エイサー祭?


沖縄に飛ばされて2週間。こっちの生活にも大分慣れた今日この頃。

「エイサー祭?」

夏休みの宿題をしようとみんなで集まって勉強してたら時、裕次郎君が話をもちかけた。

「エイサー祭って何なん?」
「エイサー祭は、旧盆に行われる祭で先祖の魂を供養する行事です。本土で言う、盆踊りみたいなものですよ」
「それが今日から3日間行われるんさ」
「年に1度だけのイベントさ〜。なっ、行こうぜ!」

へぇ〜!沖縄にそんな祭があったんや!大阪もでっかい祭いっぱいあるけど、エイサー祭ってどんなんなんやろう?

「行く、行きたい!祭行くのも久しぶりやわ〜。いっつもバイトで行かれへんからな〜」
「では、いったん解散して学校で待ち合わせしましょうか」

宿題を片付けながら木手君が言った。祭の会場は学校の近くらしい。皆も今やってる分の宿題を終わらせ、片づけに入ってる。

「祭、楽しみやわ〜!…確かクローゼットに浴衣あったな〜」
「おぉ!名前、浴衣着るんば?」
「ん〜…着たいんやけど、うち浴衣の着方知らんねん…」
「なら、わんのねーねー着付け上手いぜ?今日家に居るし、頼んでやるさ」
「ほんま!じゃあ頼むわ!」

じゃあ皆で浴衣着用で行こう!って事になり、一旦解散!
うちもクローゼットから浴衣と下駄を出して、凛君の家に向かった。



***



「ねーねー!いるんだろー。ちょっと頼みあるばーよ」
「お邪魔しま〜す」

家に着いて、玄関から大声で叫ぶ凛君。その声を聞いて凛君のお姉さんが2階から降りてきた。
歳は…うちと同じくらいかな?

「ぬーがいきなり!…凛、その子たーか?」
「名前って言うやさ。エイサー行くから浴衣着せてやって」
「…あんまーー!凛がいなぐ連れて来たやさ!」
「ばっ!いなぐじゃねー!!」

繰り広げられる沖縄弁での会話。全くついていけず、呆然とするうち。
奥から凛君のお母さんも出てきて凛君に話してうちにも話しかけてくれたけど、その言葉が理解できず…取りあえず、うちはお姉さんに連れられて2階へ上がった。

「ぃやー、名前何て言うさー」
「苗字名前って言います」
「…本土の人?」
「あ、分かります?」
「分かるさ〜、訛りが違うやし」

着付けをしながらお姉さんと色々話した。うちに分かる様に標準語を使って話してくれてる。でも、うちもうちなーぐち勉強せな!って思って、色んな言葉をお姉さんに教えてもろた。

「この浴衣可愛いやし!名前ちゃんにピッタリさー」
「そ、そうですか?」
「うん!…凛がこんなかなさんいなぐ掴まえてくるとはね〜」
「…かなさんいなぐって何ですか?」
「可愛らしい彼女って意味さ」

凛姉の言葉に驚いて、顔が赤くなっていく。

「えっ?!か、彼女なんかやナイですよ!」
「また〜2人して否定したら怪しいやさ〜。それに、凛が家に女の子連れて来たの初めてやし」

…へぇ。凛君、女の子連れて来たん初めてなんや。…なんか意外…。

「ほいっ!出来上がり!名前ちゃん、ちゅらがーきー!凛も惚れ直す事間違いなし!」
「だ、だからぁ、そんなんやないですってば!」

ニヤニヤしながらうちの背中をうちの背中を押して下に向かった。
…なんか、凛姉があんな事言うから凛君に会うのちょっと緊張するやんか……どんな反応するやろう。
そんな事を考えながら応接間のドアを開けた。

「お待たせ〜」
「おぅ!こっちも着付け終わっ……」

凛君はお母さんに着付けてもらったみたい。
…凛君、浴衣似合うなぁ。…なんか凛君、うちの方見たままポカンとしてる。

「…ど、どないしたん?ポカーんとして」
「あっ…いやっ、なんでもないや〜」
「何もあらん訳ないやし。どうした〜凛?名前ちゃんの浴衣姿に見惚れたば?」
「ちっ、ちがっっ!!」

お姉さんの言葉に、動揺する凛君。頬まで染めちゃって。女の子慣れしてるって思ってたけど…初心なんだね。
うちがクスクス笑ってると、顔を真っ赤にして怒る凛君。その場にいるのが居た堪れなくなったのか、うちの手を引いて足早に家を出ようとする。
うちは、去り際に凛姉にお礼を言うと、また遊びにおいで〜っと言ってくれた。

「凛君のお姉さん、楽しい人やな〜」
「あい?かしましいの間違いさー」

かしましい…って、五月蝿いって意味やっけ?
凛姉と話してて色々教えてもろたからだいぶ分かる様になったかも!

「あはは!そんな事ないって。着付けてくれた時、色々教えてくれたし」
「…ねーねー、余計なことあびってなかったば?」
「余計な事?…知られてまずい事でもあるんかな?」

ニヤっとして凛君を覗き込むと、プイっと顔を背けられた。

「…あ〜…」
「ん?どうしたん?」
「……その浴衣、…でーじ似合ってるさ…」
「…ありがと」

改まって言われると…凄く恥ずかしい。凛君も恥ずかしかったのか、2人して真っ赤になった。
家から繋いだままになってる手が少し汗ばむ。
道は静かで、カランカランという下駄の音と心臓の鼓動だけが響き渡ってる。
…なんか、初デートの恋人同士みたい……なんて思いながら、うちらは待ち合わせ場所へ向かった。


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