1週間の夏季休暇はあっという間にやってきて、明日はついに仙台1人旅!旅行前から夏季休暇は始まっているので、旅行に必要なものを買い足しにショッピングしていたらあっという間に夕方前。晩御飯はどうしようかなと考えながらマンションに到着し、エレベーターに乗り込んだ。
『…あれ?高橋くん?』
8階に到着し、自宅ドアの方を見るとドアの前に人がいた。ん?と思ってよーく見ると、高橋くんで。私の声に驚いたのか、彼の肩がビクッと動いたのが見えた。
「え、なんで凛さんおるん」
『いや、そこ私の家だし』
「仕事は?」
『一昨日から夏季休暇で休み中。って高橋くんまた髪染めた?金髪?』
「まぁ、染めてんけど…まじか…あぁ、まじか…」
なぜか私の家の前で頭を抱えて項垂れている金髪姿の高橋くん。出会ってからいろんな髪色になっているから今更驚きはしないけど、綺麗に染まっている彼の横には大きめの荷物。仙台公演の前日に移動すると言っていたから、これから仙台へ向かうのだろう。
「あの…ホンマは、ちょっとあれかなぁと思って」
『ん?』
「ドアノブにかけておこうと思っててんけど、」
そう言って彼はいつもとは違う歯切れの悪そうな様子で、手に持っていた小さな紙袋を私に差し出した。高橋くんの顔を見てから渡された紙袋の中身をチラッと見る。中には封筒と…ペンライト?
『これ、コンサートとかでファンの子が持ってる?』
「ん、ペンライト」
『え〜こんな可愛いんだ!すごい!』
「で、これ…なんやけど、」
可愛らしいフォルムでキラキラしたペンライト。初めて見た私はその可愛さに驚いて。高橋くんは紙袋から封筒を取り出し、私に「はい」と渡してくれた。
『なにわ 男子 Début tour 2022 1st Love …』
「仙台公演のコンサートチケット」
『え?!』
「せっかくやから、見て欲しいな…って。あの、無理やったら全然断ってくれて良いんやけど」
『え、なんで?!行きたい!』
「あ、ホンマ…?」
不安そうな顔を浮かべながら、ちょっと早口で喋る高橋くんに負けじと大きな声が出た自分にちょっと笑う。まさか行けるとは思ってなかったから、目の前にあるチケットがキラキラして見えて。私が快諾したことに安心したのか、高橋くんは先程の不安そうな顔からホッとした顔つきになった。
「仙台の公演場所、駅から遠いんよ」
『あ、そうなの?』
「で、仙台駅からシャトルバスも出てるからそのチケットも入ってる」
『え、そこまで準備してくれたの?』
「チケットあっても来られへんかったら意味ないし」
『タクシー使ってでも行くよ』
ありがとう、と照れくさそうに笑う彼の姿を見て、私も少し照れてしまう。
高橋くんとたまたま出会って、知り合った頃にはすでにデビューツアーの申し込みは終了していたらしく。連絡を取り合うようになってから、密かにアルバムを買って毎日通勤時間に聴きながら、生で聴いてみたかったなと思っていたところで。
『でも、なんか申し訳ない…』
「ん?」
『だって超人気アイドルのチケットだよ?申し込んで外れた人もいるだろうに…』
私なんかがチケットもらって入っても良いのだろうか…と申し訳ない気持ちになっていたら、頭にポンと高橋くんの手が触れた。
「俺が、見てもらいたいねん」
『え?』
「凛さんに、見てもらいたい。俺のこと」
だから、そんな申し訳なさそうな顔せんで。と言われて、小さく頷く。心臓がバクバク音を立てて。あぁ、どうしよう。なんかもう誤魔化しきれないかもしれない。
『ペンライト、紫色にしておくね』
そう言った私に「当たり前やろ」と嬉しそうな顔をする彼を見て、あぁ、好きだな、と思った。私、高橋くんのことが好き。笑っている姿を見ると胸が苦しくて泣きたくなってしまうくらいに。好き。
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