R18
スマホから着信音が響き、わたしはベッドの上で寝ころびながら画面に指を滑らせた。
≪夕飯食べれなさそう?おかゆとか持っていこうか?≫
開いたチャットトークアプリには、三奈からのそんな気遣いのメッセージが表示されていた。親指をスイスイと動かして文字を打ち込み「食欲ないから大丈夫だよ、ありがとう」という文章になると、そのまま送信ボタンを押してスマホをするりと手放すと、またわたしは布団に身を沈めた。
荒い息と火照った身体。クラスメイトには「具合が悪いから」と言って朝から部屋に引きこもっている。みんなは「大変だね」「ゆっくり休んで」と心配してくれているけれど、実は発熱や風邪等で具合が悪いわけじゃない。
「………んぅ、はっ…あ…ッ!」
何度目かの絶頂を迎え、肩で息をしながら濡れた指先をティッシュペーパーで拭った。
わたしの個性は【引力】あらゆるものの引力を操作するという個性だが、その個性の性質上なのか何なのか、満月の夜には”発情してしまう”という困ったデメリットがある。つまり、今わたしは【発情中】というわけだ。
こんなことが起きるとどうするかと言うと、自分で処理するしかない。その一点に限る。入寮して初めての満月でどうしようかと思っていたけれど、具合が悪いという言い訳は結構使えそうだ。今までも実家でバレないように過ごしていたのと大して変わらないどころか、寮にいる方が多少声を出せる。2階の女子寮、わたししかいないしね。
発情中はどうなってしまうのかというと、とにかく体の火照り、疼き、性欲増大というところ。満月の夜にしかならないため、うまく付き合っていけば特に障害にはならない。とはいえ、今日の夜は「中秋の名月」と呼ばれる、一年で最も美しいとされている満月の日…いわゆる十五夜の日だった。
毎年この日はなぜか発情具合がひどく、いつもは何度か快楽を憶えてしまえば落ち着いてきてやがて寝てしまえるのだけれど、この日だけは中々疼きが収まらない状態だった。全身がひどく敏感になっており、布団がこすれるだけで快感に変わる。
今日は寝れないかもな…そんなことを思いながら、時計の針が深夜0時を差したころ、きっとみんな寝静まっているし水分でも取りに行こうと自室を出て共有スペースのキッチンへと向かった。
戸棚からガラスのコップを取り出して水道へ向かい、蛇口をひねって水を出したらコップの淵を唇に当てて流し込む。たったそれだけの事なのに、戸棚を開け閉めしたときの衝撃や歩いた時の刺激、突然増えたコップの質量の感覚、唇にコップを当てた時の刺激で全身が震えるほどの疼きに変わる。
立っていられない状態になってしまい、シンクの淵に手をついてしゃがみ込むと。
「…あ?」
頭上から聞こえてきたその声は、クラスメイトの爆豪勝己のものだった。
彼はしゃがみ込んだわたしを上から見上げていつも通り眉を寄せ、ズボンのポッケに手をしまい込んで偉そうに立っていた。なんでこんなところに爆豪が。いま0時過ぎなのに。そんな事を一瞬だけ考えて、思考はすぐに別の方向へとシフトされる。
いま、わたしが発情してるってこと爆豪にはバレないようにしないと。
「テメェ確か風邪引いてんじゃなかったンか」
「ん……そう、だ…ね……」
「…部屋から出てくんなや、うつンだろーが」
「…水分…取りに行こうかと思って………」
途切れ途切れではあるが通常通り回答ができたはずだ。はぁはぁと荒い息を鎮めようと肩を上下させながら「もう戻るよ…」と爆豪に告げながら立ち上がろうとすると、うまく力が入らないのか中々立ち上がれない。
そんなわたしを見て、爆豪は訝しげな顔をする。
「…オイ、立てねーンか」
「……っふ…はぁ……そ、みたい…」
力が入るどころか、どんどん脱力していくわたしを見て爆豪は頭をガシガシと掻きながら大きくため息をついた。
しかしながら、立てなくなっていったのはひとえに爆豪のせいでもある。さっきから爆豪が漂わせている甘い香りが本能に響き、快感中枢を刺激しているに違いない。ずっとあそこがキュンキュンと音を立てている。いつもはこんな香り感じないし、ホルモンを漂わせているとか…そういう類なんだろうか。
そんなことをボーッと考えていると、腕の素肌をするっと何かが滑った。
「ひゃっ、!」
「……オラ、部屋まで連れてったる」
仏頂面でそういった爆豪はわたしの腕を無遠慮に掴みあげ、そのまま米俵を持ち上げるようにわたしを抱きかかえた。
きっと発熱で
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