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仕事以外で人の跡をつけるのは、少し気が引けた。
でもやっぱり好奇心には勝てない。
なまえは一体どんな野郎に。
この前先生から聞いた話では、なまえは今日はストーカー調査の後は直帰すると連絡があったと言っていた。
なまえの知り合いであるキャバ嬢の色恋にひっかかった客がストーカーに近しい行動をするようになったから訴えられないかという依頼だったらしいが、実害は今の所ナシ。
それで本来ならウチに声がかかる予定だったのだが、なまえが調査に向かったらしい。
無愛想で塩対応のなまえは女性に弱い。
まさかなまえの尾行と並行してストーカー調査まで請け負うことになるとは思わなかった。
まぁ、忙しいのは何よりだよな。
(あれって…)
ピンク通りにある依頼人のキャバクラ前に様子のおかしい男が立っているのが見えた。
今にもスタッフに飛びかかりそうなくらい興奮している。
(アレで実害ナシっていうのも、な…)
なまえは近くにいなさそうだ。もう調査を終えたのか若しくはこれから出勤してくるキャバ嬢と会っているのか。逆サイドにいるかもしんないし。
タバコに火をつけつつ、キャバクラ前の客の監視も怠らない。
やっぱり今日にも実害のありそうな男だ。
この距離でも怒鳴り散らしている声が聞こえる。依頼人の源氏名を何度も呼んでいる。
「キョウカを出せって言ってんだよ!」
「昨日も同伴するって言って逃げてんだぞ!」
「客を舐めてんじゃねえのか!」
「同伴の連絡!ホラ!」
どうやら依頼人に同伴を2日続けてトバれたらしい。そんなことあるんだな。
まぁ、同伴の約束しといて別の客と焼肉食ってたホストなら知ってるけど。
「!」
依頼人らしきキャバ嬢が出勤してきた。なまえはやっぱりいない。何処か別の場所で見てるのかも。
しばらく男が怒鳴っていたが、キャバ嬢が何かを耳打ちしたらピタリと男は文句を言うのをやめ、一緒に店内へ入って行った。
さすがに本職は扱いがうまい。
しばらく店前の様子をみていたが、その後男はしっかり延長までしてから出てきた。
特にそのあとも様子がおかしいなんてこともなく、まっすぐ駅に向かって歩いていった。時折スマホを見てニヤついてはいたが。
空振りか?最初に見た時はもう刃物持ってきたっておかしくないくらい興奮していたのに。
(…そういえば、なまえは結局見つけられなかったな)
ppppp
「ん…?あれ、なまえから?」
『八神さん?お疲れ様です』
「おー、お疲れ。キャバ嬢の件、先生から聞いたよ」
『あ、はい。見てたんで』
「やっぱりお前も近くにいたのか。」
『あー……はい。』
「?…客の男はまっすぐ駅に向かってったの確認したけど。なんか大丈夫そうだったよ。やっぱ本職の子だと扱いがうまいね」
『………ですね。一応本人はまだ何かあるかもしれないって不安がってるんで、しばらく様子見お願いできますか?』
「おう、いいよ。この後店の方行けば本人に会えるよね?」
『えっ?……あ、ちょ!…待ってもらえます?連絡先教えていいか確認しますので!』
「ん?…うん、いいけど。なんだ?」
『………あっ、大丈夫みたいなんで。えー…ハイ、今依頼人の連絡先送っておいたのでそっちで連絡お願いしますね。』
「…お、確認した。なまえはまだ近くにいるんだよな?駅まで送ろうか?」
『…大丈夫です。』
「いやでももう遅いし」
『結構です。お疲れ様でした。』ブチッ
なんだか頑なな様子のなまえに、いつもと違った雰囲気を感じとってしまう。
先生から聞いた"面倒な人"に関わることなのかもしれないな。もう一度店の近くに行ってなまえがどこにいるか確認してみるか。