―――3月31日、米花博物館。
幼馴染みに誘われて久しぶりに再会する場所。
そして、キッドの予告があった宝石が保管されている場所。
いかにもって感じの刑事さん達がたくさんいる。知ってる人いるのかな。以前キッドに会うために何度も現場に来ていたので、よくいるキッド関連の警察の人とは顔見知りになっている。
相変わらずだな、なんて思いながら入り口へ向かうと私を呼んでいる大きな声が聞こえた。
「名前ー!!」
「園子!」
着いたよ、というメールを先程送ったからか、表まで迎えに来てくれたようだ。
久しぶりー!と嬉しそうに笑って抱き着いてくる園子の勢いに押されながらも抱き留めて、私も抱きしめ返す。
彼女に会うのは何ヶ月ぶりだろうか。
「相変わらず元気そうね、園子。」
「まーね!それよりこっちよ!」
「あ、ちょっと…!」
相変わらず強引なお嬢様に手を引かれて連れていかれたのは展示ルーム。
そこにも人集りがいて、これまた久しぶりな園子のお父様の史郎さん、テレビとかで見たことのあるおじ様と、美人な、どこか青子に似てる女の子、それから小さなメガネの男の子。
「おまたせ〜!ごめんね抜けちゃって!」
「園子!あ、もしかしてその子?」
「そうよーこの子が私の幼馴染みの苗字名前。
って言っても、住んでるところが少し離れてるから、今日久しぶりに会えたんだけどね。」
「久しぶりだね、名前さん。」
「ご無沙汰しております、史郎おじ様。」
「名前、こちらが私の幼馴染みの毛利蘭と、そのお父様で名探偵の毛利小五郎おじ様、それから江戸川コナン君よ。」
「初めまして。苗字名前です。
蘭さんのお話はよく園子から伺ってました。
まさか、お父様があの有名な毛利小五郎さんだったなんて。」
「いやーそれほどでも!」
蘭さんは園子から話に聞いてた通りの可愛らしい人。
嬉しそうに笑う小五郎おじ様は人柄の良さが滲み出てる感じ。
それにしても、この男の子…どこかで…いや、誰かに似てる…?誰だろう…。
「…名前おねーさん…?こんにちは。」
「こんにちは、コナンくん…?ごめんね、じっと見ちゃって。」
「ううん、大丈夫だよ。」
きょとんと首を傾げているコナンくんはとても可愛らしくて、でもどこで見たことがあるのか、誰に似てるのか、それがどうしても思い出せないでいる。
「弟さんなんですか?」
「いえ、うちで訳あって預かってるんです。
あ、それと、敬語じゃなくていいですよ。同い年…ですよね?」
「ええ。…そうね。じゃあ、蘭ちゃんって呼ばせてもらっていい?」
「はい。私も、名前ちゃんって呼ぶね。」
「喜んで。」
そう言って嬉しそうに笑った蘭ちゃんはかわいくて、やっぱりどこか青子に似てるな、なんて、親友の顔を思い出して少し笑みが溢れた。もっとも、青子の方が元気ハツラツでお転婆感が強いのだが。
「もしかして、貴方もどこかの財閥のお嬢さんとか…?」
「いえ、私はそんな」
「名前は財閥っていうより、お母様が有名なデザイナーなのよ。
それでよく昔からパーティーとかで会っていたのよ。」
「あ!デザイナーってもしかして、あの苗字夕花(ゆうか)さん…?」
「えぇ、苗字夕花はうちの母よ。」
「え!?」
「そうなんだ!すごい!」
「母はすごいけど、私はすごくないわよ。普通の女子高生だもの。」
まさか蘭ちゃんがうちの母親を知ってるとは。まぁ有名と言えば有名だし、なんて頭の隅でぼんやりと考えていた。
それにしても。うちの母親の話を聞いて驚いたような顔をして何かを考え込んでいる目の前のこの少年は…うーん。やっぱり誰かに似ている。でもこんな小さな知り合いいたかな…。
「毛利さん、そろそろ…」
「あぁ、そうですな。」
「こちらです。」
おじ様に連れられて来たのはあるケージの前。ディスプレイされている真っ黒で大粒の真珠がキラキラと輝いている。これが。怪盗キッドが今回狙っている宝石、ブラックスター。
「おお!これが世界最大の黒真珠…ブラックスターですな!」
「えぇ…私の祖父がこれを購入して以来、我が鈴木家は繁栄の道を歩んで参りました… 言うなれば、鈴木家の守り神です。」
鈴木家の守り神 …また偉いものを盗もうとしているんだな、と、白を纏った彼のことを思い出して、心の中で苦笑する。今頃何をしているんだろう。準備でもしているのかしら。
「…それにしてもやけに物々しいっすな…予告日の前日だと言うのに。」
「はい…予告状から読み取れたのは日にちのみ。ですから今晩から泊まりがけで警備に当たられるそうです。いつどこから怪盗1412号が来るとも知れませんので…」
相変わらずすごい力の入れようだな、と、周りを駆けている警察の方々を見て思う。毎度ご苦労なことで。
そんなことを考えていると、横の方から大きな声が聞こえ、びっくりして振り向くと、あまり見たことのない警察の人が部下の人に指示を出しているようだ。
「川だ川!怪盗1412号はこの博物館のそばを流れる提無津川から侵入する気だ!川側の警備に人員を割けと言っただろ!」
「提無津川ですか…?」
「ええ…予告状の"波にいざなわれて"は、提無津川の川の流れに乗ってくるということです!この近辺で波立つ場所は、提無津川しかありませんからな!」
刑事さんの推理を聞いて、吹き出すように高笑いをした小五郎おじ様に、顔をしかめて刑事さんが振り向く。どうやら知り合いだったようで、驚いたように目を丸くした。
「お、お前は確か一課にいた毛利…」
「甘いですなぁ警視殿。」
「なに?」
「わかりませんか?波と言えば海…海と言えば沖…そして星と言えばスター…つまりこれは…
明日からこの近くの米花公会堂でライブをやるアイドルスター、沖野ヨーコちゃんのことですよ!」
「「へ?」」
「さらに、彼女のライブのラストソングは決まって『ムーン・レディ』!つまり、怪盗1412号はライブが終わる明晩夜9時頃、米花公会堂近辺からやって来るってわけですよ!」
「た、確かに一理あるな…」
「さっすが毛利名探偵だ!」
いやいや、沖野ヨーコって。小五郎おじ様もしかしてアイドル好き?ラストソングとか知ってるのがすごいわ。
でも、私には予告状の意味はわからないし…。
ふと隣を見ると、コナンくんが何か考えるような顔をしていて、私はこの表情、姿に、ものすごく見覚えがあった。
この光景、どこかで…。出てきそうで出てこない、パズルのピースが当てはまらない状態で、私はただ、この幼い少年を見ていた。
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