ダンスーティー


「…よ、良かったー!まだ料理残ってる!」

パーティーといえば立食会!お風呂入って着替えて来たから残ってないかと思った。一安心。白の綺麗なシートがかけられた長テーブルには食堂のおばちゃんが腕を奮って作った料理の数々!

(美味しいそーー!!実地試験後のコレがいつも楽しみなんだよねッ!)
「ファーストネーム〜!」
「ん?あ!エリックー!イリスッ!」

タキシードとドレス姿の2人が手を振ってる。私も手を振って2人の下に駆け寄った。

「体、大丈夫なのか?」
「うん!」
「候補生に抱きかかえられて帰還したらしいじゃない」

あ、そうか。スコールに抱きとめられて…そこで意識途切れたから…。

「だから言ったろ?無茶すんなって」
「あまり力使わない方がいいわよ?まだ体に負担かかるんでしょ?」
「うん…昔程じゃないけどね。今回は任務続きってのもあったと思うし、―ァイタッ!」

いきなり頭をコツンと叩かれた。

「何すんのよウニ!」
「ほんと、心配かけんじゃねえよ」

いつもと違って、本当に心配そうな顔をしてたから、それ以上文句も言えなくて。

「…ごめん。心配してくれて…ありがと」
「ん」

素直に謝ると、ポンポンと頭に優しく触れてくれた。
こうして、私はいつも2人に守られてる。いつかは、私が2人を守れる存在になりたいな!

その後、2人は他のメンバーに挨拶する為その場を離れ、私はお腹を満たす為に沢山の料理が並べられたテーブルに向かった。

(そういえば、試験誰が合格したんだろう…合格者はSeeD服着てるはずだけど…)
「あ!ファーストネーム先ぱ〜い!」

料理を頬張っていると、SeeD服を着たセルフィが手を振りながらこちらに駆け寄って来た。

「ぉお!セルフィ!」
「先輩大丈夫なんですか?」
「え?あ、うん!大丈夫!それより、合格したんだね!おめでとー!似合ってるよ制服」
「ありがと〜ございま〜す!先輩もそのドレス似合ってますよ〜」
「ありがとっ!」

スカイブルーのワンピースドレス。裾がフリルになってて中から黒のレースがのぞいている。
普段お洒落できない分、こういう場所では張り切っちゃう!

「そうだ!他に誰が合格したの?」
「えっと、スコールとゼルと、あと〜……もう一人合格しました〜!」
(もう一人って…誰だろう…?)
「あ、ゼルあそこにいますよ〜!ゼェル〜〜!」

セルフィの視線の先に、テーブルに向かってパンを貪り食ってるゼルの姿があった。
テーブルの上にはパンの乗ったお皿が沢山…ってか、パンのみ。

(私もパン好きだけど…そこまで…。余程パンが好きなんだな〜…)

心の中で笑いながら、ゼルの下へ歩み寄った。

「ゼル、SeeD就任おめでとっ!」
「んご、あいあごーごあいあう!!」
「…パン飲み込んでから話そうね?」

置いてたミネラルウォーターをゼルに差し出し、それを一気に流し込んだ。その姿を見て私とセルフィは笑った。

「っあー!やっぱりパンはウメェ!ファーストネーム先輩もどうっすか?」
「おお!じゃあ、1つ貰おうかな?」

ゼルのお皿から1つパンを取って口へ運ぶ。軟らかくてとっても美味しい!

「あ、そうだ!」
「どうしたんですか?」
「同じSeeDになったんだから先輩はもうナシね!敬語もナシ!私達同じ歳なんだから」
「え、そうなんですか?」
「…年上だと思った。任務の時とかすっげぇ落ち着いて指示だしてたし」
「これでも色々経験してるからね。でも普段の私知ってる人から見たら年齢より下に見られるよ?」
「そんなもんか…じゃあ〜まっ、これから同じSeeDとしてよろしくな!ファーストネーム!」
「よろしく〜!よろしくついでに、ファーストネームとゼル学園祭実行委員にならない?」
「えぁ?!」
「学園祭実行委員?」

セルフィの目がキラキラしだした。

「あたし、学園祭実行委員になったんだけど、ほかのメンバー各地の紛争に借り出されて誰もいないんだー」
「そうなんだ〜。でも私も長期任務とか結構あるからな〜」
「そっか〜…」

シュンとするセルフィ。

「…任務就いてない時に手伝い程度でいいなら、やってもいいよ?」
「ほんと?!うんうん!大歓迎だよ〜!」

さっきまで翳ってた顔が一気にパッと明るくなる。セルフィって表情がコロコロ変わって面白い。

「じゃあ、ゼルも学園祭実行委員に―」
「あっ、オレ用事、思い出した用事!ま、またな!」
(あ、逃げた)
「ぷ〜〜〜〜!逃げなくて…あ、スコールー!」

セルフィは次のターゲットを見つけ、ダッシュでその人の下に走った。
柱にもたれて一人佇むスコールの姿。

(SeeD制服もきまってるな〜!あれで愛想が良かったら、女子が群れそうなのに)
「ドレス似合ってますね、ファーストネーム」
「学園長!」

ワイン片手にいつもの赤いベスト姿。

「どうですか?体の方は」
「あ、大丈夫です。すみませんでした、任務中に…」
「気にしなくていいです…どうですか?その力について、何かわかりましたか?」
「…全く。私達の使ってる魔法やG.F.とは少し違うなって感じはするんですが、それ以上は…」
「そうですか」

