曖昧な口づけで誤魔化して


(※宮田先生が、くずシリーズ!浮気系の話が苦手な方は、ブラウザバックで!)


夜の帳もすっかりと落ち、半分に欠けた月によって辺りはぼうっと柔らかく照らされている。
頭上に広がる墨色の夜空には薄い雲すら漂っておらず、星が高く瞬いているので昼間の快晴であった天気が窺えた。

そんな周囲の景色にぽっと浮かぶ、部屋の明かりの灯った医院の院長室には、宮田と七子の姿があった。


「先生、ダメですよ。こんなところで……」

「何故? もう医院の診察時間は終わっているし、医院長室の鍵も閉めてあるが?」

なんなら鍵も持ってきた、とタグに院長室と書かれた鍵をポケットから取り出して七子に見せた。


「そ、そういう意味じゃなくて……!」

しかし二人の姿は職場での間柄には相応しくなく、デスクへと追いやられた七子は腰を彼に抱きとめられて動けずにいた。

そんな宮田は彼女の心の内を知ってか知らずか、七子の白いナース服を捲り上げようとでもしているのか片方の空いた手は太ももに添えられている。


「せ、先生。美奈さんはどうしたんです!」

宮田と美奈が付き合っているのは、この病院で知らない人は居ないくらいの周知の事実であった。
だが、彼は恋人の事を重たく感じているのか七子と深い仲になっていたのだった。

数週間前、彼とその恋人との関係を心配した七子が宮田の相談に乗り、プライベートや仕事のことを話す内に意気投合して今に至るといった具合であった。


そう七子が追い込まれてやっとの思いで口にすると、宮田は「美奈か……」と呟くとふと顔を顰めた。

それはまるで、この状況に水を差すなとか気に食わないとか言いたげな不服そうな表情を浮かべていた。

彼のその強い視線は相手に有無を言わさない抑圧感に似た感覚を与えるものであったが、元来そういう顔つきであるから致し方ない。
しかし今、注いでいる視線はきっとそういうものでは無く彼の感情から起因するだろうと思われた。

「今は関係ないだろ?」

「そ、そんな……」

少しでも気を逸らして解放してもらおうと目論んでいた七子であったが、少しばかりも動揺の色が浮かばない彼の前に呆気なくそれは外れてしまった。
やっぱり宮田には適わないな、と彼女が思うよりも早く彼がすかさず言った。

「よく我慢したと思わないか?」


我慢したとは?と彼女は一瞬考えたが、先週の休日に入る前の仕事終わりの彼の言葉を思い出していた。
この間も今日のような感じで、ここに呼び出されていたようだった。

「来週末は空けておいてくれ、ってあれですか?」

「ああ、そうだ」


「ええと、空けてありますけど……」

そう七子が言うと宮田は「ありがとう」と彼女の耳元で囁くと、太ももからするりと身体のラインをなぞるように手を滑らせると優しく七子の顎を持ち上げた。

「んっ……ちょ、ちょっと!」

思っても見ない感覚に、七子がくすぐったいと言わんばかりに身を捩らせて眉をひそめつつ、それに耐えていた。

そして彼の鳶色をした瞳に射抜かれるように、捕らえられた。
目の前の整った端正な顔に気恥ずかしくなり思わず目線を背けてしまったが、こっちを向いてくれと優しく言われてしまい再び視線を戻した。


「七子、ずっと一緒に居てくれ……」


それは、今週だけのこと?それとも、これからずっと?
彼女の頭の中は本来の恋人である美奈に申し訳ない気持ちと、でも彼は確実に自分の事を求めてくれているという優越感と、そして宮田の低く甘い声に痺れ、まともな答えを見つけられずにいた。

そんな事を考えているとスローモーションのように唇が近づき、暖かく柔らかな感触が伝わってきた。
ちゅ、とリップ音を立てて離れていった。

途端に心拍数が上がるのを七子は嫌という程感じていた。
まるで、宮田にこの音を聞かれているんじゃないかと錯覚するほどだった。

「しろ、う……」


「好きだ、七子」


すると、宮田は啄むように何度も唇を重ねる。
お互いを求めるように、今日までの欲を吐き出すように少しずつ激しさを増していく。

宮田は七子の唇をこじ開けて、探しあてた舌を舌で絡め取る。
角度を変えて口内を掻き回されるのと同時に、頭の中がどんどん真っ白になっていくのを感じる。

七子は両腕を宮田の首にまわし、水音を響かせながら唇を押し付ける。


甘い、甘いキス。


(やっぱり私、司郎が好き……)


