姿は、彼を彷彿とさせる。
…そう言えば何も言わずに出てきてしまったが、もしかして怒られるだろうか…?
……今考えるのやめよう。後が怖いけど。
「―――大体あってる?」
「…ええ、そうよ…この携帯の履歴を見れば、昨夜あの男が誰と電話してたかわかると思ったけど…あの男、用心深く履歴を全部消してたの…」
「だったらやっぱり、お姉さんが電話してた3人の女の人に会いに行くしかないね。いいよね?名前さん。」
「え?えぇ…別にいいけど。」
「じゃあ、まずはここから一番近い、豊北倫子さんのアパートから。」
確かに強盗犯のもう1人を突き止めたいのは事実だから異論はない。まぁ、誘拐状態のままいていいのかとは思うけれど。
引っ越してきた親子のフリをするというコナンくんの提案で、配役のない私は車番をすることになった。
と言っても、挨拶に行ったコナンくんと浦川さんの姿を見送り、離れたところに停車してるこの車に乗っているだけなのだが。
2件目を終えてゴミ袋を抱えてきたコナンくんに疑問を浮かべ、ゴミ袋をなんとか処理した後、最後、3件目の手川隆代さんのマンションへ向かった。
3度目の見送りをし、また1人になった車からマンションへ向かう2人の姿を見つめる。
恋人の命を奪った犯人を必死に探し回っている彼女の姿を見て、なんだかもやもやとした気持ちになった。
いくら相手が強盗犯とは言え、彼女は殺人を犯してしまっている上、勝手についてきたにしてもコナンくんを誘拐してしまっているのだ。許されることではないが、それでも。気持ちが少しでもわかってしまうから。
恋人を殺された復讐…か。
私が同じ立場でも、復讐を考えたりするんだろうか、なんてぼんやりと考えてしまう。
とはいえ、今は恋人なんていないのだが。
そう言えば、元恋人であるあの彼は、今いい人がいるんだろうか?
…性格はまぁ置いといて、見た目と人当たりはすごくいいから、モテるのは知ってるし、昔逆ナンされてるのを目撃したこともあるから、まぁ女の1人や2人いるかもしれない。…考えてたら虚しくなってきたからやめよう。
私も新しい、いい男を探した方がいいのかね。なんやかんやいい歳だしなぁ、なんて現実に目を向け出した頃、コナンくんと浦川さんは車へ戻ってきた。
「おかえり!どうだった?犯人わかった?」
「うん!」
「…それで、残りの痩せた強盗犯、さっき会った3人の女の中にいたんでしょ?」
車に乗り込んできた浦川さんとコナンくん。
先程までその話をしていたようで、早く教えてと言いたげに浦川さんはコナンくんに問いかけた。
「うん。名前さんは見たかわからないけど、お姉さんも見たでしょ?強盗犯を捕らえた防犯カメラの映像。あれに、痩せた強盗犯の特徴が映ってたから、わりと簡単だったよ?」
「特徴?」
その映像でコナンくんが見たと言うのは、その強盗犯が左利きだということ。
そして今会ってきた3人の女性、1人目と2人目はどうやら右利きらしい。
最初の2人が違うということは、残るのは1人…
3人目の、手川さんという女性。コナンくんの推理によると、彼女は左利きらしい。恐らく、彼女が痩せた強盗犯なのだろう。
…にしてもよくそんな細かいところまで…本当に探偵のようだ。子供の言う事だから、だなんて言えないような、きっちりとした推理。何者なんだという疑問が更に浮かんでくる。
「どう?納得して自首する気になった?」
「ええ…そうね。坊やの推理に免じて、警察へ行くことにするわ…でもその推理、一つだけ間違ってたわよ?」
「え?」
「樫塚圭って男の部屋から持ち出した拳銃は二丁だけ。もう一丁は、護身用に知り合いのガンマニアに譲ってもらった、本物そっくりのモデルガンよ。もちろん玉は出ないけどね。」
「ちょっと待って、それって…!?」
ガチャッと音を立て、助手席のドアが開かれる。
入り込んできた見知らぬ女性によって、あっという間にコナンくんは捕えられ、彼女の持っている拳銃が向けられた。
「そこまで知られたら、黙って帰すわけにはいかないね!!」
「コナンくん…!!」
「…や、やっぱり、あなたが…!」