変わらず笑顔の学園長。

「では、私は部屋に戻りますね。パーティー楽しんで下さい。でも、羽目を外さないように」
「はい。おやすみなさい、学園長」

ゆっくりとした足取りで会場を後にする学園長を見送った。

「何みてんだ?」
「エリック!…あれ?イリスは?」
「あっこ」

エリックが指さした先に目をやれば、会場の奥のテーブルで生徒とカードゲームをしてるみたいだ。

「あ、カードゲームやってる!…私も交ざってこようかな」
「パーティーの時にまでやることか?」
「でも面白いよ?」
「ま、それはわかるけどよ」

そんな話をしてると、音楽がホール中に広がった。ワルツだ。お洒落した人たちが中央に集まって踊り始めた。

「カードゲームより、俺と一曲どうだ?」

手を差し出し、お辞儀をするエリック。

「よ〜し、いっちょ踊ってやるか!」
「色気ねぇやつ」
「今更だよ!」
「プッ、確かにな」

差し出された手に自分の手を添え、ダンスの輪へ向かった。
二人向かい合わせになり、音楽に合わせてステップを踏む。ワルツの授業などはないが、現SeeDは踊れる人が多い。出来ないより出来た方が任務時に役立つ時があるから、だ。

「上手くなったな、ファーストネーム」
「エリックもリード上達したじゃん」

笑いながら踊っていると、視界の奥で誰かが他のペアにぶつかったのが見えた。

(あれは、スコール?)

スコールがこんなワルツの輪にいるのも驚いたが、あの無愛想にワルツの相手がいる事にも驚いた。

(もしかして彼女か?)

そう思ってるとぎこちなく踊るスコールと目が合った。
私は笑って、ファイト!と口を動かしたが、プィっと視線を反らされた。

「どうした?」
「ん、ちょっとね〜」

言葉を濁して踊り続けると、夜空に大輪の花が咲いた。
ホール天井はガラス張りになっていて、金色に輝く星と花火の光が鮮明に見えてとても綺麗だ。

「うわ〜、綺麗」
「だな」

花火に見とれて足を止めていると、踊っている人にぶつかりかけてしまい、私とエリックはそのまま輪を抜けた。

「あぁ〜喉乾いた!」
「何か飲み物取って来てやろうか?」
「大丈夫、ある場所分かってるし、ちょっと熱気に当てられたからテラスで涼んで来る」
「大丈夫か?」
「うん!それより、呼んでるよ?」

私の指さした先で仲間がエリックの名前を呼んでる。候補生だった頃同じクラスだった奴らだ。

「行ってきなよ。任務でなかなか会えないんだし、こういう時にいっぱいお喋りしないと!」
「…そうだな」

ポンと頭に手を置かれ、よしよしと撫でられた。

「また後で声かけろよな」
「うん!」

じゃな、と言ってエリックは仲間のもとへと駆けて行った。
私はカウンターへ行き、水を貰って歩いていると、見知った人が私の向かうテラスへ入って行くのが見えた。

(スコール。一人…さっきの彼女は…?)

見回したけどスコールと踊ってた彼女は見あたらない。

(見かけない子だったけど…候補生の子なのかな?)

そんな事を思いながらスコールの後を追ってテラスへ向かった。コツコツとヒールを鳴らして歩いてると、それに気づいたスコールが振り向き、私だと確認すると深い溜め息を吐いて視線を元に戻した。

(何で溜め息吐くんだよ、失礼な奴だな)

多分関わりたくないという意思表示なんだろうけど、私は構わず彼に近づいて行った。

「隣、いいかな〜?」
「……あぁ」

相変わらず無愛想だな〜なんて思いながら、スコールと人一人分離れた所に立って手すりに腕を置いた。
ゆっくり息を吸い、空を見上げると一面に広がる星空。流れ星…流れないかな〜なんて考えながら、静かな時間が流れていくのを感じた。

「あ、今日はありがとうね。スコールが連れてってくれなかったら、船乗り遅れてた」
「別に…。助けてもらった借りを返しただけだ」
「そっか。じゃあお互い様って事だね」

笑顔をスコールに向けると、スコールは私をじっと見ていた。

(…そんな美形に見つめられると…照れるんですけど…)
「…アンタ…」
「ん?何?」
「…いや、何でもない」
「な〜に?何か凄く気になる!」
「……」

意味ありげな台詞を吐いて黙り込むスコール。

「…ガルバディアの兵器を倒した力…の事?」
「……」

無言で視線を少し逸らした。

「(当たり…か。ま、目の前で兵器が消えちゃったんだもんね。不思議に思うのも仕方ないか)…私にもよく分からないの」

空を見上げて、呟くように言った。

「あの力が何なのか…どうしてあんな力があるのか…」
「…そうか」
「うん。そうだ」

お互い顔を見合わせると、何故だか顔が緩む。なんでなんだろう…愛想ないし、ぶっきら棒な返事しかしてくれないけど…何故か心地良いと思ってしまうのは。

「んっ…と!今日は疲れた!早めに部屋に戻ろうかな」

背伸びをしてスコールの肩をポンと叩いた。

「スコールもお疲れ様」

ホールへ向かって歩く途中で足を止め、スコールの方に振り返ると、スコールもこっちを見ていた。

「あ、合格おめでとう!これから同じSeeDとして頑張ろうね!」

スコールがこっちを向いてるなんて思わなくて、一瞬ドキっとした。

(…何を思って…こっち見てたんだろう………何も考えてなかったに1票)

そんな事を考えながら、ホールを後にした。

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