「あれ、大吾くんどうしたん?」
「みっちー、みて。あれ」
宮城公演初日が無事終わり、パパッとシャワーを浴びたらメンバーとマネージャーさんとで牛タンを食べに行くことが決まっていた。俺も早くシャワー浴びに行かな、と思ってたら物陰に隠れている大吾くんが。
「…あれ?」
大吾くんが指差す先には…誰かと電話している恭平の姿が。普段なら公演後即シャワーしとるはずの恭平がシャワーも浴びずに電話なんて珍しい。しかもこっちからは恭平の背中しか見えへんけど、何やら楽しそうな声が聞こえる。
「ただ凛さんと電話したいなぁ思ってしただけ」
その恭平の言葉に思わず声が出そうになるのは俺だけやなくて大吾くんも同じやったみたい。2人で口元を押えながら「今の聞いた?!」とアイコンタクト。凛さん、っていつのまに恭平彼女できとったんやろ?このまま盗み聞きすんのも、良くないよなぁと思いつつも動けへんまま恭平の様子を伺う。
「また、明日。待ってるな」
普段よりも優しい声でそう言う恭平の顔は、見なくてもわかるくらい優しい顔しとるんやろうなって。大吾くんを見たら、もうニヤニヤした笑顔が止まらんらしい。いや、もう聞いてもうたからな、わかるで、そのニヤニヤしたくなる気持ち。
恭平にバレる前にその場を離れようかと思った矢先、後ろの段差に気づかず身体のバランスを崩し「うわぁ!!」と大きな声が出た。
「わ!どないしたん!みっちー」
「ご、ごめ、後ろ段差あるの気づかんかった」
俺の大声に大吾くんが反応して、咄嗟に支えてくれたから怪我せずに体勢を整える。うわ、びっくりしたぁと言いながら顔を上げると、がっつり恭平と目があった。
「「あ、」」
「…なぁ、いつからそこおったん?」
先ほどの優しい声から一転。眉間を寄せ不機嫌な声で発せられた恭平の言葉に俺と大吾くんは、苦笑いしかできひんかった。
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「さいっっあくや!!」
メンバーとマネージャー、みんなで牛タンを食べながらアルコール代わりのソフトドリンクを一気飲みする。明日もコンサートやし、凛さんも見にくるし…と思ったらお酒やなくてソフトドリンク一択やった。俺の不満げな声に隣に座っとるみっちーが「ごめんごめん」と謝るけど、ぜーんぜん謝られてる気がせぇへん。
「盗み聞きなんて趣味悪すぎやで」
「もぉ、ごめんて〜だって大吾くんが先居ったからさぁ」
「だってなぁ?珍しいやんあんな恭平」
ニコニコというよりはニヤニヤしている隣のみっちーと目の前に座る大吾くん。何やねん、この配置。拷問すぎるやろ、と思いながらも口に運ぶ牛タンは美味い。凛さんから送られてきた写真の牛タンも美味そうやったけど、これも美味い。
「で、いつから付き合ってんの?」
「まだ、付き合ってへん」
「…"まだ"なんや」
みっちーからの質問にポロッと答えたら、大吾くんがニヤリと笑いながら言葉を拾い上げる。もう、あかん。恥ずかしい。やっぱ一杯だけでもお酒飲んでおけばよかったかもしれへん。
「凛さん、やっけ?」
「名前までしっかり聞いとるやん」
「明日コンサート来るん?」
「あ〜…まぁ?」
「昼?夜?」
「教えへん」
え〜と不満げな声を上げる2人を無視して、追加でコーラを頼む。あの電話での会話を聞かれとったのは、もう一生の不覚。恥ずかしすぎ。今度電話する時は絶対誰もおらんとこでしよ。
「凛さん、ってことは年上?」
「ん〜丈くんと同い年」
「恭平の〜4つ上か」
「え〜会ってみたいなぁ」
「みっちーは会ったことあんで」
「え?!うそやん?!どこで?」
根掘り葉掘り聞かれるのは嫌なはずやのに、素直に答えてしまう自分もアホやなぁと思うけど。でも、凛さんとのこと、誰にも話とらんかったから話せてちょっと楽しいと思ってる自分もおるわけで。
「コンサート始まる前、リハ期間に俺のマンションの下のコンビニ行ったの覚えとる?」
「あ〜行ったなぁ、え、そん時?」
「俺がコーヒー譲ったんは覚えとる?」
「…え、もしかしてそん時の女の人?」
こくんと頷くと、みっちーは目を見開いで驚いた。まぁ、驚くわな。大吾くんは、会ってへんから俺も会いたいー見たいー!と口を尖らす。ぜっっったい会わせたくないっすわ!と言うと大吾くんはケラケラと大笑いしとった。これは半分酔うとるな。と小さなため息を漏らした。
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