22.
「えぇっ!?銃弾が一発返却されてない!?」
訓練場で響いた鬼塚教官の声。
何事かとそちらへ向くと、緊迫した雰囲気で、そこで話していた教官達の視線は、バラしてしまった拳銃の横で立たされて大欠伸をかましてるじんぺーへと向いた。
「何でまだ組み立ててないんだ!?」
「はぁ?立ってろって言ったじゃないっスか?」
「まぁいい…くすねた弾をすぐに出せ!そうしたら今回は見逃してやる…」
「弾なんて持ってないっスよ!全弾撃っちまって空薬莢も補助教官に渡したし……」
「ウソをつくな!!貴様以外に誰がいる!?」
「あ゛ん!?」
「まあまあ!ここは班長の自分に免じて鉾を収めてください!弾は必ず返却しますから!」
今すぐにでも教官に噛み付きそうなじんぺーにヒヤヒヤしていたら、またもや伊達くんが仲裁してくれる。鬼塚教官は、屋根の補修工事をしている業者の方々について行ってしまった。
そして勿論、伊達くんもじんぺーを疑っているわけではないらしい。伊達くんが班長で本当によかった。
「だったら堂々としてろよ!俺が真犯人あぶり出して、自首させてやるからよ…」
「甘いなぁ班長は…疑いを自分で晴らさせないと、彼も父親のようになってしまう…」
「てんめェ…親父の事を知りもしないで…」
「ああ…知らないから教えてくれないか?君がなぜ警察官を目指しているのかって事もね…」
「フン…教えてやってもいいが…そいつは…テメェを殴り倒した後だ!!」
「じんぺー…!!」
バキッ
何かの破損音。それは、天井から聞こえたものだった。
落下しそうな作業員の男性、それを受け止めようと柵を乗り出す鬼塚教官、天井からぶら下がっている作業員の命綱が、鬼塚教官の首を絞めた―――
周りは騒然としていた。落下した作業員は気絶している、屋根に登って命綱を切る時間は、ない。
「おいお前ら…やる事は、わかってるよな?」
「拳銃…」
「弾…」
「射撃…」
「俺は土台…」
「じゃあオレは土台の上のつっかえ棒かな?」
「私は…救急の手配かな。」
「オウよ!んじゃ野郎共…行くぞ!!」
班長の号令で、伊達班は動き出す。
訓練場の控え室、電話機は…あった。119、と。
「救急をお願いします。場所は、警視庁警察学校――」
淡々と、正確に。場所と救助者の状況を伝えていく。
電話を切り、急いで訓練場へと戻れば、けんちゃんが弾を見つけたらしい。
「行くぜ降谷ちゃん!受け取りな!」
「こっちも受け取れ!完璧な拳銃だ!!」
弾を受け取った降谷くんに、じんぺーがしっかり組み立てられた拳銃を差し出す。
「外したらブっ殺すぞ…零(ゼロ)!!」
“ゼロ”。渾名でそう呼んだじんぺーから、降谷くんは拳銃を受け取り、けんちゃんから受け取った弾を装弾。綺麗なフォームで発砲した。
弾は、鬼塚教官の首を締めていた命綱に見事的中、下で支えていた伊達くんと諸伏くんは教官と作業員の二人の体をキャッチする。
伊達くんの声掛けに、鬼塚教官は息を吹き返し、事なきを得た。
訓練場は大歓声に包まれ、一番責任重大だった降谷くんは安堵の溜め息を吐く。じんぺーとけんちゃんは、得意気な顔をしていた。とても誇らしい気分だ。
少しして、救急車のサイレンが遠くから聞こえてくる。私の方に振り返った五人に、満面の笑みで親指をぐっと突き立てた。
今回の件は、拳銃の取り扱い違反ではあったけど、鬼塚教官の口添えもあり不問に終わったらしい。
その事件を境に、私達の距離は徐々に縮まっていくことになる。
「鬼塚教場手を休めるな!とっとと掃除終わらせて飯にするぞ!!」
「悪い松田、そっちのチリトリ貸してくれ!」
「おうよ!その代わり後でちゃんと…返してく零(レイ)!」
「つまらん2点!」
あんな傷だらけになるほど喧嘩していた二人が、笑い合って会話するほど仲良くなっていた。いつの間にあんなに仲良くなったのか。
「すっかり仲良しになっちゃったなぁ、あの2人…」
「陣平ちゃんの親友の俺としてはちと、ジェラっちまうねぇ…」
「…ジェラってんの…?」
「そうそう〜だから名前、慰めてくれる?」
「いやなんで?」
また私の肩を組んで絡んできたけんちゃんに、もー!と離れようともがいていると、その一連の流れを見ていた諸伏くんがとんでもないことを聞いてくる。
「…2人は付き合ってる?」
「いやいやいや、そんなわけないじゃん?」
「俺は名前のこと好きだけどね〜」
「誤解を招く!!また女子に目付けられる!!」
けんちゃんはいつも私の反応を見て楽しんでいる節がある。それはわかってる。でも幼馴染故に気の置けない中なもんで自然な反応をしてしまうので中々回避できず、そして彼はなんせモテるので、こうして仲良くしている所を見て目を付けて難癖付けてくる女子がいるのが難点だ。だから極力二人きりにならないようにと心掛けてはいるが、中々そうはいかない。未だに大事になったことがないのは、じんぺーのおかげだが。
「何やってんだよ萩!」
「あーららセコム来ちゃったか。陣平ちゃんが降谷ちゃんと仲良くしてるから、その間名前と仲良くしようと思って」
「はァ?」
「……そっちが付き合ってる?」
「だから違うって!!誰とも付き合ってないよ!!」
今度はじんぺーと私が付き合ってるのか問い掛けてきた諸伏くんに反論し、何言わせんだ!!と言うと笑われた。あ、もしかして君も私をからかう気か?
