スペアキー/s.s
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お揃いの靴、あいつが選んだ写真立て、洗面所に並んだ2つの歯ブラシ、当たり前にあった景色が無くなった。数週間前あいつから別れを切り出された。理由は俺にある。そんなん分かってんねん。あいつなら許してくれるってどこかで思ってた。でも、、、
「すばるくん。そろそろ私も限界やわ。」
す「何がやねん。」
「浮気。何回したら気が済むん?私じゃ満足ならん?」
す「あんなん浮気ちゃうやろ。」
「他の女とヤっといて浮気ちゃうってどういうことなん?理解できひん。」
す「本気なんなまえだけやんけ。」
「そんなんすばるくんの勝手な理屈やん。」
す「何が不満やねん。」
「全部。」
す「あいつらには気ないやん。」
「じゃあなんでヤるん?」
す「男の本能やろ。」
「アホらし。もういい。すばるくん別れて。」
す「お前毎回別れるとか言うけど別れたことないやん。」
「ホンマに可哀想な人。」
す「なんやねんそれ。」
「今まで信じてみよ思てた私がアホやったわ。目覚めた。さよなら。」
そう言ってあいつはテーブルの上に裸のスペアキーを置いて家を出ていった。
それから数週間。無我夢中で仕事をして自分の気持ちに気づかへんようにしてた。ふと我に返ると蘇る思い出と空っぽの心。悪いのは俺や。あいつに満足してなかったんじゃない。ホンマはもっと俺に溺れて欲しかっただけやった。結局俺はあの声もあの笑顔もあの匂いもあの身体も全部全部忘れられへんかった。
この部屋に居れば俺はもう耐えられへんと思って家を引き払った。
もう二度とあの声は聞けへんけど、俺はずっと忘れへんと思う。これからもずっと。全て忘れるために引き払った部屋やったけど、結局なまえが持ってたスペアキーだけは捨てれんかった。でもこれがなまえと俺が別れたという証であることは確かや。
なまえとの恋が終わった。
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