かわされた真実
「どういうことですか?!ブレアさん、結婚って……!」
『まあまあ、落ち着いて。ラミアちゃん』
「落ち着いてなんていられますか!」
私はセブルスから衝撃の事実を聞き、急いで部屋に戻ると積み重なった手紙の中から最新の彼からの手紙を見つけ出した。その中には分厚い束と一枚のカードが入っていた。
時間のある時に魔力を込めてください。と書かれていたのを見て言われたとおりにすると、カードから『ラミアちゃん?』と彼の声が聞こえてきたのだ。
そして冒頭の叫びに戻る。
『運命だよ、運命。その調子だと手紙は読んでいないみたいだね。』
「当然です、あんな長ったらしい本みたいな手紙、読んでいる暇なんてありません」
『相変わらず辛辣だねぇ』
言葉はそんな感じだが、声からとても幸せそうなのがわかる。
「それで、このカードなんですか?マグルの機械みたいですね。なんでしたっけ?」
『〈電話〉でしょ?これ俺が作ったんだ』
「作った?」
『そうそう。魔法族の連絡手段ってフクロウ便が基本でしょ?守護霊の伝言って手もあるけど、できる魔法使いは少ないし…。手紙にしても伝言にしても一方的になる』
「まあ、そうですね」
それが当然なのだ。今までそれに不満があったことはない。大事な話があれば姿現しでも、飛行でも行こうと思えば行ける。マグルのように交通に不便はないのだ。
『で、マグルの電話をモチーフに作ってみたんだ。まだ試作段階で、一回しか使えないけど…。』
「なんか違和感ですね。声だけ聞こえるって……」
『そう?慣れてしまえばなんてことないよ』
「ていうかブレアさん、闇払いですよね?こんなの作ってていいんですか?」
『闇払いやっているとね、フクロウ便ではどうしようもないことが多いんだよ。流石に敵から隠れながらフクロウ飛ばすわけにいかないし、守護霊は疲れるし』
「確かにそうですね」
『まあ、そういうこと!』
このカードについては納得がいった。しかし確信には触れていない。
「で、突然結婚って…。ワールドカップの時は何も言ってなかったじゃないですか」
『そりゃあ、あの時はまだ結婚決まってなかったからね』
「マグルの女性なんですよね?」
『そうそう!めちゃくちゃ綺麗で優しくてかわいいんだ!』
「はあ…。どこで出会ったんですか…そんなすごい人に」
『え?聞きたい?!そうだよね!?』
「あ、やっぱりいいです。長くなりそうなんで」
聞いてはいけない話題だと、私はすぐに路線を戻した。
「イースターですよね?」
『うん、来られる?』
「まだわからないですね。ダンブルドア校長に聞かないと……」
『じゃあ、わかり次第フクロウ便送って!』
「わかりました。あ、このカードってまだ有ったりします?」
このカードは使えるかもしれない。
『試作品でよければたくさんあるよ。いる?』
「是非、欲しいです」
『いいけど、相手も持ってないと使えないよ』
「じゃあシリウスに送って下さい」
『シリウス?話があるの?』
「私じゃありません、ハリーが話したいでしょうから」
『なるほどね。何枚か送っておくよ』
「ありがとうございます」
マグルで生活していたハリーなら上手く使ってくれると思ったのだ。
それじゃあと通信を切ろうとするブレアさんに、言い忘れたことがあることに気が付いた。
「そうだ、ブレアさん」
『ん?どうしたの?』
「ご結婚おめでとうございます。結婚式、行けるようにダンブルドアから休暇をぶんどってくるので、幸せな姿見せてください。」
『っ!!ありがとう!当然だよ!』
最後の言葉が涙声だったのはきっと気のせいではないだろう。幸せになってほしいと思う。
「休暇は2日でいいかの?」
「え。あ、はい。ありがとうございます……」
次の日校長室に行けば、予想以上にあっさり許可が出た。三大魔法学校対抗試合最中とはいえ、競技さえなければ問題ないうえに、イースターはホグワーツも休暇中だかららしい。
「わしは行けないが、おめでとうと伝えてくれるかい?」
「わかりました。ありがとうございます」
教師になったのはわしが無理強いしたからだしのうと髭に手をやりながらほっほっと笑った。
「ああ、そういえばアラスターが呼んでおったよ」
「マッドアイが?」
私はあからさまに声を低くし、眉間にしわを寄せた。
「そんな嫌そうな顔を…。行かないなら伝えておくが…」
「いいえ、行きますよ。ありがとうございます」
私は低い声のまま、校長室を後にした。
「昔は仲が良かったんじゃが……」
昔は昔。小さく聞こえたダンブルドアの言葉に、心の中で返した。
「呼びましたか?マッドアイ」
「ああ、来たか……。入れ」
私はマッドアイに続いて部屋に入った。そこは薄暗く、多くの魔法道具に囲まれていた。
「で、なんのようですか?」
「昨日、ポッターの名前の書いてあった紙に古代魔法をかけ、弾かれたそうだな」
「ええ、まあ」
そうか、あの時まだマッドアイは部屋にいなかったのだ。
「初めて使ったとはいえ、まさか邪魔されるとは思っていませんでした」
「だがお前のことだから、何か見えたのではないか?」
「……………なぜ?」
「図星か。勘だ。」
「一瞬ですが、名前が……」
「名前?」
「ええ」
たしかにあの一瞬赤い煙はある人物の名前を浮かびあげた。しかし一瞬だった。
「なんと?」
「Bartemius Crouch バーテミウス・クラウチ、と」
「クラウチじゃと?!」
「私の魔法が失敗している可能性も考え、あの場では……」
「お前に限ってそれはあるまい」
しかし所詮古代魔法。私とはきっと相性が良くない。間違っている可能性を考慮すべきなのだ。
「それを誰かに言ったか?」
「いいえ、あなたにしか」
「なら確信があるまでは黙っておくべきか……」
マッドアイは考え込む仕草をして、私に向き合った。
「わたしもそうするべきだと……」
「また何かあれば、伝えろ」
「わかりました。……あなたは本当に気付くのが早いですね。杖もそうでしたが」
「杖…?ああ、そうだったな……」
「?」
私はマッドアイのその返しに一瞬違和感を覚えた。私の勘の良さはきっと彼譲りだ。
「私の杖が変わったことに気が付いたでしょう?それに気が付いたのはあなただけでしたから。黒い杖が折れ、茶色い杖に新調したと」
私は懐から茶色い杖を取り出し、手の中で回して見せた。
「ああ、言っただろう?黒い杖が茶色くなれば誰でも気付くと……」
「ええ。……それでは、私は行きますね。この後授業がありますので」
私はわざとらしく笑みを浮かべて彼に言う。マッドアイはそうかとだけいって私から視線を外した。
私は踵を返し、部屋を出た。ばたんと扉を閉め、もう一度懐に手を伸ばす。
「本物のマッドアイはどこへ……?」
小さくこぼして黒い杖を手の中で回した。