色々教えてあげよっか?


「終わったぁ!」
「名前、完敗だな〜」
「マイナス5858億5800万…ゲームでよかったですね」
「五月蝿い!それもこれも凛君のせいや!」
「ぃやーの運が悪かっただけやし〜」

ニヤニヤして言う凛君。…これがまたムカツク…。

「じゃあ、罰ゲームですね」

木手君が差し出してきたのは、緑色をしたドリンク。
……コレは…まさか…。いつの間に用意しててん!…やはり、侮りがたし、木手永四郎。
うちと裕次郎君は目を合わせゴクリと咽を鳴らした。

「ちぇっ、分かりました〜!苗字名前!一気に逝かせて頂きます!」
「おおおおぉぉぉ!」

皆の一気コールに合わせて、ゴーヤージュースを咽に流し込む。
横の裕次郎君も目を瞑り、一気に流し込む。

「……っぷわぁぁぁああっ!」
「…っぅわぁ〜〜マズ!!」
「名前も裕次郎も、いい飲みっぷりやし!」
「…………」
「…あぃ?…名前、どうしたさ?」
「……ううん〜…何でもないよ〜〜」
「…ど、どうした?何か喋り方かわったさ…」
「…うふふふ〜。裕次郎君…かぁ〜わいぃぃ〜〜!」
「ってぅおっ!」

突然名前は甲斐に抱きついた。いきなりの行動に動揺を隠せない甲斐。

「お、おぃ!木手!くぬひゃーに何飲ませた?!」
「ただのゴーヤージュースですよ…」

木手は名前の飲み干したグラスに目を向け、匂いを嗅いでみた。

「…酒の匂いがします」
「酒?!」
「は〜い!わん、ゴーヤージュースに焼酎入れてみました〜〜」

ひょうきんな顔で手を上げたのは平古場だった。

「だってよ〜、やったーも見てみたいだろ?名前がどうなるか」
「平古場君…キミは…」

溜め息を付く木手。知念と田仁志も同様の表情。
ただ1人、慌てている甲斐は名前を引き剥がそうと必死になっている。

「裕次郎君の髪モフモフしてて気持ちぃぃ〜〜」
「こらっ!頭ぐしゃぐしゃにさんけぇ!」
「え〜気持ちいいのにぃ〜〜」
「その辺にしときなさいよ苗字さん。甲斐君の髪が余計ボサボサになります」
「じゃあ木手君の髪触らせて〜や〜」
「嫌です」

さっきからこんな状況が続いている。名前はずっと甲斐にくっついて髪を触り続けている。甲斐はどう相手していいのか分からず、木手は面倒だと言う顔。知念、田仁志は他人事の様に見てる。
この事件の首謀者である平古場は、最初は面白がっていたが、今はムスっとしてただただ名前の行動を見守っている始末。

「ちぇ〜っ、2人とも連れないな〜…ええもん!寛君に遊んで貰うから!」
「えっ?!」

まさか自分に来ると思わず驚きの声を上げた。その瞬間座っている後ろから勢いよく抱きつかれ、前に倒れそうになるのをなんとか耐えた。

「寛君、あ〜そぼっ!」
「遊ぶ…って何するさ」
「なんでもえぇよ〜…何やったら…オネェサンが色々教えてあげよっか?」
「?!」

そう言って、座っていた知念を床に押し倒し、名前が知念の上に馬乗り状態になる。
腐っても20歳。ここにいる5人より色んな経験をしている。
そのせいか、いつも以上に大人の女の雰囲気を漂わす名前に、知念は顔を真っ赤にして固まっていた。

「こらこらこらこら!!何してるば?!」
「知念、離れろ!」
「田仁志くん、苗字さんを捕まえておきなさい!!」
「わーったさ!」

急いで田仁志が名前を知念から引き剥がす。それでも知念は固まったままだ。
甲斐や平古場が目の前で手を振っても何の反応も無い。刺激が強過ぎたらしい。
一方の名前は、田仁志にしっかり捕まえられている。殴りかかる人を捕まえてる状態。

「何すんねんタニー!離して〜や〜!!」
「タニー?」
「そう!田仁志やからタニーや!」
「…何か…ポニーみたいやっさー…」
「ポニー?あははははっ!それええなぁ!よしっ、タニーよつんばになり!お馬さんごっこや!」
「あぃっ?!」

名前の言葉に驚き、少し手が緩んだその隙を見て田仁志の後ろに回り込みポンと背中に飛び乗った。お馬さん…ではなく、ただおんぶして貰っているだけだ。

「名前!田仁志にくっつかんけ!」
「そうやさ!離れろ!デブがうつる!」
「やんでぃ平古場!」
「タニ〜の背中気持ち〜〜〜ぃ」

そう言って更にくっつく名前を甲斐と平古場が2人掛りで引き剥がそうとする。

「…はぁ〜……頭が痛くなりますね…」

それからも、やたらとスキンシップを取りたがる名前に振り回される5人。
1時間経った頃、疲れたのかやっと名前は眠りに付いた。

「……へへ……たのし…」

まだ夢の中ではしゃいでいるのか、寝言をいいながら笑う名前。

「…やっと静かになったやー」
「平古場くん。もう二度とこんな事はしないで下さい」
「わかったやー…わんも嫌やし…」
「疲れたさー」
「…でも、こう静かに寝てると、さっきまでの出来事が嘘みたいさ…」

知念の言葉に、皆名前を見て微笑んだ。
頼りになる時もあれば、子どもみたいに泣いたり、綺麗な顔で笑ったり…大人ぶったり。色々な表情を見せる名前に振り回される事も多い
…でも…それが、愛おしく思う――そう5人は思っていた。



***



「……んっ……あ、さ…?」

目を覚ますと、うちはリビングで寝てた。周りには、皆がタオルもかけんとごろ寝になって寝てる。
…うち、いつの間に寝たんやろ……?
体にかけられていたタオルを近くにおった凛君にかけてあげ、他の子にもかけてあげんとと思い、2階からタオルを持って下り、皆にかけてあげた。

「…ん……名前?」
「あ、起こしても〜た?」

裕次郎君にタオルをかけたら起きてしもた。

「ふ…ぁぁあっ…まだ眠いさー」
「まだ寝ててええで?うちその間に朝ご飯用意しとくし」
「……昨日とは大違いやさ」
「昨日?…そう言えば、うちいつの間に寝たん?」
「ぃやー、覚えてあらんば?」
「うん。…ゴーヤージュース飲んだ辺りからさっぱりやねん」
「………そっか」
「……うち、何かしたん?」
「いやっ!何も?…とにかく、名前はもう酒飲むな…」

…一体何したんやろ…。…気になる様な…聞きたく無い様な…。
裕次郎君が再び寝てしもたから、とりあえず朝食の用意をする事に。

皆が目覚めて朝食を取ってると、木手君には朝一で溜め息付かれてまうし、寛君は目逸らすし、田仁志君は馬やあらん!って言うし、凛君には謝られるし。
それから皆口を合わせて、酒禁止!って言うし……マジでうち何したんやぁぁぁああ?!

しおり
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