べべはゴーヤージュースな


「皆バッチリやぁ!これで、文化祭で1位確定やな!」
「じゅんにか?」
「じゅんにじゅんに!めっさカッコエエで!」
「へへっ、名前に言って貰うと嬉しいさー」

今日は朝からうちでダンスレッスン総仕上げ!
さっき通してやってみたけど、皆ちゃんと揃てるし、アピールの仕方上手いし言う事なし!

「後は文化祭を待つだけなや!」
「いえっ、まだ決めねばならない事があります」
「えっ、まだ何かあるん?」
「衣装さー」
「あー、衣装な〜」

皆服の系統が違うから、舞台に立った時に1体感がなくなるんちゃうかって心配みたい。
そうやな〜…確かに、バラバラやもんな…揃えんでもええから、せめて系統は揃えたいなぁ……よし!

「じゃあこれから衣装買いに行こう!」
「えっ?!これから?」
「別にいけるやろ?まだ昼前やし」
「いやっ、時間的にはいけるけど…」
「わったー、そんな金ないんどー」

頭を掻きながら言う皆。
そら、中学生やから小遣いでいきなり服揃えるんは痛い話やな。

「大丈夫!衣装はうちが買ったるから!」
「名前が?」
「おぅ!」
「でも、そんなの悪いやさ」
「大丈夫!金たんまり残ってるから」

元々うちの金ちゃうけどな…でも、ここにおる間の生活費なんやから、使ってもいけるいける!

そんな訳で、皆で街までお買い物に行く事になった。うちの庭に止めていた自転車に皆またがる。うちは裕次郎君の後ろに乗せてもらう事になった。
目指すは、前に行った国際通り。確かいい感じの店結構あったし、いいのがみつかるはずや!



***



海岸沿いの通りを走っているチャリ族のうちら。ここを走ってると、思い出す。

「何か、懐かしいな〜」
「…ん?ぬーが」
「ここら辺ちゃうかった?うちが迷子なって座ってたん」
「あ〜、この辺だったや〜」
「あの時、名前帰れなくて泣いてたんだよな〜」
「へぇ〜、それは見てみたかったですね」
「そんなの思い出さなくていい!!」
「あがっ!言い出したのはぃやーやっし!!」

裕次郎君の頭をコツンと叩いた。
皆とこうして自転車に乗って買い物なんて初めてやな。
…この楽しい時間も…あと少しなんやな……。

「……ちゃーさびたが?名前?」

海を見ていたうちに、後ろを走ってた寛君が声を掛けてきた。

「あっ、何でもあらへんよ!」

そうや、落ち込んでもしゃーない。この前木手君も言ってくれたしな…。
永遠に会えない訳やないって……だから、今は一瞬一瞬を楽しまなな!

「よーし!国際通りまで競争や!べべはゴーヤージュースな」
「おっ、いいぜ〜!」
「…面白い。俺に勝てると思ってるんですか?」
「よかったな〜デブ。ダイエット出来るさー」
「やんでぃ、平古場!」
「…落ち着け」
「って、ちょっと待て!名前を乗せてるわんが一番不利やっし!」
「いけるいける!裕次郎君やったら1番になってくれるはずや!」
「うわ〜…プレッシャーさー」
「行くで〜…よーいスッ――って、ちょー!凛君、田仁志君フライングやで!」

うちが言い終わる前にもうダッシュで自転車を扱ぎ出す2人。

「早い者勝ちやっし!」
「お先さー!」
「くそー!ほらっ、裕次郎君もダッシュダッシュ!」
「わーったさ。しっかり掴まってろよーー!」
「うわぁっ!!」

体勢を低くして、スピードを上げた裕次郎君の運転に振り落とされそうになるのを何とか耐え、お腹にしっかりと掴まる。うちらと同時に木手君、寛君も扱ぐスピードを速めた。
海岸沿いを猛ダッシュで走り抜けえるうちらチャリ族。たまに横を通るタクシーのおっちゃんが、ちばれよーわかむん!って窓を開けて言ってくれたり。
うちもその言葉にちばるよー!って答えたら大笑いしてくれた。

「ちばれー裕次郎君!先頭集団はもうすぐやで!!」
「わかっとーさー!」

皆、こんな早いスピードでチャリこいでるのに殆ど息乱してない。日頃から部活で鍛えてるもんな〜…うちは即バテ決定やけどな…。



***



そんなこんなで着きました、国際通り。最下位は田仁志君。途中で燃料が切れたらしい。
そんな君には後でうちがゴーヤージュースをプレゼントしたるで!

流石に皆疲れたみたいなので、取り合えず食事タイム。近くにあったファーストフード店で昼食を取る事に。

「………なぁ、ほんまにそれ、全部食うん?」
「当たり前やっさー!部活帰りなら、これの倍いけるんど!」
「倍?!」
「慧君の胃袋はブラックホールさー」

セット2つにナゲット2つに単品バーガー1つ。…見てるだけでお腹いっぱいになりそう…まぁ、田仁志君の体型からなら納得…できなくはないが…。


昼食も食い終わって、いざ買い物に出陣。
あの量を本当に平らげた田仁志君には拍手だわ…マジで…。

店を出て少しした所に、いい感じの店発見!早速中に入ってみる事にした。カジュアルだけど、動きやすそうな服が揃ってる。取り敢えず、ここで色々試してみよう。

「凛君、このトップ似合いそう!」
「おっ、これいいやっし!色もわんの好みさー」
「やっぱ色って揃えた方がいいんば?」
「ん〜、色は個人に合ってるのでえぇと思うで!例えば〜」

そう言って、色んな服を物色し始めるうち。皆も、自分に合う服を探してる。
凛君と裕次郎君はセンスいいからわりとすんなり決まった。木手君と寛君もえぇけど、いつも着てる服と系統ちゃうから、ちょっと悩んでる様子。
田仁志君は…とにかくサイズがあらへん。これいいかも!!ってのがあっても横幅が全然合わんかったり。でも、店員さんに聞いたら、店のオリジナルやから特注で作ってくれるって!特注とか…何かかっこえぇ響きやん!

皆、各自服を決めて試着室に入った。その間、うちはブラブラと店内を回っとった。アクセの棚の前で、何か皆同じの付けたらかっこえぇなー思て物色しとったら、うちの目に止まるもんがあった。

「…ミサンガ?」

銀色に輝くシルバーアクセの横にポツンと置かれてる色とりどりのミサンガ。
懐かしいなぁ〜!中学の頃、授業中によく作っとったわ〜!
うちがミサンガを手に取ってみてると、店長さんがうちの傍まで来た。

「そのミサンガ、いいだろ」
「うん。色もきれいやし」
「ミサンガの裏、みちみ?」
「裏?」

持っていたミサンガを裏向けてみると、銀色の刺繍で『Someting...By all means』
と書かれとった。

「Someting...By all means?」
「そう。例え離れていても、いつか必ず巡り逢える。そのミサンガにはそう言う想いが込められているんだ」
「いつか…必ず……か…」

うちはミサンガの入った籠から6本のミサンガのを取りだした。

「店長!これ、先にお買い上げ!」
「はいよっ!」

しおり
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