寿さんと別れ、家へ帰る道中。
ずっと、名前のこと、レンに言われたことを考えていた。
私が甘える、というのは考えたこともなかった。
そもそも甘えるとはなんなんでしょう。
彼女が甘えるのはわかりますが、男が甘えるというのは想像がつきません。
やはりレンの恋愛観を理解するのは中々に難しいようです。
まあ、わかりたくもありませんが。





『あ、トキヤおかえり!』


家に着き、鍵を開けて中に入ると、奥から聞こえた名前の声。そういえば今日はオフだと言っていた気がします。

リビングへ入ると、ソファに座っていた名前が立ち上がって駆け寄ってきた。年の差を感じると思いつつも、こういう姿を見ると本当に年上なのかと思ってしまいます。そんなところが可愛いんですがね。


「ただいま。」
『昨日はごめんね。なんか相当酔ってたみたいで、あんま記憶なくてさ…』
「いえ…強くはないのですから、あまり飲みすぎないようにしてください。」
『はーい。ご迷惑をおかけしました。』
「……………。」


迷惑だなんて思ってはいない。
ただ、さみしいと思ってしまっただけで。
もっとそばにいたい。私を頼ってほしい。
そんな感情を抱いてしまっているだけで。
しかし、そんな我儘を口にするのは気が引ける。

……もしや、これを伝えることが甘えるということなのでしょうか。
けれど、どう伝えればよいのかも…


『…?…トキヤ?』
「あ、いえ…なんでも…」

《おはやっほ〜!》

「え…」


なんでもありません、と口にしようとした瞬間聞こえた声。
先程からついていたであろうテレビから聞こえたその声は紛れもなく自分のもので。
テレビに目を向けると、今はもう終わった番組、そして、HAYATOの姿をした私が映っていた。



「…なんで、この番組を…」
『あぁ、なんとなく見たくなって、録画してたやつ見てたの。懐かしいでしょ?』
「え、ええ…」


私とは全く正反対なタイプのW彼Wは、一ノ瀬トキヤとしてデビューすると共に卒業しました。
あれからまだそれほど経っていないでしょうが、とても懐かしい気がします。





…そうか。

HAYATOなら。

私と正反対なW彼Wならば、もしかしたら。

















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