君ありて幸福


「シリウスのせいだ!」

「否定できねぇな」



私とレギュラスが顔を合わせないまま、クリスマス休暇に入ってしまった。私は大広間でシリウスにもらったクッキーを食べながら、文句を言っていた。



「口止めされてなければ……!」

「わりいな」

「今年のクリスマスは一緒に過ごすつもりなんだから、早く誤解を解いてきてよ…」

「俺が?…ていうかレグのやつ、家帰ったぞ」

「は?」



突っ伏していた私はばっと顔を上げた。レグが帰った?



「もともと家に呼び出されていたのにそれを珍しく断ってホグワーツに残るって言っていたのに、急に帰るって言ってビックリしたけど…。まさかラミアのことで?」

「……全部、シリウスのせいだ」

「わりいわりい」

「さっきから全然悪いと思ってないでしょ?!ニヤニヤしてる!」



そう、シリウスは口では謝罪しているものの、口がにやけているのだ。



「悪いとは思ってるんだ。だけどあのレグにここまで思ってもらえる親友がいたとはなぁ…」

「……シリウス、おじいちゃんみたい。会ったことないけど」

「なんだかんだ言ってレギュラスにとって唯一無二の親友なんだ。誤解ならすぐに解けるさ。」

「そうかなぁ……」



レギュラスは頑固だ。そうと思ったら簡単には変わらない。それは私が一番わかっている。


何をするわけでもなく、今までで一番つまらないクリスマス休暇が過ぎていった。
クリスマス当日、私のベッドの周りはプレゼントに囲まれた。
最初に開けたプレゼントは家族から。母からはワンピース、父からは何でも入るポーチ、兄からは魔法のかかったカレンダーだ。どれもとても可愛らしかった。ルームメイトたちからは、フクロウの小さな置物と大きなぬいぐるみ。一緒に選んだらしい。置物は机にぬいぐるみはベッドに飾った。
次に手に取ったのはシリウスからのプレゼント中身はミステリー小説と呼ばれるマグルの書物だった。本は読むが、マグルの本は手に取ったことがない。後でゆっくり読もう。
プレゼントを開けていき、最後に一つが残った。無意識に後回しにしていたらしい、レギュラスからのプレゼント。私はゆっくりと開けていった。



「わあ、きれい……」



入っていたのはガラスに閉じ込められた真っ赤なゼラニウムの花の置物。私はばっと立ち上がり、シンシアの本棚にある花言葉の本を手に取り調べた。彼女は花言葉の載っている本をよく読んでいたのだ。



「〈真の友情〉〈君ありて幸福〉……」



私はもらったそれをギュッと抱きしめた。休暇が終わったらちゃんと誤解を解かないと。




クリスマス休暇はすぐに終わった。そう感じただけかもしれないが。
私は新学期一日目、大広間でレギュラスを待った。



「レギュラス」

「ラミア?待っていたんですか?」

「うん。少し話できる?」

「ええ……いいですよ」



大広間に入って来たレギュラスに私が話しかけると彼は少し驚いた顔をしたものの、すぐに笑顔になって私と大広間から出た。



「で、どうしたんですか?」

「誤解を解こうと思って」

「誤解?僕は何も誤解なんてしてないですよ」

「ううん、してる。シリウスとはただの友達だもの」



レギュラスは一瞬眉間にしわを寄せた。



「言ったでしょう?別に隠さなくていいと」

「隠すことなんてないよ。……あの日のことはシリウスから口止めされてたから言えなかったけど、もう気にしない」

「なんのことです?」

「私はシリウスのレギュラスへのプレゼント選びに付き合わされてただけだよ。」

「……僕のプレゼント?」

「そうだよ。あのグローブ、選んだの俺じゃなくてラミアだからな」

「シリウス!」



大広間の方からやってきたのはシリウスだった。恥ずかしそうに顔をかいている。



「じゃあ本当に、ラミアとシリウスは何もないんですか……?」

「だからそう言ってるじゃん!」

「流石の俺も弟の親友とったりしねぇよ」



私とシリウスの言葉にレギュラスはへなへなと座り込んだ。両手で顔を隠している。状況を全て把握したらしい。



「なんですかそれ、僕かっこ悪い。1人で空回ってたとか…」



声は弱々しいが、少し安心したような声色だった。



「悪いのはシリウスだから、レグは悪くない」

「悪かったって」

「兄さんにしてはセンスがいいと思ったんだ……」

「レグまで何を!」



途中からレギュラスは肩を震わせて笑っていた。



「来年こそ一緒にクリスマスだよ?」

「はい。来年こそ」



私とレギュラスはハイタッチして笑いあった。








おまけ

「因みにラミアからのプレゼントは何だったんだ?」

「美味しい百味ビーンズだけを埋め込んだクッキーでしたよ」

「厨房借りて作ったけど、大変だった……」

「ありがとうございます。ラミアのお陰で初めて美味しいビーンズ食べました。」

「俺がわざと不味いの渡してたからな」

「……兄さん」

「シリウスって大人げないよね」

嫌いな色で塗りつぶして