
恭平
今家おる?
お風呂から上がりスキンケアをしてから、スマホを覗くとメッセージが一件。それは高橋くんからのもので、水を飲みながら《いるよ》と送り返した。
髪乾かさなきゃなぁ、でも暑いなぁなんて思っていたらピンポーンとインターホンが鳴る。液晶を確認したら、先程メールを送ってきた彼が立っていた。
「誰か確認せずに出るん危ないで」
『いや、液晶画面で高橋くんだってわかってたし』
「俺に似た誰かかもしれへんやん」
『高橋くんみたいなイケメン何人もいたら怖いよ』
「それ、褒めてるん?貶してるん?」
久しぶりに見た彼は少し日焼けした気がする。私が確認なしにドアを開けたことに呆れられながらも、どーぞと部屋に通す。あれ、何だかんだでちゃんと訪問されて家に入れるのは初めてかもしれない。
『久しぶりだねぇ、ちゃんとご飯食べてる?』
「オカンか」
『はは、本当だ』
冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐと、何故か隣にやってきてじっと私の顔を見る高橋くん。
『ん?なに?』
「…すっぴんや」
『え!?あ、…み、見ないで、ください』
「無理無理もう見た」
お風呂上がりだからもちろん素顔なわけで。不覚にも高橋くんにすっぴん姿を見せてしまって、慌てて顔を隠す。最近激務で肌荒れが…!今だに小さく笑いながら私を見る高橋くんに、何か話題を逸らさなくては…!と思考を巡らせた。
『た、高橋くん、何か用があったのでは?』
「ん?あぁ、そう。これ」
『…なんかいっぱい入ってる』
「ツアーで行った場所のお土産」
『え、いいの?もらって』
「貰ってもらわな困る」
高橋くんが差し出した袋には、ご当地グルメやお菓子、お酒などがたくさん入っていて。小さい恐竜のぬいぐるみを取り出し不思議そうな顔をしてる私に高橋くんは「福井のお土産」と教えてくれた。
『レモンのお酒…美味しそう』
「凛さん、酎ハイ系飲むって言うてたから割ったら飲めるかなぁ思って」
『高橋くんも広島で飲んだの?』
「ん〜?それは飲んでへんけど。美味しそうやなぁと思って買ってみた」
そう言われて、出かかったある言葉を飲み込む。さすがに一緒に飲む?って誘うのはちょっとアレかなぁ…なんて悩んでいると、高橋くんと目が合った。
「…レモンのお酒、美味しそうやんな」
『う、うん』
「俺、飲んでないからどんな味なんか気になるわぁ」
ニヤニヤとした笑顔を浮かべ私の様子を伺ってくる高橋くん。私が言おうとした言葉を一瞬で理解されてしまったようで気恥ずかしい。
『い、一緒に飲む?』
「ん、飲む」
『即答』
「だって凛さん、顔に書いてあんねんもん」
『いやいやポーカーフェイスでしょうが』
「どこがや」
さすがにポーカーフェイスは無理があるか、と思いながらグラスと氷を用意しようとした手を高橋くんに止められた。ん?と見上げると「髪」と言いながら私の髪の毛をひと束掬う。
「飲む前に髪乾かさな風邪ひくで」
『あ〜暑いから自然乾燥でもいけるかなって』
「あかんあかん、髪痛む」
『色んなカラーして傷んでそうな高橋くんに言われたくないなぁ』
「俺乾かしたるで、ドライヤーどこ?」
『いやいや!さすがにそこまでは!』
「…照れてる」
『急に言われたら誰だって照れます!!』
パッと高橋くんと距離をとって、慌ててドライヤーがある洗面所へと向かう。後ろでクスクス笑われてる気がするけど、気にする余裕もない。洗面所の鏡に映る自分の頬が赤く染まっていて、心臓がドクドク鳴っている。…高橋くん、女慣れしてるなぁ、なんて。胸の奥がチクリとした気がした。
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