葉がほとんど分からん…


1通の手紙がうち宛に届いた。
8月1日〜8月31日までの沖縄旅行をプレゼント致します。
今夜0時にお迎えに参ります。
全部冗談…只の嫌がらせやと思っとった…。
でも…光に包まれて目を覚ますと、そこは、静かに波打つ海と満天の星空…そして――

5人の男の子達――










「ここって……」



うちは海を眺めた。
まさか…本当に沖縄に来てしもたん?



「ぃやー、大丈夫か?」



声を掛けられ、ゆっくりと振り返った。



「あっ、あのさ…ここって、もしかして…沖縄…なんかな?」
「あい?そうだけど…何でそんな事聞くさー?」



赤い帽子を被った子が答えてくれた。
…夢でも見てるんじゃないかと、自分の頬をつねってみたけど…痛かった。
…じゃあ、ほんまに沖縄にきてしもたんや…!現実にこんな事って起こるんや!



「なー。ぃやーどこから来たんば?」



金髪の子がうちの顔を覗き込んで聞いてきた。



「えっ。…大阪…やねんけど」
「やっぱやまとんちゃーか。うちなんちゅーにしては、白いと思ったさー」



体格のいい子が言った。
…やまとんちゅー?何?



「やまとんちゅーとは本土の人間。うちなんちゅーは沖縄の人間、と言う意味ですよ」



ぽけ〜っとしてるうちに解説してくれたのは、紫の髪に眼鏡の子。



「で、ぃやーは何でこんな所で倒れてたんさ。さっきの光もきになるし」



前髪を白く染めた子が聞いてくる。
何で…って言われても、何をどう説明したらええんやろう…飛ばされて来た…なんて言っても信じてくへん…やろうしな〜。
うちが口ごもっていると、眼鏡の子が口を開いた。



「ま、観光か何かでしょう。とにかくこんな夜中に浜辺に居ると危ないです。送りますから、場所教えてください」



送ってくれると言う君の行為は有難いんだが…うちはどこに行けばええねん…。
その時、頭にまたあの声が響いた――

『―丘の洋館』

丘の…洋館?



「…あの〜、丘の洋館って…分かる?」



うちの言葉に5人は目を丸くして言った。



「丘の洋館?!」
「…あの洋館から来たんですか?」
「あそこ幽霊屋敷って有名やっし」
「人が住んでたのか…?」
「ゆくしだろ!」



幽霊屋敷?!うちをそんな所で住ます気か!なに考えてるんだよ!!
…でも、他にいく当てもないし…取りあえず行くしかないよな…。



「とにかく、そこ行きたいから案内してくれるかな?」
「…分かりました」
「ありがと」



服に付いた砂を手で払い、洋館があるであろう先に体を向けた彼等の後を追おうと歩き出した。



「…っとその前に!」
「ん?」



急に金髪の子に肩を持たれ振り返ると、指で足元を指していた。



「ぃやー裸足さ〜」
「えっ?」



あ…そう言えばさっきまで部屋におったから靴履いてないんやった…。



「あ〜、別に平気やで?裸足で」
「でも、ガラスとか刺さったら大変やっし。わん、ねーねーのふや持ってちゅーんさ」



そう言って金髪の子は走ってどこかへ行ってしまった。
…沖縄って日本やのに言葉がほとんど分からん…。



「彼は、お姉さんの靴を取りに行ったんですよ」



…解説ありがと〜眼鏡君。



少し待っていると金髪君が帰って来て靴を貸してくれた。
うちは礼を言って、例の洋館に案内してもらった。





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