ん?強行


2日目の合宿も無事終了した。今日は早乙女さんが居るから、晩御飯だけ作って家へ戻った。

「あ〜…疲れた!ん〜〜…ちょっと体ダルイかも…」

張り切り過ぎたか?今日もいっぱい動いたしなー!
ゆっくり風呂に浸かって、はよ寝よ〜…。
だるい身体を持ち上げお風呂に向かった。
湯船に浸かってもちっとも身体が温まらない…寧ろ寒い…咳っぽいのも出るし……風邪でもひいたか?…まぁ寝れば治るっしょ!
お風呂から上がり、寝室に向かったうちはそのままベットに滑り込んだ。
真夏やのに、うちは寒くて布団に包まって寝た。

そして…―――











「ゴホッ…ゴホゴホッ!…あぁ…頭がグラグラずる……」



―風邪をひいてしもた。

…寒い。
夏、しかも沖縄の真夏なのに寒い。
頭がぼーっとして、体温計を取りに行く気にもならない。
…ってか、身体だる過ぎて動けん…。
こんな酷い風邪ひいたん、何年ぶり?
いつもなら、おかんに頼んで色々やってもらえんのに…一人やし……どないしょ〜。
こんなんやったら病院行けんし、…ってか保険証ねぇ〜…。



「とにかく…寝て熱おぢるの待とう…」



そう思って、枕に顔を埋めた。
瞼が重くなってきて、目が閉じかけたとき――。



ピピピピピピピピピ…ピピピピピピピピピ…



携帯の音が鳴り響いた。
この音は…皆からだ…でなきゃ…。
重たい身体をゆっくり動かし、携帯に手を伸ばした。




「…あぃ。もしもし?」
『あぃ?!ぃやー、どうしたば!でーじ鼻声やし!』
「その声は…甲斐君…?」
『そうさ〜。風邪引いたば?』
「うん。…そうみたい…それより、どないしたん?部活は?」
『あ〜、今日はは午前中で終わりでさ。今から皆で遊びに行くからぃやーも誘おうと思って電話したんやしが…無理だな』
「あ〜…うん。ゴメンな〜。今日はゆっくりするわ…また誘って〜…」
『あぁ。…じゅんに大丈夫か?』
「平気平気〜、寝てれば治るさ〜〜」



元気よく答えたつもりだったけど、力が全然出なかった。



『…じゃあ、しっかり休めよな?』
「うん。…にふぇーでーびる〜〜」



あぁ……何でこんな時に風邪引くかな〜。皆と遊びたかったなぁ…ちぇっ…。
…あぁ…マジで身体だるい…顔熱いのに身体寒い…とにかく寝よう…。















ピピピピピピピピ……



なかなか寝れなくて、やっと半分寝かかった頃、今日2回目の電話が鳴った。
…また甲斐君かな?どうしたんやろう…?



「…はい」
『ぃやーの家、鍵かかってるか?』



甲斐君だ。…何の話やろ…?



「鍵?……かかってると思うけど…」
『鍵掛かってない窓とかあらんば?』
「ん〜………テラスの窓は開いてるかもしれない…」



ゆっくり体を横に倒した。ただ横を向いただけやのに、何でこんなに疲れるんや?
…ってか、ほんまに何なんやろう…?



『わかった。…りーーーん!テラスだってさ!』



電話越しに甲斐君が凛君に叫んだ。遠くから凛君の声も聞こえた。
…うちのテラスに何か用でもあるんかな?



「…どうしたん?」
『ん?強行突破』
「……え?」



甲斐君が言ったと同時にドアの向こう側で窓が開いた音がしたと思えば、その瞬間うちの部屋のドアが開き、凛君が姿を現した。



「り、凛君!」
「名前!風邪引いたって聞いたから見舞いに来てやったんどー!」
「え、えぇ?!」
『りーーん!へーく玄関開けろーー!』
「わーったわーったー!」



甲斐君の声が携帯からも外からも聞こえてきた。凛君は玄関の鍵を開けに1階へ降りていった。
…もしかして…もしかせんでも、テラスから入った??ここ2階なんですけど…どうやって登ってきたんや…。
不思議に思っていると、廊下から足音が聞こえて、凛君と甲斐君が、その後に続いて木手君、知念君が部屋に入って来た。



「みんな…」
「風邪引いたんですって?大丈夫ですか?」
「飲み物とゼリー買ってきたさ」



知念君が持っていたビニール袋から中身を出して棚に並べながら言ってくれた。



「田仁志もくー予定だったんやしが、用事が出来て来れなくなったやー」
「あにひゃー居たら、名前のもんも食べちまうからちょうどいいやし」



凛君が笑って言った。
いくら田仁志君でも人の物まで……うん、食べそうかな…。



「へへっ…ありがど。でも、良がっだん?…遊びに行くんや――」
「遊びにならいつでもいけるさー!」
「合宿手伝って頂きましたしね」
「…でも、風邪…うつったら……」
「わったー体鍛えてるから大丈夫さ。…ぃやーは気にさんけ。ゆっくり寝てればいいさ」



知念君が優しく言って、頭を撫でてくれた。
大きな…ひんやりと冷たい手が気持ちよかった。
うちら…会ってからお世話のし合いやな。ほんまに…ありがとうな――。
ゆっくりと微笑んで小さくありがとうって呟き、頭を撫でる手が心地よくて、そのまま…夢路についた――。


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