甘い甘いコーヒー


「あっま、」

「恭平が甘いの飲んでるの珍しいなぁ」


不思議そうな顔を浮かべながら俺に近づいてきたりゅちぇに、まぁ色々あってん。と言いながら今朝のことを思い出す。コンビニで買ったカフェオレは想像以上に甘かった。


「恭平、格好つけて買おうとしたコーヒーお姉さんに譲ってんで」

「おい、みっちー言わんでえぇねん」

「わー恭平かっこいいー」

「りゅちぇ、棒すぎるわ」


別に格好つけたわけやない。ただコーヒー売り場でブラックコーヒーないのショックを受けてる人がおったから、飲みたいなら譲ったろうかなぁってぐらいで。俺別に何でもええし。


「あとな、みっちー。俺は格好つけたんやなくて格好えぇねん」

「はいはい」


呆れた様子のみっちーを見つつ、またカフェオレをひとつ。まぁ、この甘さもたまにえはえぇか。


「ちょお、みんな集まってー。セトリのことで話あんねんけど」


大吾くんの声にメンバーがぱらぱらと集まる。今、俺たちはデビューして初めてのアリーナツアーが始まろうとしている。ツアーの構成演出を担う大吾くんはめちゃくちゃ大変そう。俺も俺で、ダンスの覚えが他のメンバーに比べて悪いのは自覚してるし、歌もまだまだ。課題もたくさんあるけど、やっぱライブはワクワクする。


「このとき、もっと動いて会場盛り上げた方がえぇと思うねん」

「せやな、下手と上手でバーっと出てくる時ちょっとお客さんの方意識して」


丈くんと大橋くんの声に耳を傾け、曲中の自分の立ち位置の確認。全体で盛り上がるためには、俺らも楽しまなあかん。どうしたらお客さんが楽しんでくれるかが、いつも悩むところでもある。


「謙杜、この時の衣装ってここ変更できる?」

「ここ?ここはー…こっち側変えることはできるで多分」


グループ最年少の謙杜もコンサート衣装を何着か担当してて、ファッションセンスに磨きをかけてる。ほんまに凄いなぁって毎日感心するばっかり。


「よし、一回ここの部分通してみよ」


大橋くんの声でみんな背筋が伸びる。俺も練習靴の靴紐をギュッと結んで、気持ちを引き締めた。


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