SeeD狩り



――ごめんね

どうしてそんな哀しそうな声で謝るの?

――逃げなさい…生きて…。

待って!あなたは―…

「ファーストネーム?」
「!」

呼ばれてハッとした。

「…ごめん。私、寝てた?」
「ううん。ほんの1分くらい目を瞑ってただけ。大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとっ」

目に手を当て、ぼやけた視界をはっきりさせた。今はバラムに向かう大陸横断鉄道内だ。海底を通っているから外の景色は見えない。収容所を出て数時間が経過した。

(ガーデンは大丈夫かな…)

こんなに不安な気持ちでガーデンに帰る事は今までなかった。シド学園長、エリックにイリス。他のみんなも無事でだといいけど…。

『次の停車駅は〜終点、バラム、バラムです』

車内アナウンスが流れた。私達は腰を上げ、キャビンを出た。真っ暗だった窓の外が明るくなり、その眩しさに目を細めた。町を離れた時と変わらない景色。駅に到着して辺りを見渡したが、特に何かあったような素振りは見えなかった。

(まだミサイルは飛んできてないのかな…)

私達は駅を出て郊外へ抜ける道を進んだ。急ぎ足でバラム平原へ出ると、遠くにまだ静かに佇む学園の姿が見えて、ひとまず安心した。でもまだ飛んでこないと決まった訳ではない。

(急いでシド学園長に報告しないと)

焦る気持ちを抑えて、私達は街道を走ったが、少しずつ近づくガーデンから目が離せなかった。



***



「急げ急げ!」

バラム・ガーデンの正門を通ると、なにやら中が騒がしい。カードリーダーへ続く通りの真ん中にいるガーデン教師が右往左往する候補生に指示を出している様だ。

(この騒ぎは?もしかして、もう避難が始まってるの?)
「シド学園長を探し出せ!見つけたらバトルで始末しても構わん!」
(?!どういう事?)
「行けーッ!シド学園長を捕まえろ!」
(なんで学園長を?!)

私達は何が起きているのか分からないまま、内へ進んだ。忙しそうに学園内を走り回る生徒達。カードリーダー前に着いてもそれは変わらなかった。
私達が辺りを見渡して立ち尽くしていると、近くにいたガーデン教師が走ってきた。

「マスター派か、学園長派か?」

いきなり意味の分からない事を言ってきた先生。私は勿論、スコール達も困惑した表情だ。

「どうした!マスター派か学園長派かと質問している!」
「意味がわかりません」

班長のスコールがそう返したら、先生はイライラした様子で言葉を返してきた。

「マスターのノーグ様に忠誠を誓うか!?」
(マスターって…確か経営管理をしてる人の事よね?シド学園長がマスター兼任してるものだと思ったけど違ったの?じゃあ、ノーグって人がマスターなの?)

頭の中で教師が言った事を整理してみるが、他の3人は全く何の事だかさっぱりの様子。

「…いったい、何がおこってるんですか?」
「質問しているのはこっちだ!生徒は何も考えず戦えばよい!…なんだその反抗的な顔は!」

納得がいかず黙っていると、その態度が癇に障ったのか制服教師が声を荒げ始めた。そう思うと、お前達は学園長派だな!と言って笛を勢いよく吹いた。
ピピーっと響く音を聞きつけてモンスターが出現した。

(こいつら、訓練場の!)

あの笛の音はモンスターを呼び寄せる力があるのか、私達目掛けてモンスターが襲い掛かってきた。

「ノーグ様こそが、ガーデンの支配者なのだ!」

制服教師はそういい捨ててその場を去っていった。

「一体、なんだってんだ!」
「わからない」
「兎に角、ここを突破して学園長を探さないと!」

皆、武器を構え、襲い掛かるモンスターに攻撃をしかけた。訓練場のモンスターは候補生当時から何度と戦ってきた。弱点も攻撃パターンも手に取るように分かる。呼び出されたモンスターを難なく倒し、私達は建物内へと急いだ。
カードリーダーを抜けロビーに入ると、中央の行き先板の前に見知った顔がいた。

