宴の始まり

12月24日クリスマスイブ。週末の今日は、イブだなんて関係なしに仕事。金曜日だからか半休を取る人もいたりして、同僚も彼氏とのデートが楽しみだと頬を緩ませていた。まぁ、彼氏のいない私としてはなんてことない1日。


「野崎」
『ん?なに?』
「今日、暇な同期で飲みにいこうって話してたんだけど、野崎暇だろ?」
『勝手に決めつけないでもらって良いですか〜?』
「で?」
『…暇なんで行きますけど』


就業時刻まで残り40分となったところで、同期の佐藤くんに声をかけられた。クリスマスイブ、1人で過ごすのも寂しいし同期たちと飲むのも悪くないってことで承諾し、手元の書類に視線を移す。
そういえば今日は駿くん、歌番組の生放送あるって言ってたなぁ。彼へのクリスマスプレゼントは買ってあるけれど、忙しそうにしているのでいつ渡せるのか。年内に会えるタイミングあるかな、と考えながらも仕事に集中することにした。



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「「「「「かんぱーい!」」」」」


グラスを合わせ、ビールをごくごくと飲み込む。急遽決まった同期会、男子6人女子4人と意外と集まってみんなクリスマスイブなのに暇なんだねぇ寂しいねぇとお互い言い合って笑った。


「野崎、飲んでる?」
『飲んでる飲んでる』
「相変わらずペース早いな」
『ん〜?わたし的には普通』


今回の幹事、佐藤くんが隣に来て世間話を楽しむ。彼は同期の中でも新人研修のチームが一緒だったから割と仲が良い。ポテトをつまみながら、仕事の忙しさや上司の愚痴で盛り上がる。



「で、野崎は誰か良いやついないの?」
『う〜ん、それここにいる人達に聞いても答えは明白でしょ』
「ま、そうだけど」
『そういう佐藤くんこそ誰かいないの?』


何杯目かわからないアルコールを摂取して、隣の彼に視線を移すと、若干酔っているのか「ん〜俺は…ねぇ?」と困った表情を浮かべている。あれ、なんか聞いたらまずかったか??と思い話題を変えようと思った瞬間、テーブルに伏せて置いておいたわたしのスマホが音を立てた。


『あれ、駿くん?』
「…しゅんくん?誰それ」
『ごめん、ちょっと出てくる』


【着信中:駿くん】と表示されたスマホを慌てて手に取り、にぎやかなその場を離れた。お店の外に出て、通話ボタンを押す。



『もしもし』
〈あ、奈那ちゃん、今、大丈夫?〉
『うん、大丈夫だよ〜どうした?』



電話をかけてくれた駿くんの後ろは何やらガヤガヤしていて、仕事先からかけているのだろう。ふと腕時計を見ると時刻は21時半すぎ。生放送の出番は18時過ぎと言っていたから、そろそろひと段落したタイミングだったのかな?


〈あの、俺もう少しで仕事終わるんよ〉
『うん』
〈で…奈那ちゃん、家におるかなぁって思ってんけど、〉


駿くんがそう言ったあと『今、同期と飲んでるけど、』と言おうと思った瞬間、お店のドアが開く音がして「野崎、」と後ろから佐藤くんに声をかけられた。まだ電話中のわたしを見て彼は慌てて謝る素振りをして小声で「ラストオーダー、なんかいる?」と聞いてきた。私がいらない、と首を振ったのを確認して佐藤くんは店に戻って行く。


『あ、ごめんね、駿くん。今ちょうど同期と飲んでて』
〈…ううん、俺こそ何か、ごめん〉
『んーん、で、駿くん家帰って来れる感じ?』
「あぁ〜うん、着くの23時頃になるけど、奈那ちゃんいるなら帰ろうかなって、思って」


電話越しでも苦笑いして話しているのが想像できてしまって、申し訳ない気持ちになる。多分私が同期と飲んでいたのを邪魔してしまったと思っているのだろう。


『駿くん明日も早いの?』
〈明日は午前中オフで、昼過ぎから仕事やから、家泊まろう…って泊まるってのも変やな?あの、帰ろうかなって、思ってたんやけど〉
『本当!?じゃあ、私も駿くん帰ってくるまでに家帰るね』
〈え、えぇの?今、飲んでたんやろ?〉
『ん?もうそろそろ終わりの時間だったし、同期との飲みなんていつでもできるからね』


そう言うと「ほな、帰るな」とちょっと嬉しそうな声が聞こえてホッとする。駿くんは現場でイブだからとミニホールケーキを貰ったらしく、そういえばイブなのにケーキを食べてないことに気づいた。


『ケーキ食べてなかった』
〈あ、ほんま?それなら家帰ったら一緒に食べよ〉
『やった〜ケーキ!楽しみ』


じゃあ、また後で。気をつけて帰ってねとお互い声をかけて通話終了ボタンを押す。駿くんに買ったプレゼントもなんとかクリスマス中に渡せそうで一安心だ。
お店に入るとすぐ、二次会どうする??と誘われたけど『今日は帰るね』と返して、少しそわそわする気持ちを抑えながら緩くなったビールに口をつけた。

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