永遠にある愛の名前

親愛なる ラミア・セルウィン


 貴女がこの手紙を読んでいるということは、僕は死んでいるのでしょう。闇の帝王に少しでも報いれればと思います。僕の死に意味があることを心から願っています。

 ラミア、二年前貴女に左腕のことがばれてしまった時、僕は貴女と縁を切ることになってもしょうがないと思っていました。しかし貴女はそれどころかこんな僕と一緒にいたいと言ってくれた。それが僕にとってどれだけ力になったことか……。
 僕は死喰い人に自ら進んでなりました。きっとならないでいることもできたのだと思います。それでも闇の帝王についたのは僕の意義を作るためにほかなりません。母は僕のことをいい息子だと言い、兄は愚かだと言いました。ですが闇に堕ちることだけはしたくないと思っていたのです。僕は自分の意志で行動しているのだと、決して闇に呑まれたわけではないと。そう信じていたかったのです。

 貴女はきっと僕の死を悲しんでくれるでしょう。しかし、あなたの周りには他にも貴女のことを大切に思ってくれる人がいることを忘れないでください。貴女はもう一人ではないのです。なにか辛いことがあったら頼りなさい。悩んだのなら相談しなさい。それだけで変わることもきっとあります。
 僕はそうやって貴女に救われ続けました。僕は貴女のおかげでレギュラスでいることができました。ブラック家の次男でも死喰い人のレギュラス・ブラックでもない。ただのレギュラスで。

 未練はないと言いたいところですが、情けないことに未練があります。ラミアの隣にいたかった。ラミアと一緒に笑いたかった。もっと生きていたかった。こんなことを書けばきっと貴女は辛くなるでしょう。ですが僕はそうまでして貴女の中に残りたいのです。
 間違っても自分の所為だなんて思わないでください。そんな十字架まで貴女に背負わせるなんてことはしません。十字架を背負おうというなら、とんだ驕りです。そんなこと貴女にさせたくて死んだわけではありません。貴女は笑って生きてください。幸せに生きてください。

 これは僕のわがままです。僕を、レギュラス・ブラックを忘れないでください。7年間という短い間でしたが、貴女の親友として隣にいることができたことは僕の誇りです。
 僕は死んでも永遠に貴女を愛しています。だから、永遠にとは言いません。一瞬で良いんです。僕のことを愛してください。ずっととは言いません、時々で良いんです。僕のことを思い出してください。

 貴女に伝えたいことを思うままに書いたら、支離滅裂になってしまいました。そこは目を瞑ってください。ですが綴った言葉は嘘偽りないと誓います。
 ありがとう。僕の最初で最後の心を許した人。

愛をこめて レギュラス・ブラック






 何かがこぼれた。たった一粒。家族を失ってから一滴も流れなかった何かが、たった一粒瞳からこぼれ落ちた。それが涙だと気付いた瞬間、次から次へと涙がこぼれた。

 

「うぅ……うぁ……」



 言葉にならない叫びが口から洩れる。もう涙は止まらなかった。


 今まで我慢してきた感情が堰を切ったように染み出してくる。



「どうして、どうしてレグが………!」



 こんなに生を望んでいた彼が、どうして記憶を失わなければいけなかったのか。



「私だってレグと一緒に生きていきたかったよ。笑っていたかったよ。一瞬じゃない、永遠にあなたを愛するから。あなたから離れないから。忘れることなんてしないから!」



 この感情は恋愛でも友愛でもない。もっと奥にある、もっと根元にある感情。切っても切り離せない何かに向ける感情、愛だ。



「だから、帰ってきて。何年でも何十年でも待ち続けるから。」



 レグが帰ってくることを、永遠に待ち続けるんだ。

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