「白崎くん、この資料わかりやすくてたすかったよ。ありがとう」
『いえ、お役に立てたなら光栄です』
「そういえば夏季休暇、来月で良かったの?」
『はい、お休みいただけるならどこでも良かったので』
社長にコーヒーを出しながら、そう答える。うちの会社はお盆の他に夏季休暇を1週間もらえる。他の秘書課の先輩のお休みや社長の仕事の兼ね合いもあって、私は9月の初めにお休みをいただくことになった。
「いつも忙しくさせてしまってるから、しっかり休んでリフレッシュしておいで」
『はい、ありがとうございます』
せっかく1週間もあるお休み。引きこもってゲームばかりしていないで、どこか旅行にでも行こうか。友達もみんな仕事だろうし、1人旅も悪くないかも。休みに思いを馳せ、ランチタイムになったのでスマホを取り出し、旅行サイトを検索。
『あれ、高橋くんからメッセージ』
どうせ旅行に行くならどこも行ったところがないところにしたいなぁ、なんて思って検索していたらメッセージ受信のお知らせ。高橋くんとはたまーになんてことないメッセージを送り合うような仲になった。

恭平
今日の髪型何がええと思う?
『急な無茶振りきた…』
高橋くんは今福井県にいるらしい。未知の感染症のせいでイレギュラーなことが起こったりと、なかなか大変なツアーらしいけど、この暑い中歌って踊ってアイドルしているだけすごいと思う。
『え〜髪型?なんだろ…』
コーヒーを一口飲んでから、メッセージを打ち込む。高橋くんなら、何でも似合うんじゃない?なんて考えてるんだか考えてないんだかわからない文字を送信。サンドイッチを取り出して食べ始めた頃には、再び彼からのメッセージを受信した。珍しく返信が早い。

恭平
凛さん考える気ないやろ

凛
バレた?

恭平
なんかあるやん、好みの髪型って
好み?う〜ん。悩みながら高橋くんの名前と髪型というワードを入れて検索し、大量の画像を見ながら私なりに考える。いや、見れば見るほど美形だな、なんて改めて思ったり。今だにこのアイドルと連絡を取り合ってる実感がない。

凛
編み込みなんていかがでしょう?

恭平
ええな、編み込み。それにしよ

凛
コンサート頑張ってね
サンドイッチを咀嚼して、カフェオレを飲む。パッと思いついた髪型を気に入ってくれたらしく一安心。こんな暑い中頑張ってる彼に密かにエールを送り、腰を上げた。
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