付けられた首輪
クリスマスの日、私の部屋は例年通りプレゼントに埋もれた。サッティからの高級茶葉やレジーからの柑橘クッキー。リーマスからの蜂蜜キャンディ詰め合わせにハリーからの目覚めすっきり目覚まし時計。今年も魅力的なプレゼントばかりだ。
今年のクリスマスパーティには出なかった。なんとなく嫌な予感がしたからだ。後から聞くところによれば、珍しく占い学のトレローニー先生が大広間に現れたらしい。彼女は会うたびに縁起でもない予言もどきを唱えてくる。出なくて正解だった。
クリスマスの次の日、冥界の部屋にネズミを連れたロンとハリーがやってきた。ハーマイオニーとけんかをしたらしい。
「ブラックが炎の雷をハリーに?」
「ハーマイオニーとマクゴナガル先生はそういうんだ。証拠なんてないのに」
「もうすぐ次の試合なのに、学校の箒じゃ話にならないぜ!」
ハリーとロンが憤慨したように捲し立てる。酷く腹が立っているようだ。私は紅茶を注いで二人に出す。少し落ち着いてもらった方がいいだろう。
「警戒することは大切なことですよ。それだけあなたのことを心配しているんですから、そこは理解するべきでしょう」
「でも……!」
「このままじゃ勝てない!」
「マクゴナガル教授もグリフィンドールが勝つために、すぐにでも検査を終えて箒を持ってくると思いますよ。彼女はそうゆう方ですから。」
そう言えば少しだけだが納得したらしい。早く仲直りしてくれればいい。
「それで、そのよく暴れるネズミはなんですか?ロン」
「スキャバーズっていうんだ。パーシーからのおさがりのネズミ。最近調子が悪くて……。」
「ハーマイオニーの買ってる猫に襲われるんだ。」
「そうですか……。ちょっと貸してもらっていいですか?」
私が手を伸ばすとスキャバーズは酷く暴れたが、途中であきらめたらしい。大人しく私の手の中に納まった。その姿は何となく覚えがあるような気がしたが、ネズミなんてどれも同じだろうと思い直した。
「年寄りのようですが、いくつくらいですか?」
「んー。昔からいるからなぁ。少なくとも八年くらいは生きてると思うよ」
「え、随分長生きですね。」
そんな長く生きているのなら、寿命というのもあるのではないだろうか。だが、そのネズミは酷く疲れているようにも見える。
「昔からそうなんだけど、すぐにいなくなるんだ。それでなくてもあの猫に狙われているっていうのに……!」
私は片手にスキャバーズを乗せたままもう片方の手で杖を振った。すると机の上に小さな檻が現れる。ひとまずスキャバーズをその檻の中にいれ、席を立ち棚をあさる。
「それならいいものがありますよ」
「いいもの?」
「はい。あ、あった。これです」
「リボン?」
私が棚から取り出したのは小さな青いリボン。私は檻の中でぐったりしているスキャバーズの前足に括り付けた。
「もしまたいなくなったら、私のところに来てください。このリボンは私に探知できるようになっているので。因みに成長したり、痩せたりしてもリボンはその大きさに合わせて伸縮するので取れる心配もありません。」
「すごい!」
「よかったな、スキャバーズ。これでいつでも見つけられるぜ」
ロンはスキャバーズを檻から出して自分のポケットに収めた。
「体調不良の原因はわかりませんが、きっと元気になりますよ。大切にしてあげてください」
「うん、ありがとう。ラミア先生!」
2人はやって来た時とは全く違う表情をして部屋を出て行った。
数日後、リーマスに会うとハリーに守護霊の呪文を教えていると言われた。手伝ってほしいとも言われたが、あの呪文が私は少し苦手なので断っておいた。
「君の守護霊は美しいのに。」
「褒めたってなにも出ないよ。リーマスだけで大丈夫だよ。ハリーなら」
「そうかもしれないが……」
リーマスはしばらく納得できないような表情をしていたが、納得できないわけじゃなさそうだ。
「最近忙しいし吸魂鬼のこともあるけど、薬を飲み忘れちゃいけないよ?」
「ありがとう。気を付けるよ。」
リーマスの疲れてやつれた顔は見飽きてしまった。