変わらな日々
「寝不足も改善したみてぇだな」
「え?」
廊下で偶然会ったシリウスにそんなことを言われた。そんなに分かりやすくやつれていたのか自分はと少しショックを受けた。
「まあ、元気出せってのも無責任だが、もう少し頼ることを覚えるべきだな」
「あなたに?」
「俺でもいいぜ。だけど他にもいんだろ?同室の二人でも、れ、レギュラスでも……」
弟の名前を出すのには勇気がいるらしい。言葉が尻すぼみになってしまっている。随分不便な兄弟だ。
「ありがとう。少しずつ覚えていく」
「ああ」
シリウスはポンと私の頭に手を置くと先に進んでいった。彼の触れた頭に左手を置く。少し熱くなっているような気がした。
「ラミアせんぱーい!!」
「リリス。突撃はやめてって言ったでしょ」
後ろから勢いよく抱き付いてきたのは後輩のリリス。いつも通り元気がいい。
「今日のお昼空いてますか?テストに向けてわからないところを教えてほしいんですけど……」
「空いてるよ。図書室で良い?」
「やった!ありがとうございます!」
「お礼は学年10番台でいいよ」
「そんな!……でも頑張ります!」
レイブンクローらしい向上心の高い後輩だ。なんだかんだ言って私もこの後輩が可愛いのかもしれない。
パシャ、パシャ
今日も聞こえる、不愉快なシャッター音。私は深くため息をつく。
「最近、隠し撮りが露骨になってませんか?ブレア先輩」
「隠し撮り?何のことだい?俺はホグワーツの美しい内装をカメラにおさめているだけだよ」
イラッとするほど爽やかに言ってのけるブレア先輩。
「では〈ホグワーツの美しい内装〉の写った写真の殆どに私が写りこんでしまっているのはなぜでしょう」
「さあ?俺の行くところに君がいるからではないかい?」
「ウザイです。これ以上やるとキール先輩にチクりますよ」
「それだけはやめて!!」
ブレア先輩の天敵キール先輩。とても頼りになる先輩だ。ブレア先輩もこの盗撮癖がなければ頼りになるカッコイイ先輩なのに。そう思うが、口に出すと調子に乗るので、絶対に言わない。
「そういえば、卒業後はどうするんですか?キール先輩はナショナルクィディッチチームからスカウト来てるって聞いたんですけど。」
「ああ、そうだよ。本人も受ける気でいるみたいだし。俺は闇払い。」
「え!?」
闇払いはとても壁の高い職業だ。志望しても本当に闇払いとして仕事に就くことができるのはほんの一握りだと聞く。
「そんなに優秀だったんですか……?」
「酷い!これでもレイブンクローの次席だよ?俺は。呪文も得意だしな」
「さすがです、ブレア先輩」
「棒読み!」
てっきり成績はほどほどだと思ていた私には衝撃の事実だった。今まで先輩の首席次席など気にしたこともなかったのだ。
「頑張ってください、ブレア先輩。応援はしてあげます」
「上から目線!でも、ありがとな」
ブレア先輩は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。