『まずはチェックインしなきゃなぁ』
ポツリと独り言を吐き出し、スマホのマップを見ながら予約したホテルへと向かう。割と直前にホテルを探したので中々見つからず、後に高橋くん達のコンサートと被ってると知り。そりゃホテルも取れないよなと納得。
せっかくだしと少しグレードアップした部屋を予約して事なきを得た。スムーズにホテルに到着し、チェックインを済ませて部屋に入る。
『おお、広い』
普段なら絶対取らないであろう広めの部屋に自然と声が出た。景色も良い。仙台駅からすぐの場所なので利便性も良い。最高。
キャリーケースを端に置き、ふかふかのベッドに座る。まずは駅周辺を歩こうかな、とスマホを取り出したらピコンっと連絡の通知が来た。

恭平
仙台着いた?
通知は高橋くんからの連絡を知らせるもので。彼は昨日仙台入りし、今日は夜公演のみだと聞いた。多分今頃リハーサル的なものをしているんだろう。
高橋くんが用意してくれたチケットは明日の夜公演。少しドキドキする胸を抑えながら、無事に着きました。と文字を打って、腰を上げた。
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『ん、おいし〜』
仙台名物、ずんだシェイクを飲みながら商店街をお散歩した後、歴史にそこまで興味があるわけでもないけれど、仙台に来たなら伊達政宗像だろう!とバスを利用して観光を楽しむことができた。仙台駅周辺に戻ってきた頃にはあっという間に夜の景色。
『本場の牛タンおいしすぎる…』
観光雑誌から選んだ牛タンのお店で小さく独り言を言いながら、牛タンを堪能する。美味しい。食べる前にしっかり牛タンの写真を撮って高橋くんに送ってみた。今は公演中だから、返信はないけれど。
グビッとビールを流し込み、高橋くんと過去に取り合ったメッセージを見返す。最初はぎこちなかったのに、最近ではしょうもないやりとりが多くて。そんなやりとりも自分の恋心を自覚してしまうと、胸がキュンとしてしまう。
『…不毛すぎるよなぁ』
アイドルに恋するなんて。いや、出会った時はアイドルだなんて知らなかったけど、でも彼は確実にアイドルなわけで。不毛の恋すぎて逆に笑えてしまう。本当、まさかすぎる。
一つため息をついてから残っていたビールを一気に飲んで、お会計を済ませた。なんだか一人旅ってセンチメンタルな気持ちになるなぁと思いながら、ホテルまでの道をスマホのマップを見ながら歩くと、今朝と同じように連絡ツールアプリからの通知。

恭平
いま、おわったー

恭平
牛タンうまそ
俺もこれからメンバーと食べにいくで
無事にコンサートが終わったらしい高橋くんからの連絡。おつかれさま、と返信を打とうとした瞬間、スマホが震え"着信中 高橋くん"と画面に表示された。
『え、電話??』
急な電話に胸が大きく音を立て、慌てふためく。今まで電話なんて来たことなかったのに、と思いつつも早くしないと切れてしまうわけで。深呼吸をしてから通話ボタンを押した。
〈あ、出た〉
『も、もしもし?』
〈凛さん、今電話大丈夫?まだ牛タン食べとる?〉
『あ、いや、もう食べ終わって、ホテル戻る、とこですね…』
〈何で敬語なん??〉
私の焦りが伝わっているのか何故か敬語なことに高橋くんがクスクス笑っているのがわかる。恥ずかしい。耳元で高橋くんの声がするのは、今の私にはちょっと刺激が強すぎる。
『あ、いや…あ、コンサートお疲れ様』
〈ん〜疲れたけどたのしかったわぁ〉
『そっか』
〈凛さんが送ってくれた写真のせいでめっちゃ腹減った〉
『美味しかったよ、牛タン』
〈まぁ、俺もこれから食べに行くし〜〉
『いっぱい食べておいで〜、って、高橋くん何か用あったんじゃないの?』
〈ん?〉
連絡先を交換して、初めて電話がかかってきたということは何か私に用があったのでは?と聞いてみると、電話先の高橋くんは〈ん〜??〉と何やら考えている様子。ん?何のために電話したのか忘れた?
『用件忘れたの?』
〈ん〜いや?ちゃうけど〉
『ん?』
〈ただ凛さんと電話したいなぁ思ってしただけ〉
高橋くんの言葉に驚いて声が出ない。いや、何だその理由。可愛いすぎる。私の声が止まったことに気づいた高橋くんがまた面白そうにクスクス笑うから、わざとらしく大きなため息をついた。
『高橋くん、笑いすぎ』
〈いやだって、凛さん、絶対今顔真っ赤やろ〉
『赤くないです〜!!もう!用ないなら切るよ!』
〈ごめんごめん、怒らんとって〉
どっちが年上なんだかわからないってくらい、高橋くんにおちょくられて恥ずかしいやら何やら。話していたらあっという間にホテルに着いていて、私の『あ、ホテルついた』の声に高橋くんが〈俺もそろそろシャワー行くわ〉と一言。
〈無事、ホテル着いたんならよかったわ〉
『…ん?』
〈また、明日。待ってるな〉
『あ、うん。楽しみにしてるね』
おやすみなさい〜と挨拶をしてから通話を切る。もしかして、高橋くん、私が無事にホテルに着くまで電話してくれてた?…いや、さすがに自惚れすぎか…。
アルコールのせいか高橋くんのせいかわからないけど、少し熱くなった頬を押さえながらホテルのエントラスへと足を踏み入れた。
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