すると宮田が唇を離した。
潤んだ悩まし気な瞳を彼に向けて、七子がどうしたのと問うた。

「この前と違って、随分と積極的だな」

七子の耳を甘噛みしながら宮田がそう囁くと、そこから全身に走る甘い痺れに善がった。
すると徐々に熱を帯びていた下腹がふわりと疼いて、蕩けているような感覚に陥る。

ふと彼の下半身に何か硬いものを感じたが、それはきっと宮田もまた七子と同じ様に本能と理性の間で揺れている証拠であった。

そして、彼に身体を擦り付けるように背伸びをして彼の耳元で同じように呟いた。

「……司郎の事、本当に好きになっちゃった」

そう言った彼女の妖艶でしっとりとした甘い声が、宮田の心を掴んで離さない。
その声に今まで堰き止めていたダムが決壊したかのように、彼の理性が音を立てて崩れるのが分かった。

(余裕がなかったのは俺の方だな……)

「七子……駄目だ、我慢できない」


途端に荒々しく押さえ付けられる唇。
さっきまでのキスと比べて激しく、幾度も角度を変えて七子の思考を奪っていった。

「んっ……ふぁ……」

少し苦しくて口元を緩めると、宮田の舌がぬるりと入ってくるのが分かった。
そして七子の舌も絡め取られて、不規則に上下に交わる。

そして手持ち無沙汰になったのか、宮田が七子のふっくらとした胸へと手をかけた。
布越しでも充分に伝わる、彼女の柔らかな感触に浸っていた。
今すぐナース服をはだけさせたくなるのを堪えて、じっくりと左右を揉んでいく。
下着で擦られて良い所に当たっているのか、時々七子が漏らす妖艶な吐息が厭らしいのに耳に心地よい。
肌の温もりと柔らかな感触が伝わってきて、揉むほどに宮田の興奮が高ぶってくる。

それでも耐えきれなくなったのかナース服のボタンへと手を掛け、するすると器用に外していく。
下着まで取り払われて、窮屈そうにしていた白く滑らかな形の良い豊満な二つの山がぷるんと揺れながら露わになった。

そして宮田に揉みしだかれ、それだけで薄紅の先端部分はツンと張り出し硬くなっているのが分かる。

「やっ……」

「もう勃ってるじゃないか」

「言わないでよぉ……」

そう責められ、七子は咄嗟に顔を隠すが力の強い宮田に腕を払われて彼から視線を逸らすだけになってしまう。

そして宮田は、露になった七子の敏感な先端を口に含み吸い付いた。

「あんッ!」

ひとたび与えられた強烈な感覚に声を抑えられず、甲高い声が漏れる。
舌先でころころと舐めるように転がすと、七子は込み上げてくる快感に身を委ねて甘い声へと変わっていく。

「んんっ、あぁ、……司郎、だめっ」

「駄目じゃないだろう?こんなに喘いで……」


空いた方の手で先端を弾くと、甲高い声に変わる。
宮田はそれを楽しむかのように、七子の蕾を弄っていく。

「あんっ!そこばっかり、んんっ、やめて…!」


「ここだよな……七子」


彼の瞳が妖しく光ったのを七子は感じた。
だが彼女は愉悦に浸され、へなへなと床へ座り込むことしか出来なかった。
宮田はそんな彼女を押し倒し、片手で七子の両腕を頭の上へと組み敷いた。

そして邪魔なナース服をたくし上げて、既に七子の体液でひたひたに濡れて染みになっている下着の割れ目へと指を伸ばし、優しくなぞり始めた。
七子は先程までと違い柔らかな愛撫の感覚に体躯を左右に捩らせ、漏れる声は切なそうに甘かった。

「あぁ……ん」

「こんなに濡れてたら、下着も意味ないだろう?」

そう言うと濡れそぼった下着をずらした。
きらきらと粘度の高い液が糸を引いて途切れると、なだらかな丘が現れ、縦に割れた秘口には染み出している愛液でテラテラと妖しい光を纏っている。

「ほら先端を弄られただけで、もうこんなに濡れてるぞ」

「……んっ」

そして宮田は羞恥心を煽るような言葉を掛けて、ヌルヌルとした七子の蜜を指で掬い取り糸を引いて見せた。

すると、ヒタヒタに濡れたソコにゆっくりと中指を入れていった。
指の出し入れを繰り返すうちに奥から止めどなく蜜が溢れ、徐々にナカのつぶつぶとした厚みが増していく。
くちゅ、くちゅと言う厭らしい水音が二人の聴覚を犯して、熱い気持ちを盛り上げていくようだった。