「萩原くーん!次の休みの日、ウチらの教場との合コン忘れないでねー!」
「ああ、任されてー♪」
出たよ合コン……私も女子が多い教場だったらそんなイベントに参加したんだろうか…皆が行ったとして、私がその合コンに参加出来るわけない(相手の女子と仲良くない、参加しようもんなら向こうから邪魔扱いされる)ので、その間何しようかな…寮の子達と遊ぶか。
「イケメンいっぱいそろえてよー♡」
「そこの金髪の外人さんとかー♡」
女子達の黄色い声。外人さんじゃないが、金髪は一人しかいないから降谷くんのことだろう。
薄々感じてはいたが、やっぱり降谷くんもモテるんだろうな。確かにイケメンだ。じんぺーも大人しくしてたらイケメンなんだけど、なんせ口が悪いしケンカっぱやいから昔からモテるタイプではない。
「誰が外人さんだって?」
声を掛けてきていた女子達に詰め寄るように、伊達くんは怖い顔をしている。確かに、外人さんではないし、外人さんって言い方があまり良い気はしない。だけど、あんな怖い顔した伊達くんは初めて見た。
そして伊達くんは、女子達に教官と間違えられて逃げられていた。けんちゃんの言う通り、すごい貫禄ではある。
―――掃除も終わり、食堂にて。
隣の席の男子達がこの後に控える英語の授業の話をしていた。
当てられるのが不安だという子に対し、降谷に教えてもらえよ、なんて気軽に言う男子。
「見た目からして」
「ペラペラなんだろ?」
「まあそれなりには…」
「さすが金髪のハーフ!」
「教官より英語できんじゃね?」
………嫌な感じのノリだ。失礼な奴らだな。すると伊達くんが立ち上がり、その男子の胸ぐらを掴んだ。
「おい!!人を見た目で決めつけてんじゃねぇよ!!それに…爪楊枝なんかくわえていきがってんじゃねぇ!!ムシズが走る…」
「す、すみません!!」
男子が謝るとすぐに手を離してにこやかに、わかればいいんだ、と言う伊達くん。凄んでた時から笑顔までの振り幅がすごい。
しかしまだあまりすっきりはしてないようで、ドスッと勢いよく元の席に伊達くんは座った。
じんぺー以外皆食べる手が止まっていたが、一連が終わったことにより再び皆手と口を動かし出す。
約一名、けんちゃんを除いて。
「なぁ班長…アンタもしかして…」
今度は何を言い出すんだろうとけんちゃんを見る。
「降谷ちゃんの事好きなんじゃねーの?掃除の時も妙にかばってたし…」
「はぁ?」
食事を再開していた降谷くんは吹き出してしまう。私も今水飲もうとしてたの止めてよかった。飲んでたら絶対吹くとこだった。
じんぺーはまたこいつなんか言ってらぁ…くらいの呆れ顔をして、諸伏くんは驚きすぎて口開けっ放しだし、降谷くんは何言ってんだコイツ?の怪訝な顔だ。伊達くんも予想外過ぎてか困った顔をしている。
「いいんだぜ?隠さなくても…俺、そーいうの気にしねぇし…」
「んなワケねぇだろ!?俺、彼女いるし!!」
…………ん?まじ?
「「「「え?」」」」
ええええええ!!?とものすごい声が響く。
いや、驚いたけど。めっちゃ驚いたけど。四人の驚き具合がすごい。そこまで驚く?
