班分


アームがゆっくりだったのは潜行警報が出てたからだったみたい。出口を最上部に造り、囚人を収容する時は潜行し、終えれば上がって囚人を脱走させない様にする。潜行式の刑務所だなんて、ガ軍も色々考えてるみたいね。
兎に角、無事外で合流した私達はガ軍の車に乗って収容所を後にした。その車の中でリノアがガーデンをミサイルで爆破するってアーヴァインが言ってた事を教えてくれた。
スコール達の前を走ってた私達は車を止め、外に出た。彼らも何事かと私達と同じ様に外へ出た。

「なんだよ」
「魔女がガーデンをミサイルで攻撃するんですって!」
「アーヴァインが言ってたってリノアが言ってたよ!」

キスティスとセルフィの言葉にスコールは少し考えて顔を上げた。

「俺たちにできる事は、可能な限り早くガーデンに戻って危険を知らせることだけだ。さあ、車に戻れ」
「攻撃目標はバラムとトラビアのガーデンなんだよ〜!ミサイル発射妨害!ミサイル発射阻止!」
「セルフィ…」
「あたし、トラビアから転校してきたばっかりなんだよ。だからトラビア・ガーデンがピンチだって聞いて黙ってるわけにはいかないのよ!」
(そっか。セルフィ、トラビア出身だったんだ)
「だから、はんちょ、お願い!ガルバディア・ミサイル基地侵入させて!」

いつもののほほんとしたセルフィとは違う。必死さが伝わってくる。でも今の班長はスコール。決めるのはスコールだ。
その時、遠くでミサイルが空に向かって数本飛んでいった。

「あのさ…ターゲットは最初がトラビアで次がバラムだって聞いたよ」
(じゃあ、あれはトラビアに…)

言葉が出ずセルフィを見れば、ゆっくり体をその場に崩した。

「ごめんな、トラビアのみんな。あたし、なんもできへんかった…。せやけど、みんな無事におってや。また会えるやんね」

顔をあげて私と視線を合わせた彼女は、強い瞳をしていた。

「今のミサイルは…ハズレだよね〜?」

彼女の言葉に、何も言わず微笑む事しかできなかった。

「スコールはんちょ、早くバラムに報告!報告班、誰を連れてく?あたしはミサイル基地侵入チーム!絶対行くんだから!トラビアの仕返しなんだから!」

みんな、スコールに視線を向けて彼の決断を待っている。彼は頭を抱え考え込んだ。そりゃそうだろう。ミサイル基地侵入チームは何の計画もない。周り全て敵の中侵入できても、脱出出来る保障はない。そんな場所に自分の一存で向かわせる重みは相当なものだろう。だけど、そんな選択を任せられるのは、皆がスコールを信用している証拠。
私はスコールに近づき、肩をポンと叩いた。

「大丈夫。みんなを信じよう」

そう言えば、いくらか強張った表情が柔らかくなった気がした。

「…セルフィ、キスティス…それからアーヴァイン。3人はミサイル基地に侵入し、ミサイル発射を阻止してくれ」
「りょうか〜い!」
「任せて」
「彼女達は僕が守ってあげるから安心してよ〜」
「これは今までの任務とはちがう。誰の命令でも依頼でもない…。セルフィ、何か作戦があるのか?」
「このガルバディア軍の車で行けば、なんとか基地には入れると思うんだ。でも、その後はぜんぜんわかんないから、基地の中で考えるよ。…ごめんね…、ううん!ありがと!」

セルフィは笑った。私も、そして他のメンバーも彼女の笑顔に返すように笑った。

「きっと時間、あんまりないよ〜!早くバラムガーデンへ!」
「バラム・ガーデンで会おう」

お互いに敬礼をして、車に乗り込んだ。セルフィ達はきっと大丈夫だ。私達は信じて進むだけ。二台の車両が別の道を進んでゆく。ミサイル基地に向かって進む車をリノアが窓越しに見送っている。

「大丈夫だよ。キスティスもいるし、みんなガーデンで侵入訓練も受けてるんだから」
「…うん。そうだよね」
「私達は、私達の仕事をしなくちゃね!」
「うん!」

私達は視線を前方に向けた。

「スコール、ここからどうするんだ?このままバラムまでは戻れないだろ?」
「あそこに見える駅から列車に乗れば戻れるだろう」
「でも、あの駅って確かガ軍の物資運搬専用駅のはずだよ…」
「じゃあ…仕方ないよね?」

ニヤリとして言った私にスコールは少しだけ口角を上げた。



***



兵士が近くにいないのを確認して、車を止めた。素早く車から降りて、近くの列車に近づいた。列車を挟んで反対側で兵士の会話が聞こえる。

(こいつらを先頭車両から引き離さないと)

隣にいたスコールの肩を叩き、手で先に乗り込むように指示して、私は後方車両に向かって走った。

「(魔力はまだ回復してないけど、これくらいなら)―ファイア」

小さな声で魔法を詠唱し、離れた場所にある貨物に命中させた。

「何だ?!」
「何が起きた!」

兵士達が一気に爆発音に向かって集まってきた。兵士が車両を離れたと同時に列車が動き出した。スコール達がやってくれたのだ。
貨物列車のとってに手をかけ、縁に乗っかった。

「あっ!こ、こら〜!貴様ら、何をする!」
「あら、気づかれちゃったか」

そりゃ、こんなに堂々と列車に乗ってたらバレるよね。一番後ろだし、丸見えだよね。

「すみませ〜ん!ちょっと列車借りますね〜!」
「ま、まて〜!ぬぉぉぉおおお!ガルバディア魂を見せてやるーー!」
「お〜お〜、めっちゃ頑張って走ってるよ。結構早いよあの人」
「ぁあああぁぁぁぁ……」

失速して最終的に自分の足に躓いてこけた彼に、片手で合唱…。

「お疲れ様でした」

遠くに見えたミサイル基地。

(セルフィ、キスティス、アーヴァイン。…無事でいてね)

彼らの無事を祈って、私達はその地を後にした。

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