充分に滴ったところで、宮田は挿入する指を増やし七子の敏感な所を探し出し、内壁を擦りながらその感触を楽しむかのように活発に動かしていく。

「ぁあ……! んっ……しろう、あんっ!それ、だめぇ!」

快感に溺れそうになっている七子は宮田の手をどかそうと奮闘するも、男女の力の差で動かすことは叶わない。
そうなっては堪える事しか出来ずに、あっと言う間に官能の渦に巻き込まれてしまった。

自分でも気付かぬ内に自然と七子は、宮田の事を誘っているかのように腰を上下にくねらせてもっと良い所を探すかのように快感を享受している。

「七子は、ここがいいんだろ……?」

そんな彼女の様子を見て低く囁いた宮田は、親指の付け根の膨らみを硬くなった芽に押し付けながらコリコリと刺激した。

「あんッ! ……ぁあッ!」

触られた瞬間に七子の腰がブリッジし、下肢が硬直するのがよく分かった。

「あッ……! しろ、う……そこ、だめぇ、イッちゃう!」


七子は、内側と敏感な所をまさぐる指の動きと、大好きで堪らない宮田から強い快感を与えられて頭の中が破裂しそうな程だった。

しかしそう彼女が言うと、果ててしまう寸前で宮田が愛撫を止め指を抜いてしまった。


(……司郎、どうして?)

満たされぬ思いに七子がモジモジと足を擦り合わせていると宮田が言った。


「タダじゃ、イかせてあげられないな……。人に物を頼む時は、相応の頼み方があるだろう?」


「……やだ、よぉ」

今まで与えられ続けた愉楽で、滴るほどに潤んで艶っぽくなっている七子の目が宮田を捉えた。

その光る瞳に、骨の髄から滲み出るぞくぞくとした感覚が背筋を走り支配欲にも執着心にも似た感情が彼を襲う。

「イかせて、ってちゃんと言えよ……これで終わりにしても良いのか?」

宮田は低くはっきりとした声で、しかし高圧的な口調でそう言った。

今まで快感に身を委ね、果ててしまうまでの階段を登り詰めていた七子にとっては脅迫にも似たような言葉だった。
そんな状態の彼女が恥ずかしさの為に強請らない訳が無いと宮田は初めから分かっているが、彼の元々のサディスティックな性格が災いして懇願させたかったようだ。

「このままは、やだぁ……。司郎……おねがい、イかせて……!」


「よく出来たな……」

そう言うと先程と同じように中指と薬指を蜜壷に入れ、折り曲げながら、ぐちゅ……ぐちゅと内壁を規則正しく刺激していく。
それと同時に七子が善がり声を上げて、その激しさを増していく。

「あッ……ああッ……! ぃや、ぁん! もぅ……だめ、イッちゃう!」

その声に宮田は更に内側への刺激を強めていくと柔らかい凹凸が段々と膨らみを持ち、宮田の指を呑み込まんとする勢いで食い付いてくる。
それと同時に七子の嬌声が次第に大きくなっていく。

「あ、んッ! ぃやッ! ……しろぅ、イクッ!!」

すると、七子の下半身がピンと伸びたかと思うとびくんびくんと身体を跳ねさせた。
そして彼女のナカがキュッと締め付けられ宮田の指を離さなかった。

暫くして、くちゅ……と音を立てて出てきた宮田の指をたっぷり濡らしており床にまで愛蜜がトロリと滴り落ちている。

「まだ終わってないぞ」

絶頂を迎えたばかりで、はぁはぁと荒い息を整えようと大きく肩を上下させている彼女に向かって宮田はそう言い放った。

そしておもむろにベルトのバックルへと手を掛けて、センタープレスの効いたスラックスを取り払うと暗色のボクサーパンツも脱いだ。
宮田の隆々として長大な棒の先端は既に垂れた先走りで光っており、下腹部に鋭角に聳えている。

横を向いている七子を正面に向かせ、そのまま熱くなった自身を持つと潤沢な割れ目の中心に挿し込んだ。

「これからだぞ……!」

「んッ、うぅ……!」

しなやかで強靭そうな迫力のある宮田のソレが七子のナカを広げながら入ってきて、今までの比では無い拡張感に彼女は耐えていたが、ゆっくりと入れられて最奥にまで達した頃には徐々に快感を取り戻していた。

