MD


「あなた達、どっち!?」

2階廊下奥でシュウと合流する事ができた。その瞬間、この言葉である。

(無理はないよね。これだけ混乱状態だと誰が味方とか分からなくなる)
「どっちでもない。シド学園長に報告がある。学園長はどこだ」

私に視線を合わせてきたシュウにコクリと頷くと、彼女は警戒を解いて腕を組んだ。

「私から伝えるわ。ここで言って」
「ここを狙ってガルバディアのミサイルが飛んでくるかもしれない」
「ここに!?…わかったわ。学園長に伝えましょう」
「学園長はどこに?」
「学園長室よ。逃げたとみせて、何処にも行っていない。王道よね」

フフと笑ったシュウは、急ぎ足でエレベーターに向かった。私達は2階に残っていた生徒達に避難を呼びかけ、学園長室へと向かった。
エレベーターで3F、学園長室フロアに着くと、シュウが学園長室から出てきたところだった。

「学園長が詳しい話を聞きたいって。私はみんなにガーデンから避難するように伝えてくる」

エレベーターで降りていくシュウを見送り学園長室に入ると、シド学園長が手に持った何かを見つめて立ち尽くしていた。

「スコール班、戻りました」

敬礼をすると、学園長がご苦労様です、と声をかけてくれた。

「ミサイルの事は聞きました。避難命令を流そうとしたのですが、館内放送がダメになってるみたいです」
「シュウ先輩、雷神風神、エリック先輩にイリス先輩がみんなに伝えに行ってます」
「それでは、君達もみんなに知らせつつ避難してください」
(シド学園長?どうしたんだろう…何か様子がおかしい)
「学園長、いろいろ報告が―」
「無事再会した時に報告してもらいましょう。いいですね?」

敬礼する学園長。でも私達はそれに返すことができない。

「気に入りませんか?」
「…学園長はどうするんですか?」
「私は最後まで頑張りますよ。ここは私の家みたいなものですからね」
「まかさガーデンと一緒に!」
「ダメよ、シドさん!ガーデンはまた作ればいいけどシドさんは一人なのよ!」

ゼルとリノアが声を上げて言った言葉に、学園長派フフッと笑った。

「勘違いしてはいけません。試してみたいことがあるのです。このガーデンを守る事ができるかもしれません」

優しく微笑んで学園長は部屋を出ようとした。だけど、ガクンと体が崩れ、その場に膝を付いた。

「学園長!」
「…あはは…歳はとりたくないですねえ」

駆け寄った私に、自傷気味に言った。

「何をするつもりなんですか?それ、俺にやらせてください」
「…なぜそうしたいのですか?」
「……」

“なぜ”と問われ、スコールは言葉を詰まらせた。多分、頭の中で色々考えているのだろう。

「……俺の気持ちなんて、関係ないと思います」

色々考えて出てきた言葉がこれだった。

「キスティスの報告通りですね。自分の考えや気持ちを整理したり、伝えたりするのは苦手なようですね」
「フフッ」

苦い顔をするスコールがおかしくて、私も他のメンバーもクスリと笑った。

「…学園長。さっき、ガーデンは家のだと言いましたよね?…それは私も同じです。ガーデンは私の家。学園長は、私の家族です。だから守りたい。…守らせて、くれますよね?」

そう言えば、学園長は顔を綻ばせ、立ち上がると手に持っていたキーをスコールに投げた。

「この建物は元々シェルターでした。それを改造したのが今のガーデンです。それはエレベーターのロックを解除するカギです。ロックを解除するとMD層へ行くことができます。MD層のもっと深い所には、何かの制御装置があるらしいのですが、シェルター時代の装置らしく、私は一度も見た事がないのです。勿論、どんな機能なのかも知りません。ただ、シェルター時代の装置ですから、ミサイルにも効果があるかもしれません。それに賭けてみようというわけです」

不確かで頼りない情報だけど、学園長の言う通り今はそれに賭けるしかない。

「わかりました。MD層最深部へ行って、その未確認の装置を起動します」
「お願いしますよ」

今度こそ敬礼をして、私達一向は地下最深部にあるという装置を起動しにエレベーターへ乗り込んだ。



***



「ガーデンの地下にこんな場所があるなんてね…」

学園長に貰ったキーをエレベーターに接続すると、エレベーターは1F、地下、その先へどんどん下っていく。途中でガクンと止まって床にある戸を開けて梯子を更に下へ下へ。
一番下まで下りると通路があり、その先に下へ降りる戸があった。

「凄い…匂いがする」
「オイル層になってるんだね」

戸から飛び降りると、辺りに充満する匂いにリノアは鼻を摘んでいる。空気も何だかかび臭い。できる事なら早くここから出たい。でも私達が向かうは最下層。早く出たくば、最下層に行って装置を起動させないと。

「ミサイルもいつ来るか分からない。先を急ぎましょ」
「何が起きるか分からない。各自戦闘の準備はしておくんだ」
「もう準備は万端だよ?」

腕に付けた盾をカチッと装着し、ゼルも自分の拳を合わせ、よっしゃっ!と言っている。リノアも目を合わせてコクリと首を振った。

「…行くぞ」

スコールの合図で私達は駆けた。

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