私も、りたいと思う


あれから町をブラブラして昼過ぎには宇賀谷家に戻った。
いい感じに散歩できた私を出迎えてくれたのは、優しく微笑む美鶴ちゃんの笑顔と美味しそうな昼食でした!芋の煮物や焼き魚に山菜ご飯に豚汁と日本の料理!と言う感じの品々が座卓に並べられていた。昼御飯…に限らず日々コンビニ弁当くらいしか食べない私にとって、この料理は感涙ものだよ。しかも美味いし!
あぁ〜至福だ…!

「美味しそうに食べられますね。作った甲斐があります」
「だって、本当に美味しいんだもん!美鶴ちゃんは将来いいお嫁さんになるね!」
「わ、わたしなんてまだまだで…」

って照れて言う美鶴ちゃん。
何その謙虚さ!可愛くては頭良くて家事全般こなしちゃう美鶴ちゃんに、あと何が必要だと言うの?!天は二物を与えずって言うけど、二物も三物も与えちゃってるし!贔屓だ!神様の贔屓だ!

「…どうかなさいました?」
「えっ?…、あ〜何でもない!」

じっと美鶴ちゃんを見ていたのに気がついて慌てて目を逸らせご飯を口に運んだ。



***



貴女がこの村に来たのは、偶然ではないようですね

私がここに来る事は…必然だって事?

鬼斬丸の封印された森に何か感じたのなら、貴女の中に眠る力は鬼斬丸に関係しているものかもしれない

確かに…鬼斬丸ってのが納められてる場所を見た時、私の中の何かが騒ぎ始めたのを感じた。私の中に…私の知らない何かがいる感じがして…何がなんだか分からなくて混乱した。

―これから先、その力の為に闘いが絶えなくなるとしたら…そなたはどうする…

そんなの…分からないよ。至極平凡に生きて来たんだよ?それが…死ぬかもしれない様な所にいきなり置かれて…どうするって聞かれても…正直分からないよ…。……でも……。

「心配すんな。俺達が護ってやるから」
「あ〜ぁ、お守りがまた1人増えたか。大変だなこりゃ」


同じ様な立場に居る珠紀や守護者の皆。彼らが、私を護ってくれるって言ってくれたから…もし、私の中にある力が、彼らの守ってる鬼斬丸と関係あるのなら…――

「……ん…ん〜…あれ?」

あ、そっか。昼食食べた後、満腹になって眠たくなったから部屋に戻って寝ちゃったんだっけ。窓の外に目を向ければ、空は朱く染まっている。
結構長い時間寝ていたみたいだ。
ぼぉーっと窓の外を見上げながら見た夢の事を考えた。
何だか…変な夢を見た気がする…。…誰かと…話してるみたいな…そんな感じ。
はぁ〜と溜め息を一つ落とし、そろそろ珠紀帰って来る時間かな?なんて思い、寝転んでいた布団から体を起こし、廊下に出ると、台所から夕食の支度をしているらしい音が聞こえてくる以外、静かな空気が漂っていた。
どうやらまだ帰ってないみたいだな。目も覚めてしまったし、散歩がてら珠紀達を迎えに行こうかな。…部屋でじっとしてるのも暇だし。
美鶴ちゃんに珠紀達迎えに行って来ると伝えて宇賀谷家を出た。石階段を軽快にトントンと下りて下に着いた時、見知った2人が遠くに見えた。

「珠紀と…鴉取さん?」

遠くに見えた彼らは何だか急いでる様で、畦道を走って私の居る場所と逆の方へ向かっている。
どこに行くんだろうと、2人が向かう先に目を向けた時、ズキンと頭に痛みが走った。

「…風邪でもひいたのかな…?」

そう思ってみたけど…何だが違う気がした。何だが…胸がモヤモヤする感じがした。
私の中の何かが警鐘を鳴らしている様な…。

「………」

―これから先、その力の為に闘いが絶えなくなるとしたら…そなたはどうする…

もし、私の中にある力が、彼らの守ってる鬼斬丸と関係あるのなら…――私も、知りたいと思う。こんなモヤモヤしたままで居たくない…。

「じっとしてたって…仕方ないもんね…!」

自分に言い聞かせる様にそう言葉にし、私は2人が向かった先へと駆け出した。

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