「え、ねぇねぇ彼女どんな子?」
「んだよ…急に食い付きやがって。また今度な!」
私が質問すると少し照れ臭そうな顔をして流され、先に席を立って行ってしまった。逃げられたか…。伊達くんの彼女…気になるな。どんな子なんだろう。きっといい子なんだろうな、と漠然と思った。今度皆がいないとこでこっそり聞いてみよう。
ようやくご飯の続きを食べ出したところで、視線を感じた。何かと思いそちらを見ると、じと、とじんぺーがこちらを見ている。
「え、何?」
「なんでお前そんなに驚かねーんだよ?」
「いや驚いてるけど…皆が驚きすぎなんだよ」
「いやだって班長だよ?」
「けんちゃんそれは失礼じゃない…?伊達くんって男らしいし、堅実そうだし頼りになる感じだし優しいし…彼女いてもおかしくなさそうな感じだけどな?」
「べた褒めじゃねーか!」
「普段俺の事あんま褒めてくんねーのに?」
「いやけんちゃんは、浮気しそう」
「しねーって!」
「ウソつけ」
「陣平ちゃんまでひでー!」
幼馴染二人と会話してるのを、興味深そうに降谷くんと諸伏くんがこちらを見ている。
「俺は?」
「えー、じんぺーはすぐ喧嘩するじゃん」
「…んなことねーよ」
「そんなことはあるよ陣平ちゃん」
「んじゃあゼロは?」
「ゼロは……」
そこで、はたと気づく。あれ、私もしかして釣られた?
「あ、ごめん…釣られてゼロって呼んじゃった」
「いや、全然。好きに呼んでいいよ」
「オレも、ヒロとかでいーよ」
「…そう?じゃあそう呼ぶね!」
じんぺーはいつの間にか降谷くんと仲良くなっていたし、けんちゃんはいつ誰とでもフレンドリーに話せるタイプだ。私だけ、まだこの二人とほとんど話したことがなかった。
ようやく少し縮まった距離が嬉しくて自然と笑顔になる。
そんな顔をまたじっと見られていたようで、ん?とじんぺーの方を向くと、ムスッとした顔がこちらに向いていて、伸びてきた手に頭をぐしゃぐしゃと撫で回され、髪をボッサボサにされた。
なんでだ。
<< title >>
「えぇっ!?銃弾が一発返却されてない!?」
訓練場で響いた鬼塚教官の声。
何事かとそちらへ向くと、緊迫した雰囲気で、そこで話していた教官達の視線は、バラしてしまった拳銃の横で立たされて大欠伸をかましてるじんぺーへと向いた。
「何でまだ組み立ててないんだ!?」
「はぁ?立ってろって言ったじゃないっスか?」
「まぁいい…くすねた弾をすぐに出せ!そうしたら今回は見逃してやる…」
「弾なんて持ってないっスよ!全弾撃っちまって空薬莢も補助教官に渡したし……」
「ウソをつくな!!貴様以外に誰がいる!?」
「あ゛ん!?」
「まあまあ!ここは班長の自分に免じて鉾を収めてください!弾は必ず返却しますから!」
今すぐにでも教官に噛み付きそうなじんぺーにヒヤヒヤしていたら、またもや伊達くんが仲裁してくれる。鬼塚教官は、屋根の補修工事をしている業者の方々について行ってしまった。
そして勿論、伊達くんもじんぺーを疑っているわけではないらしい。伊達くんが班長で本当によかった。
「だったら堂々としてろよ!俺が真犯人あぶり出して、自首させてやるからよ…」
「甘いなぁ班長は…疑いを自分で晴らさせないと、彼も父親のようになってしまう…」
「てんめェ…親父の事を知りもしないで…」
「ああ…知らないから教えてくれないか?君がなぜ警察官を目指しているのかって事もね…」
「フン…教えてやってもいいが…そいつは…テメェを殴り倒した後だ!!」
「じんぺー…!!」
バキッ
何かの破損音。それは、天井から聞こえたものだった。
落下しそうな作業員の男性、それを受け止めようと柵を乗り出す鬼塚教官、天井からぶら下がっている作業員の命綱が、鬼塚教官の首を絞めた―――
