俺達にダンスを教えて下さい


「ふっ…あぁ〜〜〜っ…朝か〜〜」

今日はいつもよりぐっすり眠れた。昨日は歩き回ったから、帰ってお風呂に入ったら即寝てしもた。時間は…8時半か〜。うちは背伸びをしてキッチンへ向かい、朝食を軽くすませた。

「さてと、今日は何の予定もないし〜…何しよう…。何かこう、体を思いっきり動かしたいな〜……そや!」

うちは2階の客室へ向かった。
この部屋は片面が鏡張りになってる。ベット横の棚にはコンポが置かれていて、うちは口元をニヤリとさせた。

「これは、うちに踊って下さいって言ってるようなもんやんな〜〜」

うちは昔から踊るのが好きや。
お母さんの話によると、うちは小さい頃デパートに行っては曲が流れてくると、スピーカーの下に立って、鏡前で踊ってたらしい。
流石に今は無いけど、曲を聞くと踊りたくなるのは今も変わらない。
ばたばたと自室へ行き、服を着替えてCDを取り出した。



***



「よ〜し、柔軟もしたし。準備OKやな!」

かけていた曲を止め、CDを入れ替えた。

「この曲、久しぶりに踊るわ〜!覚えてるかな?」

高校の文化祭。うちは有志で友達とダンスをした。
結構盛り上がって、うちの思い出の1曲になったやつ。
うちは鏡の前に立って、曲の流れるのを待つ。音が響くと、自然と体が動き出す。
時が経っても、体は覚えてるもんなんやな。まぁ、あんなけ練習したんやもん、当たり前か?
うちは文化祭の時の風景を思い出しながら、音楽に身を任せた。



***



「出ないや〜。まだ寝てるんやあらんば?」
「だから、奇襲訪問はどうかと言ったんですよ」
「携帯にもでないさー」

インターフォンを何度押しても、名前は出てこない。携帯にかけても出ない。
あにひゃー、携帯持ってる意味ないやし…。
わんと木手、凛は名前の家に遊びに来た。
別に約束してた訳じゃないけど暇だったし、名前もそうじゃないかと思って2人を誘って来たんだけど…。

「やっぱり、出ませんね」
「…倒れてたりしない…よな?」
「…あははは、まさか〜〜…」
「「「…………」」」

わったーは門を開け、玄関に走った。でも、鍵が掛かってて入れない。
わったーはテラスに向かった。あそこなら、開いてるかもしれない!
側にある木からテラスにひょいっと飛び移り窓に手をかけると、やっぱり開いていた。
窓から廊下に出ると…音楽が聞こえてきた。

「どこからでしょうね…」
「ここじゃないんど〜。名前もいね〜」

名前の部屋を覗いた凛が言った。わったーは音楽の流れてくる部屋へ向かった。
2階、一番奥の客室。…ここから音がする。
わったーはそっと扉を開けて、中を覗き見た――。

扉を開けた先に名前はいた。音楽に乗せて踊り舞う名前が―。
わったーは言葉が出なかった。
こんなにきれいに…でもキレがよくて、かっこよくて…学校で踊ってる奴はたまに見るけど、ケタが違う。見惚れてしまう程だ……。

「すげぇさぁ〜」
「どんくさい奴だと思ってたけど、こう見ると別人やんに〜」
「…そうですね。…うん、いいかもしれません」
「ん?永四郎、何か言ったば?」

顎に手をあて、何か考えてる木手。
ふと顔を上げたと思ったら、木手は扉を開け、中に入っていった。

「…ん?あれっ、皆どないしたん?…ってか、どっから入ったん…」

拍手をしながら近付いて来るわったーに、呆れ顔で話し掛けてくる名前。

「玄関が閉まっていたので、テラスから入らせてもらいました」
「また?…うちんちちゃうかったら不法侵入やで?」
「携帯かけたのに出ない名前が悪いやっしー」
「あっ、…ごめん。携帯、部屋に置いたまんまやったわ」
「携帯の意味あらんに」
「ほんまやな〜」

ケラケラと笑う名前。さっきと違って、いつものちらに戻ってる。
踊ってた時は、きりっとしてて大人っぽくて……って何考えてるば?!わん…。

「それで、永四郎。さっき何ブツブツ言ってたんば?」
「あっ、そうでしたね」

凛が思い出して木手に聞いた。そう言えば、いいかも〜とか何とか言ってたな…。

「ん?何の話?」
「苗字さん。単刀直入に言います」
「う、…うん」
「俺達にダンスを教えて下さい」
「「「えっ?」」」

わったー3人の声が揃った。
いきなりぬーあびるば、木手?!



***



うちが踊ってると突如現れた木手君・裕次郎に凛君。そしていきなりダンスを教える欲しいと頼まれた。

「何でいきなり?」
「実は2学期に文化祭がありましてね。我が比嘉中は少し変わっていて、クラブ単位で出し物をするんですよ」
「へぇ〜、確かに珍しいなぁ」
「その出し物は人気投票があって、1位のクラブには向こう半年の部費が倍になるんですよ」
「ほうほう。なるほど〜」

腰に手をあて、木手君の説明にうんうんと頷く。

「我々テニス部は、今年舞台発表になっているのですが、何をしたらいいか思いつかなくてね」
「…で、うちにダンスを教えて欲しいと」
「そう言う事です」
「わったー2年連続で1位やっしー」
「ここまで来たら、今年も1位取りたいやっさ!」

確かに、ビジュアル抜群な皆が舞台で踊ったりしたら盛り上がる事間違いなし!
人気投票も軽く1位取ってしまうかも…。

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