きっとこれが幸福

「ただいま」

「お帰りなさい」



 三日ぶりに帰宅したラミアは目に隈を濃く残し、ため息交じりの言葉を発した。



 僕とラミアはホグワーツ卒業後セルウィンの屋敷で共に暮らし始めた。ラミアは実験的呪文委員会へ僕は魔法省神秘部へ入職し、順調に仕事を進めている。
どちらの仕事場も残業もなく夕方に帰ってきては二人の時間を楽しんでいた。しかし三日前、時間になっても帰ってこないラミアの代わりに天馬の守護霊が家にやって来た。



『遺跡で未知の呪文が多く見つかった!しばらく帰れなくなりそう。二日経って長引きそうならまた連絡する』



興奮したような伝言に僕はクスリと笑った。ラミアがなかなか面白い呪文が現れないと、先日つまらなそうにこぼしていたのを聞いているからだ。




結局ラミアが帰宅したのは3日後の夜のことだった。



「お疲れ様。ご飯も食べられるけどどうする?」

「シャワー浴びてくる……」



ラミアは随分と疲れているようで、それだけ言うとバスルームへと向かった。少しフラフラとしているようだが、何かあれば屋敷しもべ妖精が対応してくれるだろうと僕はリビングへ向かった。


リビングのソファに座り本を呼んでラミアを待っていると少ししてペタペタと彼女がやって来た。靴も履いていなければ頭もびしょびしょ。それを気にするほどの元気もないようで。



「髪、びしょびしょですよ」

「………」



察した僕は本をわきに置くと両手を広げる。おいでと言えばぼすっと彼女は僕の腕の中へ納まった。肩にかかったタオルで頭を拭いてやれば、ラミアは俯き、されるがままだ。



「未知の呪文はどうでした?」

「面白かったよ。昔の呪文は声に出さないものも多いから、情報って少ないんだけど……。」



 ラミアの声は酷く小さいが、距離が近いお陰ではっきりと聞こえる。顔は見えないが、上機嫌なのはすぐにわかった。



「本当にすごかった。覚えられるものは全部覚えてきたよ。疲れたけど…」

「それは流石ですね。でもここまで髪が濡れていては風邪をひきますよ。はい」

「ん、ありがとう」



頭を拭き終わり、ラミアは顔を上げた。手でゆっくりと髪を梳いてやればそれにすり寄るように顔を寄せる。
猫のようだと思った。気まぐれで、可愛い、僕の愛猫。
きっとそれを口に出せば彼女は顔をしかめるのだろう。でもすぐにとろりと微笑むのだ。その意味を知るのは自分だけで良い。そう思った。

 鼻に唇を落とせば、ラミアは目をパチクリさせてとろりと微笑む。その顔が僕は一等好きだ。



「機嫌がいいの?」

「貴女が帰って来たから」

「そっか……」



ラミアは両手を僕の首へ回し、首を伸ばしてキスをした。触れるだけの優しいキス。



「ただいま」

「おかえり」



唇が触れるか触れないかの距離で交わされる2度目の言葉。
恋しかったのだ。目の前の彼女が。
それを自覚すると途端にその感情が押し寄せてくる。そして彼女の瞳を見て確信する。

貴女もですか。

僕とラミアはクスリと笑うと、もう一度唇を重ねた。




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7/22 Wed 19:24 にコメントくださった方、リクエスト
「レギュラスが死喰い人になっていなかったら」でした!
短い!そしてその要素がない!(´;ω;`) すみません……。ただべたべたしてるだけ…。
多分この1年後に、「そろそろ結婚しますか」「そうだね」みたいな感じで結婚して、その1年後に子供が生まれて、幸せに暮らすと思います。その場合子供はハリーの2つ下とかですかね。
子供は2人くらいできて、ハッフルパフとグリフィンドールで家族みんな寮違うとかだと澄有が嬉しい←
ていうところまで考えたら、これ中編書けるんじゃね?って思いました笑
本編でももし2人の間に子供ができるとしたら、孫世代の少し上とかになりますよね、きっと。
珍しく夢主の仕事が忙しくて、久しぶりに会わない日が続いたらお互い恋しくなっちゃった2人です。レギュラスは会ってから恋しかったことに気づき、夢主はずっと恋しいなぁと思っています。
きっと次の日は休みなので、気が済むまでイチャイチャ(死語)すると思います。というかすればいい←
ちなみにレギュラスの職業が無言者なのには意味はありません。何にしよう?貴族だし魔法省とか無難かなぁ→何がある?あ、神秘部→何してるのかわかんないしいいね!
みたいなノリです。すみません、調子乗りました。
期待に添える内容になったかはわかりませんが、楽しんでいただければ幸いです。
リクエストしてくださった方のみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!


(鼻梁へのキスの意味:愛玩)

嫌いな色で塗りつぶして