宮田も同じように、七子の果てた直後のきつく絡みつくような生暖かく圧迫感のある内壁の妖しい感触に必死に耐えていた。

「くっ……締め付け過ぎだ、七子」

そう言うと彼は自分に余裕を持たせるためなのか気を逸らせるためなのか、彼女の柔らかな唇へと口付けを落とした。

そして宮田はきめ細やかでしっとりとした七子の肌とピタリと密着させ、段々と腰を動かし内側の敏感な所を突いていく。

じゅぷ、じゅぷ……と厭らしい音が部屋の中に響いて木霊している。
男の体の中で最も敏感な所が、ねっとりとした愛液に包まれてよく潤滑しているため、宮田も更なる快感を求めて全身の筋肉を使って腰を前後するスピードが上がっていく。

七子は下腹部に打ち付けられる宮田自身の大きさや硬さをもっと感じたいと言わんばかりに彼のモノを迎え入れ、背中へとしがみ付く。


「あぁん……。司郎、きもちいぃ……」


「七子、俺もだ……。なあ、顔を見せてくれ」

愉楽に溺れて苦しそうに顔を歪めている彼女の額には、うっすらと玉の汗が浮かんでおり、その顔は彼の欲情を煽るものであり、再び彼の屹立した棒が大きさを増していくのを感じていた。

そしていよいよ宮田は、本格的な責めに本能のまま入っていく。
七子の足を自分の肩にまで持ち上げて、彼女の臀部を持つと自分は膝立ちの姿勢で、腰を思い切り前後へとピストンさせる。
宮田は初めわざと浅くしていた突き上げを、容赦なく最奥へと打ちこみをはじめていた。

「……ひゃあッ!! ……奥はッ……ぁん! や、やめてッ!! しろ、うッ!」

いきなりドスン、ドスンと打ちこまれて七子は悲鳴にも似た喘ぎ声を上げた。
厭らしいジュポジュポという水音とパンパンと肌と肌がぶつかり合う音が、より一層強まっていく。

「くっ……奥が、いいのは、知ってるぞ……!」

ピストンに合わせて、七子の中から溢れ出る蜜が床や服に飛ぶのもお構いなく、宮田は自身を擦りあげる。

彼の硬い先端が彼女のナカの最奥を押しあげて、その愉悦にさっきまで焦らされていた七子の身体は一気に頂点へと駆けあがっていった。

「しろぅ……! ぁんッ! いやっ……、んんッ! こわれちゃう……!」

「そんなに……!俺のが、気持ちいいのか……!」

宮田はピストン運動を緩めることなく、何度も何度も七子を突き上げていく。
それと同時に、彼女の内壁もタイミングを合わせるように宮田の棒をきつく抱きしめて次第に吐精感に包まれていく。


「あぁッ……! ねぇ、もぅ……あんッ! いゃッ!イキそぅ……!」

「七子、俺も……限界だ……。このまま、出すぞ……!」

ラストスパートを掛けた宮田は、七子の最奥までを今までのスピードよりも早く擦り上げていった。

「ぁあッ! しろう! ……イッちゃう! だめぇ!!」


「はぁ、はぁ……! 出る、ぞ……!」

宮田の中に熱く強烈な迸りが駆け抜け、どくどくと時折脈動しながら七子のナカにまき散らされた熱い白濁が、じんわりと下腹部に広がっていく。

宮田は自分の欲望を最後の最後まで吐き出すように、時々身体を震わせながらゆっくりと腰を前後に動かしている。

そして彼女は背中を弓なりに反らして、びくんびくんと痙攣を続け、二人の混じりあった愛液にまみれた秘唇をヒクヒクさせて絶頂を迎えていた。

全ての精を吐き終えた己をずるりと取り出すと、七子の秘所からトロリとした今放ったばかりの多量の白い雫が垂れて落ちてくる。

そして、宮田は二度も果てて汗ばんでしまっている彼女を強く抱き締めた。

柔らかくて汗の甘い匂いのする七子は、宮田の背中を優しくそっと抱き返し、彼の細くもあり逞しい身体を感じながら目を閉じた。



「七子……愛してる」


「うん。私も……司郎のこと、愛してるよ」


呼吸も忘れるくらいに激しく求め合ったためか、お互いに息が整っていないが、どうにか言葉を交わす。


そして潤んだ瞳で見つめあい自然と目を瞑ると、唇と唇をゆっくりと重ね合わせる。

それはまるで、二人が本当の恋人であるかのように慈しみを持った柔らかな視線だった。





(駄目なのに求めてしまう、貴方の事。)
(俺は君の感触を、忘れられなくなる。)



fin.




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