この見知らぬ女性が、手川さん―――痩せた強盗犯なのだろう。
彼女がコナンくんに突き付けているのは恐らく強盗犯が持っていた、モデルガンではない本物の拳銃。
迂闊だった。つけられていて、コナンくんを人質に取られるなんて。
「さぁ!早く車を出しな!誰もいない、いい場所に案内してやるからさ!」
「…っ…!」
「ほら、グズグズするんじゃないよ!!」
「きゃあ!」
車内に鳴り響く銃声と共に、運転席側の窓に銃痕が残る。
脅しだけじゃなく、本当に撃ってくるとは…これはまずい。
コナンくんは人質に取られ銃口を向けられているし、浦川さんは恐怖で震え上がっている。
私が、なんとかしないと。
ゆっくりと私達と強盗犯を乗せた車が発進する。
大通りへと出て、北上していく。
さっきいた路地から、赤い車がずっとついてきているが、果たして敵か、味方か。
どちらにしろ、この最悪な状況をなんとかしなければ。
浦川さんは、コナンくんの推理に免じて自首をすると告げた。
さっきまでの彼女の思い詰めていた顔を思えば、きっと彼女は、復讐をしてそのまま自らも死ぬつもりだったのかもしれない。
けれど、この少年の推理と説得のおかげで、生きることを選ぼうとしているというのに。
このまま死なせるなんてできない。もちろんコナンくんも。
私自身も、こんなところで死ぬなんて御免だ。
「…浦川さん、」
「え…?」
「私には、恋人を目の前で殺された苦しみや悲しみはわからないけれど、でも、大切な人を亡くした時の気持ちは、痛いほどわかるわ。」
「…なにを…?」
「……生きようね。死んでしまった人達の分まで。約束よ?」
「さっきからごちゃごちゃと…!大人しくしなさい!!」
私へと向けられた拳銃を持つ手を、反射的に掴み、天井の方へと力づくで向けさせる。
しかしこんな狭い車内で、上手く動けるはずもなく、なんとか斜め上方向に向けられることしか出来ない。
再び発砲された銃弾は、私の手首にある腕時計を掠め、衝撃で右手が弾かれてしまう。
「…っ…!」
再び向けられた銃口。捕えられているコナンくんが抜け出そうともがいているようだが適うこともなく、浦川さんは震えたままただ車を走らせることしか出来ない。
さっきの衝撃で右手が少し痺れている。怪我はしていないと思うが、力が入らない。
どうしよう、どうすれば。このままでは、撃たれる。
―――零。
こんな時に頭を過ぎるのは、彼のことばかりだ。
後悔なのか、それとも。
視界の端に映った、私達の車を追い越していく白の車。
あれは…安室さんの…?
一瞬ちらりと合った目に、どくんと胸が鳴る。
私達を追い越していった白のRX-7は突然角度を変え、横を向く。
窓越しに見えたのは、安室さんが蘭ちゃんを抱き寄せている姿。
胸が、痛い。
あぁ、神様。
こんな状況だというのに、私は、思っていたよりも彼に未練たらたらなようです。
あの人が、他の人を抱き寄せている姿なんて、見たくなかった―――
私達を乗せた車は、目の前に来た安室さんの車へ突っ込み、凄まじい衝撃と共に、車は止まった。
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「なんなの…!?何者なのよ坊や!?」
本当に…この少年は何者なのだろうか。
「江戸川コナン…探偵さ。」
「た、探偵…!?」
「お姉さん前!前!信号赤だよ!!」
「…っ…!」
キキーッっと音を立てて止まる車。
ガタンと大きな揺れと共に、いてっという私の情けない声が響いた。
「えっ!?」
「あ、はは…どうも。」
「名前さん、大丈夫?」
「大丈夫だけど痛いわよ…」
「あ、あなた…!」
ガソリンスタンドでいざ車に乗り込んだものの、助けようとした少年はまさかの狸寝入りで、拍子抜けして頭がついていかない私に隠れて!なんて言い、無茶言うなと反論する余裕もなく、寒かったときの為にと持ってきていた暗めの色のストールを広げ頭から隠れるようにかけた。
これ絶対バレるんじゃない…?と聞いたのに対して少年に頑張ってなんて他人事のように言われてからしばらく。
