変わってしまうことは
夏休み初日に届いた日刊預言者新聞の1面は、レギュラスの肝を冷やした。
「【セルウィン家、惨殺】!?」
【第一発見者はセルウィン家令嬢ラミア・セルウィン。ホグワーツ魔法魔術学校から屋敷しもべ妖精との帰宅したところ、遺体の発見に至ったという。魔法省は「犯人はまだわかっていない。しかし手がかりは掴んでいる」とコメントしている。ホグワーツ校長の………】
「そんな……!」
これで彼女は天涯孤独となってしまったのか!?
レギュラスは1度深呼吸すると、母親の部屋へ向かった。すぐにでもラミアの元へ行かなければ。
母を説得し聖マンゴにラミアがいると情報を手に入れ、すぐに向かった。彼女は遺体を見てその場で気を失ったらしい。
一階の受付は幸運なことに空いていた。
「次の方どうぞー」
「あの!ラミア・セルウィンの病室はどこですか?」
女性は少し怪訝そうな顔をしたのち、資料を確認した
「ラミア・セルウィンさんですね。目を覚まさないみたいですけど。5階のエレベーター出て右奥です。」
「ありがとうございます」
「さっきも誰か来ましたね、そういえば。あ、次の方どうぞー」
最後の囁きは全く耳に入らなかった。
急いでエレベーターに乗り込み5階のボタンを押す。どんなに急いでいてもエレベーターの速度は変わらない。とても焦ったかった。
ポーン
ドアが開いて案内の通りに道を進む。歩みは遅くなっていた。
そっと扉に手をかけて開いた。彼女の個室のようだが、そこには予想外の人物が腰を下ろしていた。
「ダンブルドア校長……」
「よう来たのう、レギュラス」
ダンブルドア校長がレギュラスを見て微笑んだ。
気を失ったラミアに気づいた屋敷しもべ妖精が咄嗟にダンブルドアを呼んだらしい。昨日は一日魔法省とともにセルウィン家にいたという。
ラミアは何もなかったかのように眠っている。目を覚まさない方が彼女は幸せなのではないか、とただ思った。
レギュラスはダンブルドアの向かいの椅子に座った。彼女の寝顔がよく見えた。
「セルウィン家には闇の印が浮かんでおった」
「!!」
「ラミアの従兄でもあり最近死喰い人となった、セシル・セルウィンの仕業だとわしは確信しておる」
「セシル先輩が……?」
「非常に残念じゃ。カイル・セルウィンと仲が良くないとは聞いておったが・・・。」
ダンブルドアは少しうつむいて声のトーンを下げた。だが話を止めることはしない。
「ヴォルデモート卿は新たに死喰い人となったセシルを試すために、命を下したのじゃろう。ラミアが家にいなかったことが不幸中の幸いじゃった。」
「そんな……。ですが、ラミアはこれからどうしたら……。」
「彼女の親戚はセシル・セルウィンの一家のみじゃ。共に暮らすことが普通じゃろう。しかし彼女はそれを望まないし、わしもそれは避けたいと思っておる。ラミアは一人で暮らすと言うじゃろう」
当然だ。自分の家族を殺した人間と暮らすだなんて……!
「きっと今回のことでラミアは大きな傷を心につけた。それを乗り越えるためには友人の存在が不可欠じゃ。」
「はい……。」
「力になってくれるかの?」
「はい!」
ラミアを支える。自分にできることはそれだけだと、レギュラスは心から感じていた。何があっても彼女の支えになる。
「安心じゃ。……わしはもう行かねばならぬ。今日中にはきっと目も覚ますじゃろう。後は任せたの。」
ダンブルドアはラミアの頭を軽く撫で、病室を去って行った。
「ラミア……。君にとってこの世界はきっと地獄になってしまったね。僕は、……僕は何があっても貴女の味方です。安心してください。どんな地獄でも、きっと光はあります。」
レギュラスはラミアの頭を撫でた。