F.H.U


「理解はできるけど…やっぱりモヤっとするね」
「どこでも歓迎されるってわけにはいかないだろ?」
「まぁ、そうだね」

駅長の家を出てはぁ〜、とため息を吐く。ちょっと予想してたけど、私達は歓迎されていなかった。駅長と対面早々いつでていくのか聞かれてしまった。色々言われたけど、要訳すると『技術者を出すからガーデンが直り次第出て行け』って事。部外者を私達の一存で入れるわけにはいかないから、学園長に報告の為駅長の家をでた。
空を写し出すパネルの光に目を凝らし歩くと、ゼルとリノアがおーい!と手を振ってこちらに駆けてくる。

「ゼルはあの場にいなくてよかったかもね」

あんな事言われたらゼルの事だ、絶対怒り出すに決まってる。クスッと笑うとそうだなと無関心な感じに言われた。
私たちも彼らのもとに歩いていると、ゼルとリノアを押しのけて男性がこちらに向かって走ってきた。かなり慌ててどうしたんだろう?

「ガッガッガッガッガ−、」
(が?)
「ガルバディア兵が!」
「!?」

息を切らせ、駅長の家に向かって叫びながら私たちの横を走り抜ける。

(何でガ兵がここに?ミサイルが外れたのが知れて追ってきたの?)

「あっちか」
「スコール、行こう」
「待ちなさい!」

ゼル、リノアと合流して走り出そうとした時、後ろから誰かが声をかけてきた。それは駅長の奥さんだった。

「ここに来るガルバディア軍は、あんたたちを狙ってるんだろ?」
(確信はないけど、たぶんそうだろうな)
「あんたたち責任をとりなさい!」

穏やかな空気流れる町にガ軍みたいな危ないやつが乗り込んできたんだ。怒るのも仕方ないのかもしれない。

「フロー、彼らに任せてはいけない。バトル抜きでは何もできまい」

彼女の後ろから現れた駅長の言葉に、ゼルが顔を歪めたのが視界の端で見えた。
話し合えばわかるさ、とお年寄りとは思えない足取りで中心街へと向かっていった。

(…放ってはおけない、よね)

私に続いてスコール達も駅長を追って走った。



***



駅前広場に駅長とガ兵の姿が見えた。駅長が何か話している。

(ガルバディアの目的がガーデンなら、駅長は関係ないよね。一体何を話してるんだろう…)

隠れる様に体勢を低くし、彼らの会話に耳を傾けた。

「だから、何度も言っただろう?この街にはエルオーネなんて娘はいないんだ」
(エルオーネって、ガーデンで会った…)
「街に火をつけるぞ」
「ほ、本当だ!エルオーネなんて知らん!」

否定する駅長の言葉に大きな笑い声を上げたガルバディア兵。

「娘がいてもいなくても街には火をつける。イデア様の命令だからな」
「お、お願いだ、やめてくれ!」
「あんたから行くか?」

ガ兵が駅長の首を掴んで持ち上げた。

(これ以上はまずい!)

その場から駆け、彼らのもとに姿を出した。私達の姿に驚いたガ兵は駅長から手を放した。尻もちをついた駅長の体を支えてガ兵から少し遠ざけた。

「なんだお前らは?」
「SeeDだ」
「?!おーい!SeeDがいやがるぞ!アイアン・クラッドを呼べ!」

遠くにいる兵士に声をかけてる。遠くの兵士が敬礼をしたあと遠くへ走って行った。

「この町のやり方に合わないけど、俺たち、この方法しか知りません」

腰をさすってる駅長にスコールが言った。ちょっと皮肉に聞こえるけど、本当にそうだから仕方ない。

「スコール!」

リノアの声に振り向くと、声を聞きつけたガ兵が集まってきた。

「早く、物陰に隠れて下さい」

駅長が離れるのを確認して、鞘から武器を抜く。でも、私が手を出すまでもなくスコール達がガ兵を倒してしまっていた。

「ま、俺達の実力ならこんなもんだろ!」

喜々としてゼルが言ったが、そんな余韻に浸る前に高台の道路からガガガと大きな音が聞こえてきた。見上げれば、青い戦車がこちらに向かって進んで来る。
私たちの何十倍も大きなその戦車は何故かそこら中焦げ跡や煤が付いていて、所謂壊れかけ。この兵器に何があったの?なんて思ったけど、いきなり私たちに銃器を向け、発砲してきた。

「行くぞ!一気に叩きつぶす!」
「了解!」

同時に地を蹴り、呪文を唱える。

「サンダー!!」

見て分かる程装甲の硬いこの兵器にはサンダー程度の魔法じゃビクともしない。ゼルが装甲の薄そうな所に拳を叩き込んでたけど、ヒビすら入らない。

「こいつすげぇ硬いぜ!」
「今にも止まりそうな感じなのに、さすがガ軍の兵器って感じ」
「冷静に言ってる場合じゃないよ!こんなのが街で暴れたら大変だよ」

慌てるリノア。

(さぁ…どうしたものかな…)

これだけ装甲が硬いと内部まで届く魔法は限られてる。自分が使える魔法じゃ…無理か。せめて雷属性のG.F.を使役できればいけそうだけど、あいにく私たちは装備していない。
後は…中に入って直接サンダーをぶつけるか…。

「スコール」
「なんだ」
「これだけ大きい兵器だから、遠隔操作で動かしてるとは考えにくい。きっと内部に入るハッチがどこかにあるはず。それを探すから、ちょっとこいつの気をひいてて」
「…了解」

スコールが魔法を繰り出すと同時に、私は地を蹴り戦車の上に飛び乗った。
大きく揺れる戦車の外装に目を凝らすと、見つけた丸い取手。これを回せば中に入れるはず!
手を掛けて力の限りにそれを回してみるがビクともしない。大きな衝撃を受けたのか、少し歪んでいる。この性なのか…。

(扉ごと吹っ飛ばすしかないかな…でもどうやって…)

そう思った時だった。ガタっと小さく音がした。見れば、丸い取手が数ミリ動いては戻り、動いては戻りを繰り返している。

(開けようとしている?)

再び手をかけ、動きに合わせて私も力を加える。ガタンと音が上がり取手が回った。これでハッチが開くはず。でも数センチ浮くだけで完全に開ける事はできない。

(中から魔法で衝撃を加えればいけそうなのに―)
「ファーストネーム!離れて!」
(えっ―)

中から微かに聞こえた声。聞き覚えのある声に一瞬フリーズしてしまった。でも次の瞬間、内部から熱を感じとってその場から跳んだ。
バーンと爆発音と共に煙が上がる。ファイアか…もしくはフレアの魔法か。

(もしかして、本当に―)

確認しようと駆けた時だった。急に戦車が後退し始め、崩れていた広場の崖から海へと転落。

「だめ!!」

駆け寄った時には遅く、海から大きな波が立ち上った。

「自分から…落ちた?」

ゼルの言葉にみんな固まっていると、戦車が落ちた場所に手がかけられた。それが一つ、二つと増え――

「―っと」
「お、お前ら!」
「えへへ、ただいま!」

這い上がってきたのは、顔や服に黒い煤をつけたセルフィ、キスティス、アーヴァインの三人だった。

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