いつバレるかとドキドキしていたが、動揺していたのか見えてなかったか、はたまた私の隠れ方が完璧だったのか(?)、バレることなく成り行きのままコナンくんの推理を聞いていた。
が、突然の急ブレーキによって頭をぶつけ、思わず漏れた声で気付かれてしまった私は鈍痛のする頭を擦りながら体を起こし、椅子の間という狭い所から抜け出した。
樫塚さん…基、浦川芹奈さんは驚いたように目を見開いていて、逆上されてはまずいと宥めようと口を開いた。
「あー待って待って、警戒しないで。警察に連絡とかまだしてないから。」
「…っ、どうして…いつからそこに…?」
「さっきのガソリンスタンドで、ね。ここまで気付かれないとは思わなかったけど…コナンくんが心配で追いかけてきたのに、まさかそのコナンくんに隠れろなんて言われると思わなかったわ。」
「えへへ…」
「えへへじゃないわよ。」
憎たらしいお口はこの口か〜?とコナンくんの頬を引っ張れば、ごめんなさいと呂律の回らないながらに謝ってきたから許してやろうと手を離した。
にしてもなんてやわらかいもちもちの肌。羨ましい。
すっかり緩い雰囲気を出してしまった中、浦川さんは小さく溜息を吐いて口を開いた。
「…じゃあ私の名前は、財布の中のキャッシュカードを見たからかしら?」
「ううん、お姉さんのカードだとはまだわからなかったし。でもネットで調べたら色々わかったよ。」
コナンくんは、浦川さんが少し席を外してる間に調べたことや、そこから考えられる推理を次々と述べていく。
彼女が兄だと言っていた待受の男性が先日の銀行強盗で殺害されてしまったということや、浦川さんがその強盗犯を探し回っているということ。1人はさっき行ったマンションで遺体が見つかったらしく、もう1人は探偵事務所で亡くなっていた男性だということ、そしてもう1人は、浦川さんがさっきからずっと電話を掛けている女性の内の誰かだということ。
そして、浦川さんもそこの銀行員で、殺害された男性が、恋人だったということなど。
ほんとに、この子は何者なんだろうか。
初めて会ったときも、よく気のつく子だとは思っていたけれど。
前は毛利さんがいたからあんまり言わなかっただけなのかしら…?
こんな風にどんどん推理して述べていく姿は、彼を彷彿とさせる。
…そう言えば何も言わずに出てきてしまったが、もしかして怒られるだろうか…?
……今考えるのやめよう。後が怖いけど。
「―――大体あってる?」
「…ええ、そうよ…この携帯の履歴を見れば、昨夜あの男が誰と電話してたかわかると思ったけど…あの男、用心深く履歴を全部消してたの…」
「だったらやっぱり、お姉さんが電話してた3人の女の人に会いに行くしかないね。いいよね?名前さん。」
「え?えぇ…別にいいけど。」
「じゃあ、まずはここから一番近い、豊北倫子さんのアパートから。」
確かに強盗犯のもう1人を突き止めたいのは事実だから異論はない。まぁ、誘拐状態のままいていいのかとは思うけれど。
引っ越してきた親子のフリをするというコナンくんの提案で、配役のない私は車番をすることになった。
と言っても、挨拶に行ったコナンくんと浦川さんの姿を見送り、離れたところに停車してるこの車に乗っているだけなのだが。
2件目を終えてゴミ袋を抱えてきたコナンくんに疑問を浮かべ、ゴミ袋をなんとか処理した後、最後、3件目の手川隆代さんのマンションへ向かった。
3度目の見送りをし、また1人になった車からマンションへ向かう2人の姿を見つめる。
恋人の命を奪った犯人を必死に探し回っている彼女の姿を見て、なんだかもやもやとした気持ちになった。
いくら相手が強盗犯とは言え、彼女は殺人を犯してしまっている上、勝手についてきたにしてもコナンくんを誘拐してしまっているのだ。許されることではないが、それでも。気持ちが少しでもわかってしまうから。
恋人を殺された復讐…か。
私が同じ立場でも、復讐を考えたりするんだろうか、なんてぼんやりと考えてしまう。
とはいえ、今は恋人なんていないのだが。
そう言えば、元恋人であるあの彼は、今いい人がいるんだろうか?
