皆が色んな事を教えてくれた


うちが会計終わったすぐ後に、試着室から出てきた皆。
やっぱカッコイイ子は何着ても似合うをやな〜!木手君はリーゼントを下ろせばなお良し!店1件目にして、目当ての物を揃える事が出来て、よかったよかった。
皆、服の入った袋を片手に店を後にした。いっぱい買おてくれたからって、特注分の追加料金ナシにしてくれた。話の分かる店長でよかった!

「名前、さっき何買ってたば?」
「へへへ〜、内緒。それより、なぁ、折角街に出て来たんやから、ぱぁっと遊ぼう!」
「おっ、いぃぜ〜!」
「じゃあ、どこいくば?」
「ボーリングは?」
「あるぜ〜!自転車とばせばすぐさー」
「じゃあ、早速行こう!」

自転車に跨り、5分位した所にでっかいボーリング場があった。
1階はゲーセンになってて、2階3階がボーリング。順番待ちしてる間、ゲーセンで遊びまくった。
太鼓の達人やってカーレースして、…あれ何て言うんやっけ?エアーホッケ?もした!
2対2の勝負!これやってると、何かのTV思いだすねんな。

そうこうしてるうちに、ボーリングの順番が回ってきた。

「人数が多いので、ルールなしの1ゲームマッチ!優勝者は最下位の人に何でも1つ言う事をきかせられる!」
「何か王様ゲームみたいやっさ」
「おっ!寛君、いっちょ前に王様ゲームしたことあるんか〜」
「べっ、別にそんな事!」

真っ赤になって否定してる。
初な寛君からかうのって、ちょっと楽しいなぁ〜…とか言ってるうちに、ゲーム開始!
流石にボーリングやったら、うちでも皆とはれるんちゃうかと思ったけど…巧すぎ。
皆ストライクとかスペアとか取りすぎ!…テニスでは絶対勝たれへんから、ボーリングでは!!っとか思ったのに…こんなん最下位決定やん……。

結局、べべはうち。優勝は木手君が手にしました。
ちぇっ、途中から分かってた事やけどさ…。
木手君の言う事何でも聞かなあかんのか〜すっげぇ無理難題押し付けられたらどうしよう…それとも、18番のゴーヤーか?!

「じゃあ、苗字さんは俺の言う事、何でも聞いてくれる訳ですね」
「っおぅ!言い出しっぺはうちやからな。さぁ、何でもどんとこい!」
「ではっ…」

木手君が口の横に手をあて、うちの耳元てぼそっと呟いた言葉。

「これからは、俺の事を名前で呼んで下さい」

そう言って屈めてた体を起こした。

「えっ…?そんなんでいいん?」
「ええ。今の俺には、それで十分です」
「永四郎〜、名前に何て言ったさー」
「さてね。そのうち分かると思いますよ」

永四郎君の答えに納得が行かない様子の4人。
裕次郎君と凛君が、何て言われたかって聞いてきたけど、うちも、そのうち分かるって答えたら頬をぷくぅって膨らませた。こんな時だけ子どもっぽくなるんやから。
2人を見て笑ったうちを見て、更に頬膨らます。2人をなだめて、うちらはボーリング場を後にした

街でいっぱい遊んだ帰り道。行きと同じ道をゆっくりと走る。
海に真っ赤になった夕日が沈む。その景色が綺麗やったから、少し見て行こうと言って、うちらは防波堤に並んで腰を下ろした。

「……きれいやな〜」
「…だな〜」
「いつも見てるけどよ、くんな真っ赤な夕日は初めてさ」
「…空も真っ赤に染まってるさ」
「……ほんまやね」

波の音がここまで届いてくる。
うちは目を瞑り、その音に耳を傾けていた。
覚えていよう……この燃えるような赤い夕日を。寄せては引いていく、この波のせせらぎを…。

暫くして、うちはゆっくり目を開けた。横に置いてた鞄に手を伸ばし、中から袋を取り出した。

「ぬーがや。それ」
「皆が試着してる時に買おたやつ」
「あ〜、そういえば何か買ってたな〜。それで、何買ったんば?」

私はニコッと笑って袋の中身を取り出した。

「…ミサンガですか?」
「うん」
「へぇ〜きれいやっさー」
「やろ?うちも一目見て気に入ってしもてん!…それにな」
「…それに?」

興味津々でうちの方を見る皆。ミサンガを裏向け、海にかざした。

「Someting...By all means。…例え離れていても、いつか必ず巡り逢える。このミサンガは…そう言う想いが込められてるんやって」
「…名前」
「…だから、はい。これっ、皆に」

うちは一人一人にミサンガを渡した。

「はいっ、裕次郎君は赤。暖かくて優しい、夕日みたいだから。トレードマークの帽子も赤いしな」

照れたのか、ミサンガを受取り、帽子のツバをクイッと下ろした。

「凛君はオレンジ。明るいムードメーカー。いつも私を笑わせてくれる」

ヘヘッと笑っう凛君。

「寛君は黄緑。目立たないけど、いつでも私を癒してくれた」

頭を掻いて照れる寛君。

「永四郎君は紫。中学生なのに大人なオーラを感じさせる」
「…どう言う意味ですか?」
「あははっ、大人びてるって事!」

溜息をついて、笑って受けとってくれた永四郎君。

「いつから名前、永四郎の事名前で呼んでるば?」
「…さっきのそのうち分かるって…この事か?」
「ん?どうしたん、2人とも?」
「「いやっ、別になんもあらん」」
「そぉ?じゃあ、最後は田仁志君。君は黄色。明るいってのも有るけど、一番の理由はカレーの色だから」
「あぃ?どう言う意味ば?」
「ぷはっ!あははは!!慧君にはピッタリさー」

裕次郎君は意味が分かったのか、大笑いをしてる。他の皆はポカンとしたままや。

「それで、名前は何色のミサンガにしたば?」

寛君の問いかけにうちは最後の1本を掌に置いた。

「うちは…白」
「…何で白にしたば?」
「…うち、ここに来るまで、毎日毎日同じ事して…ただそれだけで、自分のしたい事とか、なかってん」

ミサンガを眺めながら、前の自分を思い返していた。
毎日別に何をしたいでもなく、ただバイトばかりしてた日々の事を…。

「何もない…真っ白やったうちに、皆が色んな事を教えてくれた。……与えてくれた。」

ミサンガを胸に当て、目を閉じる。

「今、うちの中には皆との想いがいっぱいやねん…真っ白だったうちを皆が色んな色に染めてくれた。…だから白」
「白…か。…それなら、もう1つ理由があるさ」
「もう1つ?」

不思議がるうちに、裕次郎がうちの事を真っ直ぐ見て言った。

「…純粋って事さ」

そう微笑んで言ってくれた。

「そうだな〜。1つ1つの事で怒ったり泣いたり笑ったり」
「自分に嘘がつけない人ですね」
「そんなぃやーに、わったーは元気付けられたさ」
「ぃやーにちばれー言われたら、じゅんにちばろー思うやっさ」

純粋なんて…初めて言われた。
嬉しくて…恥ずかしくて……うちは体育座りをして頭を埋めた。

「照れてるば〜?」
「…うるさい」
「ハハッ、かわいい奴」
「……」

うちは埋めてた顔を少し上げ、目だけを覗かせた。見ると、皆…うちの方を向いて優しく笑ってた。
うちも、真っ赤になりながら笑った。

夕日が沈む―――
横目で、その海を見ながら、うちらは走った。
同じ想いを宿した、ミサンガをつけて…。

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