周りは騒然としていた。落下した作業員は気絶している、屋根に登って命綱を切る時間は、ない。
「おいお前ら…やる事は、わかってるよな?」
「拳銃…」
「弾…」
「射撃…」
「俺は土台…」
「じゃあオレは土台の上のつっかえ棒かな?」
「私は…救急の手配かな。」
「オウよ!んじゃ野郎共…行くぞ!!」
班長の号令で、伊達班は動き出す。
訓練場の控え室、電話機は…あった。119、と。
「救急をお願いします。場所は、警視庁警察学校――」
淡々と、正確に。場所と救助者の状況を伝えていく。
電話を切り、急いで訓練場へと戻れば、けんちゃんが弾を見つけたらしい。
「行くぜ降谷ちゃん!受け取りな!」
「こっちも受け取れ!完璧な拳銃だ!!」
弾を受け取った降谷くんに、じんぺーがしっかり組み立てられた拳銃を差し出す。
「外したらブっ殺すぞ…零(ゼロ)!!」
“ゼロ”。渾名でそう呼んだじんぺーから、降谷くんは拳銃を受け取り、けんちゃんから受け取った弾を装弾。綺麗なフォームで発砲した。
弾は、鬼塚教官の首を締めていた命綱に見事的中、下で支えていた伊達くんと諸伏くんは教官と作業員の二人の体をキャッチする。
伊達くんの声掛けに、鬼塚教官は息を吹き返し、事なきを得た。
訓練場は大歓声に包まれ、一番責任重大だった降谷くんは安堵の溜め息を吐く。じんぺーとけんちゃんは、得意気な顔をしていた。とても誇らしい気分だ。
少しして、救急車のサイレンが遠くから聞こえてくる。私の方に振り返った五人に、満面の笑みで親指をぐっと突き立てた。
今回の件は、拳銃の取り扱い違反ではあったけど、鬼塚教官の口添えもあり不問に終わったらしい。
その事件を境に、私達の距離は徐々に縮まっていくことになる。
「鬼塚教場手を休めるな!とっとと掃除終わらせて飯にするぞ!!」
「悪い松田、そっちのチリトリ貸してくれ!」
「おうよ!その代わり後でちゃんと…返してく零(レイ)!」
「つまらん2点!」
あんな傷だらけになるほど喧嘩していた二人が、笑い合って会話するほど仲良くなっていた。いつの間にあんなに仲良くなったのか。
「すっかり仲良しになっちゃったなぁ、あの2人…」
「陣平ちゃんの親友の俺としてはちと、ジェラっちまうねぇ…」
「…ジェラってんの…?」
「そうそう〜だから名前、慰めてくれる?」
「いやなんで?」
また私の肩を組んで絡んできたけんちゃんに、もー!と離れようともがいていると、その一連の流れを見ていた諸伏くんがとんでもないことを聞いてくる。
「…2人は付き合ってる?」
「いやいやいや、そんなわけないじゃん?」
「俺は名前のこと好きだけどね〜」
「誤解を招く!!また女子に目付けられる!!」
けんちゃんはいつも私の反応を見て楽しんでいる節がある。それはわかってる。でも幼馴染故に気の置けない中なもんで自然な反応をしてしまうので中々回避できず、そして彼はなんせモテるので、こうして仲良くしている所を見て目を付けて難癖付けてくる女子がいるのが難点だ。だから極力二人きりにならないようにと心掛けてはいるが、中々そうはいかない。未だに大事になったことがないのは、じんぺーのおかげだが。
「何やってんだよ萩!」
「あーららセコム来ちゃったか。陣平ちゃんが降谷ちゃんと仲良くしてるから、その間名前と仲良くしようと思って」
「はァ?」
「……そっちが付き合ってる?」
「だから違うって!!誰とも付き合ってないよ!!」
今度はじんぺーと私が付き合ってるのか問い掛けてきた諸伏くんに反論し、何言わせんだ!!と言うと笑われた。あ、もしかして君も私をからかう気か?