…性格はまぁ置いといて、見た目と人当たりはすごくいいから、モテるのは知ってるし、昔逆ナンされてるのを目撃したこともあるから、まぁ女の1人や2人いるかもしれない。…考えてたら虚しくなってきたからやめよう。
私も新しい、いい男を探した方がいいのかね。なんやかんやいい歳だしなぁ、なんて現実に目を向け出した頃、コナンくんと浦川さんは車へ戻ってきた。
「おかえり!どうだった?犯人わかった?」
「うん!」
「…それで、残りの痩せた強盗犯、さっき会った3人の女の中にいたんでしょ?」
車に乗り込んできた浦川さんとコナンくん。
先程までその話をしていたようで、早く教えてと言いたげに浦川さんはコナンくんに問いかけた。
「うん。名前さんは見たかわからないけど、お姉さんも見たでしょ?強盗犯を捕らえた防犯カメラの映像。あれに、痩せた強盗犯の特徴が映ってたから、わりと簡単だったよ?」
「特徴?」
その映像でコナンくんが見たと言うのは、その強盗犯が左利きだということ。
そして今会ってきた3人の女性、1人目と2人目はどうやら右利きらしい。
最初の2人が違うということは、残るのは1人…
3人目の、手川さんという女性。コナンくんの推理によると、彼女は左利きらしい。恐らく、彼女が痩せた強盗犯なのだろう。
…にしてもよくそんな細かいところまで…本当に探偵のようだ。子供の言う事だから、だなんて言えないような、きっちりとした推理。何者なんだという疑問が更に浮かんでくる。
「どう?納得して自首する気になった?」
「ええ…そうね。坊やの推理に免じて、警察へ行くことにするわ…でもその推理、一つだけ間違ってたわよ?」
「え?」
「樫塚圭って男の部屋から持ち出した拳銃は二丁だけ。もう一丁は、護身用に知り合いのガンマニアに譲ってもらった、本物そっくりのモデルガンよ。もちろん玉は出ないけどね。」
「ちょっと待って、それって…!?」
ガチャッと音を立て、助手席のドアが開かれる。
入り込んできた見知らぬ女性によって、あっという間にコナンくんは捕えられ、彼女の持っている拳銃が向けられた。
「そこまで知られたら、黙って帰すわけにはいかないね!!」
「コナンくん…!!」
「…や、やっぱり、あなたが…!」
この見知らぬ女性が、手川さん―――痩せた強盗犯なのだろう。
彼女がコナンくんに突き付けているのは恐らく強盗犯が持っていた、モデルガンではない本物の拳銃。
迂闊だった。つけられていて、コナンくんを人質に取られるなんて。
「さぁ!早く車を出しな!誰もいない、いい場所に案内してやるからさ!」
「…っ…!」
「ほら、グズグズするんじゃないよ!!」
「きゃあ!」
車内に鳴り響く銃声と共に、運転席側の窓に銃痕が残る。
脅しだけじゃなく、本当に撃ってくるとは…これはまずい。
コナンくんは人質に取られ銃口を向けられているし、浦川さんは恐怖で震え上がっている。
私が、なんとかしないと。
ゆっくりと私達と強盗犯を乗せた車が発進する。
大通りへと出て、北上していく。
さっきいた路地から、赤い車がずっとついてきているが、果たして敵か、味方か。
どちらにしろ、この最悪な状況をなんとかしなければ。
浦川さんは、コナンくんの推理に免じて自首をすると告げた。
さっきまでの彼女の思い詰めていた顔を思えば、きっと彼女は、復讐をしてそのまま自らも死ぬつもりだったのかもしれない。
けれど、この少年の推理と説得のおかげで、生きることを選ぼうとしているというのに。
このまま死なせるなんてできない。もちろんコナンくんも。
私自身も、こんなところで死ぬなんて御免だ。
「…浦川さん、」
「え…?」
「私には、恋人を目の前で殺された苦しみや悲しみはわからないけれど、でも、大切な人を亡くした時の気持ちは、痛いほどわかるわ。」
「…なにを…?」
「……生きようね。死んでしまった人達の分まで。約束よ?」
「さっきからごちゃごちゃと…!大人しくしなさい!!」
私へと向けられた拳銃を持つ手を、反射的に掴み、天井の方へと力づくで向けさせる。
しかしこんな狭い車内で、上手く動けるはずもなく、なんとか斜め上方向に向けられることしか出来ない。
再び発砲された銃弾は、私の手首にある腕時計を掠め、衝撃で右手が弾かれてしまう。
「…っ…!」
再び向けられた銃口。捕えられているコナンくんが抜け出そうともがいているようだが適うこともなく、浦川さんは震えたままただ車を走らせることしか出来ない。
さっきの衝撃で右手が少し痺れている。怪我はしていないと思うが、力が入らない。
どうしよう、どうすれば。このままでは、撃たれる。
―――零。
こんな時に頭を過ぎるのは、彼のことばかりだ。
後悔なのか、それとも。
視界の端に映った、私達の車を追い越していく白の車。
あれは…安室さんの…?
一瞬ちらりと合った目に、どくんと胸が鳴る。
私達を追い越していった白のRX-7は突然角度を変え、横を向く。
窓越しに見えたのは、安室さんが蘭ちゃんを抱き寄せている姿。
胸が、痛い。
あぁ、神様。
こんな状況だというのに、私は、思っていたよりも彼に未練たらたらなようです。
あの人が、他の人を抱き寄せている姿なんて、見たくなかった―――
私達を乗せた車は、目の前に来た安室さんの車へ突っ込み、凄まじい衝撃と共に、車は止まった。
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