価値観と傍観
ラミアとレギュラスが親友と呼べるほど仲がいいことを知っている人間は少ない。なぜなら彼らが一緒にいるのは図書室と、ホグワーツ特急の中だけだからだ。ホグワーツ特急で一緒にいるところを見ても、学校内ではまるで他人のように振る舞う二人に他の生徒は仲がいいなんて全く気が付かないのだ。
冬の近づいたある日、レギュラスは中庭で溜息をついた。レギュラスは純血主義だ。幼いころからそう教育を受けてきて、疑問を持ったことなどない。そしてマグルに全くといっていいほど興味がなかった。だからルームメイトであるシルヴィオとタージェスがマグルの生徒に絡んでいても全く興味がない。しかし今回だけは状況が違った。
寄りにもよってラミアの後輩に絡むなんて……。実際あの後輩三人組は有名なんですよね……。
レイブンクローのマグル幼馴染三人組。悪い意味で目立っていた。そろそろ止めるか、とレギュラスは近づいた。しかし視界に入った一人の生徒に、やばいと思った。
「さっさと自分の家に帰れ、穢れた血め。」
「っ………!」
「な?!てめえ、言っていいことと悪いことがあるだろ!」
「落ち着いて、セオ。これ以上相手にすることない」
穢れた血。マグル生まれに対する最悪の蔑みだ。唯一の女子生徒は今にも泣き出しそうだ。残りの二人は彼女を背に隠してその場を去ろうとする。しかしシルヴィオが先へは行かせない。これ以上は止めないと、彼女が近づいてくる。
「そろそろ行きましょう。それ以上は……」
「………私の後輩になんて言った?」
無意味です。そう言いかけてとうとうラミアがやって来た。
「!! お前、ラミア・セルウィン!」
騒ぎと聞きつけたらしい。怒気を含んだ声にシルヴィオとタージェスは息をのんだ。しかしそれで立ち退く二人ではない。
「お前も純血だろ?なんでマグルなんて庇うんだよ!」
「はぁ?私はマグルだから庇うわけじゃない。後輩だから庇うんだ。」
「何が違うんだよ」
「全く違うね。他人が何を言われていても何をされていても何とも思わないから。暴力を振るわれていたって、暴言吐かれて泣いていたってね。私には関係ない」
「!!」
「ただ私の知り合いにちょっかい出すなら、話は別。私が制裁を加えてやる」
ラミアは杖を二人に向けた。二人は数歩後ろに下がって来た。レギュラスはその間に入る。
「レグ、邪魔」
「ラミア、ストップです。これ以上やるなら僕が相手になります。できればここは退いて欲しいのですが。二人には僕から言っておきます。」
レギュラスは淡々と述べる。ラミアの表情は変わらない。レギュラスは冷や汗が流れるのを感じた。ラミアはこれ以上怒らせると止めようがない。このまま目立ち過ぎれば、先生もやってくるだろう。早く収束されなければ。どうしようかとレギュラスは頭をフル回転させた。しかしラミアはそのまま踵を返した。
「三人とも、寮に行こう」
「え!?」
「はい……、行こうセオ」
4人が見えなくなり、いつの間に集まっていたギャラリーもいなくなった。もう目立たないだろう。
レギュラスは溜息を吐いた。
「ありがと、レギュラス。」
「ていうか知り合いなのか?ラミア・セルウィンと」
「純血同士ですから……。僕たちも行きますよ。」
レギュラスは適当にはぐらかすと、目も合わせずに歩き出した。
しばらくラミアには会わないようにしよう。レギュラスはまた溜息をついた。