もしかして…ボり?


「いってきまーす!」
「いってらっしゃいませ」

美鶴ちゃんに手を振り、宇賀谷家を後にする。
あの後、家の裏にある蔵の前で掃除をしていた美鶴ちゃんを捕まえて、何かやる事ない?と言うと少し考えた美鶴ちゃんは、私に買い物を頼んできた。

「実は、ババ様から苗字さんの衣類を買う様に言付かったのですが、私が行くよりご自身で選んでいただく方がいいと思いますし…どういった服を買ったらいいのか、私にはわからなくて…」

あ〜そりゃわからないよね。私も友達の誕生日に服プレゼントした事あるけど、すっごい悩んだ記憶あるもん。ま、私は別に何でもいいんだけどね!サイズが小さくなければスウェットでもジャージでもOK。あ、美鶴ちゃんみたく和服だったらちょっと困るけど…一人で着付けできないし…。

「わかった!じゃあ服買ってくるよ!」

よかったと言ってお金を手渡してくれた。お願いしますって言われたけど、私こそ服買うお金まで用意してもらってスミマセンって感じなんだけどね。
ってな感じでやる事ができ、私は早々と出かける準備済ませて今に至ると。
外に出るのはちょって躊躇ったけど、美鶴ちゃんに御守りのお札みたいなのも貰ったし、大丈夫だよね!
一応念の為と森沿いの道を避け、一直線に町へと向かう。



***



「ありがと〜ね!」

おばちゃんに会釈をして店を出た。買ったのは下着とパーカーとジーンズなどなど。
思ったよりも安く買えてよかったよかった!
買い物袋を下げ、町を歩いていると、学校のチャイムの音が聞こえてきた。
結構、音近いな。珠紀達の行ってる学校かな?…せっかくここまで来たんだし、ちょっと見に行ってみよう!
音のした方へ足を進めると、程なくして校舎らしき建物が見えてきた。

「紅陵学院。結構古い学校なんだな〜」

門扉の真ん中に立って校舎に目を向けた。
木造の学校なんて初めてみたよ。人の影が結構見えるから、今は休み時間なのかな?
珠紀達は見えないかな〜なんて思ってると、2階の窓から手を振る人影か見えた。
だが、生憎私はあまり目がよくない。勉強する時や映画を見る時は眼鏡をかけているが、それ以外は裸眼でも別に支障が無い。だけど距離があると相手の顔がぼやけて誰だかわからない。

「名前〜!」

でも聞こえてきた声で誰かがはっきり判った。私もおーい!と言って手を振り返した。

「どうしたのー?何か用事ー?」
「ううん〜!買い物ついでに寄っただけー!」
「そっかそっか!」

大声で話してる私達に気づいて何だ?と私に視線が一気に集まるのが分かった。
うわっ…恥ずかしい!

「じゃあまた後でねー!勉強ガンバー!!」

珠紀のおーと言う返事を聞きながら、逃げる様にその場を後にした。
本当はちょっと学校探検とかしたかったんだけどな。他の学校って入る機会なかなかないから見てみたいんだよね!木造だし!でも、あれだけ目立っちゃったら無理だよね。荷物もあるし。今度こっそり忍び込んでみよぉ!

「っと!」
「ぁっ!ごめんなさい!」

そんな企みを考えながら角を曲がろうとした時、人とぶっかってしまった。

「こっちこそごめんよ。考え事してたもんでね」

丸眼鏡に無精髭を生やし、少しくたびれたスーツを来たその人は笑って言いながら私をじろじろ見て来た。

「…な、何ですか?」
「君、村の子じゃないね」

えっ?そんなの分かるの?!ってか…なに?新手のナンパか?

「そんな警戒しなくても大丈夫だよ。僕は芦屋。単なる公務員だよ」
「はぁ…って、平日の昼前に公務員が何でこんな所に?」
「あぁ〜そこ聞いちゃうか」

なんだこの人。公務員って言う割にはぼけぇ〜っとした人だなぁ…。もしかして…サボり?

「…君、分かりやすいってよく言われるでしょ」
「え?…あ〜…たまに?」
「自覚意識はないんだね」
「はい」

はっきりしてるね〜って笑われた。
…そんなに態度にでる?分かりやすい?
怪訝な顔をして考えていると、芦屋さんがじっと私の顔を見ているのに気づいた。

「……なんですか?」
「今日は運気が悪そうだ。まっすぐ家に帰る事をオススメするよ」
「え?」
「おっと、仕事に戻らないとな。それじゃ、またね」

ポンっと肩を叩かれ、消えるようにその場を去っていった芦屋さん。
…なんだったんだ、あの人。最後に運気が悪いとか言われるし。今朝引いたおみくじは一応小吉だったんだぞ!…見栄張れるもんでもないけどさ…。
帰れと言われると…逆らいたくなるのが人の性ってもんよね。ほら、ダメだって言われるとやっちゃうのと一緒でさ。用事も終わって行く所もないのに、私はそのまま村をブラブラと歩く事にした。

しおり
<<[]>>

[ main ]
ALICE+