「風神!雷神!」
「おう!帰ってきたか!」

風紀委員の風神と雷神に何が起こってるのか聞くと、いきなりSeeD狩りが始まって、今は学園長派、マスター派に分かれて戦闘が行われているとか。

「SeeD狩りって?シド学園長は無事なの?」
「オレたちゃなんも知らないもんよ」
「俺達、シド学園長に報告することがあるんだ。ここは危険だ。ミサイルが飛んでくるかもしれない」
「!、さっさと逃げ出すもんよ!」

ミサイルが飛んでくるという言葉に、雷神が慌てて風神に言うと、彼女は思いっきり雷神のすねを蹴った。ダメージを受けた彼は蹲って、一人で逃げちゃ卑怯だもんよ、と弁解した。

「みんなにも知らせるかんな!戦ってる場合じゃないもんよ!」
「注意!」
「各施設ともに、戦闘が激しいもんよ!マスター派のSeeD狩りにも気をつけるもんよ!」
「おい、おまえらは…」
「学園長派?」

ゼルとリノアの言葉に、俺達はサイファー派だと笑って言って、彼らは学園の奥へ走っていった。

(…サイファー派…か。もう、あの時のサイファーはいないんだよ)

心の中で呟いて、私達は学園長を探す事にした。

「一箇所ずつ周っていたら時間がかかる。手分けして探すぞ」
「じゃあ、私は保健室側から」
「オレは図書室側から周るぜ!」
「えっと、じゃあ、わたしは…」
「リノアはゼルと周れ」
「…分かった」

少し残念そうにしたリノア。だけど、男女でいた方が効率がいい。

「反対側で落ち合いましょ!」

頷き、私達は右と左に分かれて探索が始まった。



***



保健室、校庭と探索をし、今は食堂へ向かう最中。雷神が言っていた通り、各エリアともガーデン教師率いるマスター派と、学園長派のSeeDとで対立が起こっていた。フロアを封鎖する様にSeeD達が立ちはだかる。それは学園長がいるとカモフラージュする為だとか。

(これじゃ、こっちもどこに学園長がいるか分からないな)

ホールから食堂へ続く廊下には、やはりマスター派とSeeDが対峙していて、その人物は私のよく知る彼らだった。

「エリック!イリス!」
「?!、ファーストネーム!」

私の声にマスター派の面々が振り向き、その隙を見てエリックとイリスが手刀を候補生の首に叩き込む。崩れ落ちる候補生の姿を見て、教師はいそいそとその場を去っていった。

「戻ったんだな」
「うん。雷神に話聞いたけど、何でこんな事になったの?シド学園長は無事?」
「私達もいきなりの事でわからないの。学園長の事だったら、シュウが知ってるんじゃないかしら」
「シュウが?」
「あぁ。この騒ぎが起きて、真っ先に指揮をとったのが彼女だからな。でもどこにいるかは俺達もわからねぇんだ」
「そっか。…分かった。私達はシュウを捜してくる。エリックとイリスはみんなを学園から避難させて」
「避難?なんでだ?」
「ガルバディアがガーデンに向けてミサイルを飛ばしてくるかもしれないの」
「ミサイルを?!」
「…こんな事で争っている場合じゃないって事ね」

コクリと頷けば、俺達に任せとけと言って2人はその場を他のメンバーに任せ、避難指示に向かってくれた。

「スコール!ファーストネーム!」

エリック達と入れ替わりに反対側を捜索していたゼル、リノアが駆け寄って来た。

「あっちには学園長いなかったわよ」
「どうやらシュウが学園長の居場所知ってるらしいぜ!」
「俺達も今聞いたところだ。…このフロアにいないという事は」
「2階。教室フロアだね」

私達は食堂を抜け、2階に続くエレベーター前に向かった。雷神らやエリック達が非難を進めてくれているのか、さっきよりホールを走るマスター派が減った様に思える。そんな中、エレベーターに乗り込む彼女の姿を目撃した。

「シュウ!」

彼女の名を呼んだけど聞こえなかったのかそのままエレベーターに乗り込んでしまった。

(早く追いかけないと!)

彼女の後を追い、私達も下りて来たエレベーターに乗り込んだ。


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