「萩原くーん!次の休みの日、ウチらの教場との合コン忘れないでねー!」
「ああ、任されてー♪」
出たよ合コン……私も女子が多い教場だったらそんなイベントに参加したんだろうか…皆が行ったとして、私がその合コンに参加出来るわけない(相手の女子と仲良くない、参加しようもんなら向こうから邪魔扱いされる)ので、その間何しようかな…寮の子達と遊ぶか。
「イケメンいっぱいそろえてよー♡」
「そこの金髪の外人さんとかー♡」
女子達の黄色い声。外人さんじゃないが、金髪は一人しかいないから降谷くんのことだろう。
薄々感じてはいたが、やっぱり降谷くんもモテるんだろうな。確かにイケメンだ。じんぺーも大人しくしてたらイケメンなんだけど、なんせ口が悪いしケンカっぱやいから昔からモテるタイプではない。
「誰が外人さんだって?」
声を掛けてきていた女子達に詰め寄るように、伊達くんは怖い顔をしている。確かに、外人さんではないし、外人さんって言い方があまり良い気はしない。だけど、あんな怖い顔した伊達くんは初めて見た。
そして伊達くんは、女子達に教官と間違えられて逃げられていた。けんちゃんの言う通り、すごい貫禄ではある。
―――掃除も終わり、食堂にて。
隣の席の男子達がこの後に控える英語の授業の話をしていた。
当てられるのが不安だという子に対し、降谷に教えてもらえよ、なんて気軽に言う男子。
「見た目からして」
「ペラペラなんだろ?」
「まあそれなりには…」
「さすが金髪のハーフ!」
「教官より英語できんじゃね?」
………嫌な感じのノリだ。失礼な奴らだな。すると伊達くんが立ち上がり、その男子の胸ぐらを掴んだ。
「おい!!人を見た目で決めつけてんじゃねぇよ!!それに…爪楊枝なんかくわえていきがってんじゃねぇ!!ムシズが走る…」
「す、すみません!!」
男子が謝るとすぐに手を離してにこやかに、わかればいいんだ、と言う伊達くん。凄んでた時から笑顔までの振り幅がすごい。
しかしまだあまりすっきりはしてないようで、ドスッと勢いよく元の席に伊達くんは座った。
じんぺー以外皆食べる手が止まっていたが、一連が終わったことにより再び皆手と口を動かし出す。
約一名、けんちゃんを除いて。
「なぁ班長…アンタもしかして…」
今度は何を言い出すんだろうとけんちゃんを見る。
「降谷ちゃんの事好きなんじゃねーの?掃除の時も妙にかばってたし…」
「はぁ?」
食事を再開していた降谷くんは吹き出してしまう。私も今水飲もうとしてたの止めてよかった。飲んでたら絶対吹くとこだった。
じんぺーはまたこいつなんか言ってらぁ…くらいの呆れ顔をして、諸伏くんは驚きすぎて口開けっ放しだし、降谷くんは何言ってんだコイツ?の怪訝な顔だ。伊達くんも予想外過ぎてか困った顔をしている。
「いいんだぜ?隠さなくても…俺、そーいうの気にしねぇし…」
「んなワケねぇだろ!?俺、彼女いるし!!」
…………ん?まじ?
「「「「え?」」」」
ええええええ!!?とものすごい声が響く。
いや、驚いたけど。めっちゃ驚いたけど。四人の驚き具合がすごい。そこまで驚く?
「え、ねぇねぇ彼女どんな子?」
「んだよ…急に食い付きやがって。また今度な!」
私が質問すると少し照れ臭そうな顔をして流され、先に席を立って行ってしまった。逃げられたか…。伊達くんの彼女…気になるな。どんな子なんだろう。きっといい子なんだろうな、と漠然と思った。今度皆がいないとこでこっそり聞いてみよう。
ようやくご飯の続きを食べ出したところで、視線を感じた。何かと思いそちらを見ると、じと、とじんぺーがこちらを見ている。
「え、何?」
「なんでお前そんなに驚かねーんだよ?」
「いや驚いてるけど…皆が驚きすぎなんだよ」
「いやだって班長だよ?」
「けんちゃんそれは失礼じゃない…?伊達くんって男らしいし、堅実そうだし頼りになる感じだし優しいし…彼女いてもおかしくなさそうな感じだけどな?」
「べた褒めじゃねーか!」
「普段俺の事あんま褒めてくんねーのに?」
「いやけんちゃんは、浮気しそう」
「しねーって!」
「ウソつけ」
「陣平ちゃんまでひでー!」
幼馴染二人と会話してるのを、興味深そうに降谷くんと諸伏くんがこちらを見ている。
「俺は?」
「えー、じんぺーはすぐ喧嘩するじゃん」
「…んなことねーよ」
「そんなことはあるよ陣平ちゃん」
「んじゃあゼロは?」
「ゼロは……」
そこで、はたと気づく。あれ、私もしかして釣られた?
「あ、ごめん…釣られてゼロって呼んじゃった」
「いや、全然。好きに呼んでいいよ」
「オレも、ヒロとかでいーよ」
「…そう?じゃあそう呼ぶね!」
じんぺーはいつの間にか降谷くんと仲良くなっていたし、けんちゃんはいつ誰とでもフレンドリーに話せるタイプだ。私だけ、まだこの二人とほとんど話したことがなかった。
ようやく少し縮まった距離が嬉しくて自然と笑顔になる。
そんな顔をまたじっと見られていたようで、ん?とじんぺーの方を向くと、ムスッとした顔がこちらに向いていて、伸びてきた手に頭をぐしゃぐしゃと撫で回され、髪をボッサボサにされた。
なんでだ。
<< title >>