2015シリウス誕

「おい、どこに連れていくんだよ」

「気にしちゃいけないよ、パッドフット」



 久しぶりにジェームズと共に騎士団の仕事を終えると、急に手を引かれ有無を言わさず知らない土地を歩く。どこへ行くのかと聞いてもジェームズはお楽しみとしか言わない。久しぶりにあったと思えばどういうことだとシリウスは思った。ジェームズはハリーが生まれてから任務への参加回数は減っていた。それはジェームズとリリーだけでなく、シリウスやリーマス、ピーターたっての願いでもあった。
 だが今日の任務は何故かジェームズが参加すると梃子でも動かず、難易度の高いものでもなかったため久しぶりの二人だけの任務となった。



「気にしないわけないだろ。ていうか、このあと約束があるんだけど…」

「ラミアとだろ?」

「なんで知って…!」



 確かにシリウスとこの後の約束をしたのはラミアだ。二日前にフクロウ便が届いたのだ。任務の後開けておいてと。だがそれを誰かに話した覚えはないし、ラミアもわざわざ人に話したはしないと思っていたのだが。



「ラミアが話したのか?」

「話したというか、僕が頼んだというか……」

「はあ?」



意味が分からないとシリウスは声を上げる。ジェームズはバツが悪そうに笑った。



「まあまあ、着いてきてくれればわかるよ。」



 ジェームズは目をキラキラさせていった。学生時代悪戯を考えていた時と同じ目だ。子供ができて一児の父になっても根本は変わらないらしい。その眼を見れば自分にとって都合の悪い話でないことなどすぐにわかる。シリウスは少し肩をすくめてつい笑った。自分も変わっていない。
 しばらく歩くとぽつんと小さな小屋へたどり着いた。誰も住んでいないようで酷く廃れた、風が吹けば飛んでしまいそうなボロ家だった。



「ほらほら、こっち。これを掴んで」



 案の定誰も中にはおらず、腐りかけた机の上にコーラの空き缶がぽつんと置かれていた。掴んでと言われてシリウスは気が付いた。ポートキーだ。



「おい、どこへ行くんだ?これ?」

「すぐ着くんだから、ちょっと待って」



 ジェームズは懐から懐中時計を取り出すと、カウントダウンを始めた。







 バシュン



 慣れたような、慣れないような。体をぐんと押し上げられるような感覚の後、すぐに元に戻った。咄嗟に閉じていた目をゆっくりと開けた。目の前に広がったのは鮮やかな緑。



「森……?」

「ようこそ、シリウス」

「ラミア?」



 背後から聞きなれた高い声が聞こえ、ゆっくりと振り返る。そこにはバカでかい屋敷の前に友人が立っていた。



「誕生日おめでとう、シリウス」

「おめでとう!」



 友人たちが代わる代わる祝福の言葉を自分にかけた。ジェームズ、リリー、リーマス、ピーター、そしてラミア。今日は誕生日だったか。



「やっぱり忘れてたんだ」

「うっせ。ラミア、お前だって二年に一度は自分の誕生日忘れてるじゃねぇか」

「まあ、そういうときもあるよね」

「はは、確かにラミアは自分のことには無頓着だもんね」



相変わらず見事な掌返しだ。リーマスは楽しそうに笑ってラミアの頭に手を置いた。ラミアは少し口を尖らせながら、頭を下げリーマスの手を躱した。この2人はいつ見ても兄妹のようだ。
そんな様子を見ているとトントンと肩をたたかれて、シリウスはそちらを向いた。



「ほら、ハリー。あなたの名付け親のシリウスよ」

「んま!」



 満面の笑みを浮かべたリリーの腕の中には一歳のハリーがいた。会うのは久しぶりだった。



「ハリー!話せるようになったのか!」

「話せるようにというか、前より声を出すようにはなったわね。ママと言ってくれるのも時間の問題かしら」

「パパって先に呼んでほしい!」

「リリーの方が家にいるんだしそれは無理なんじゃ……」



 ピーターの無情な言葉にジェームズはこの世の終わりのような顔をした。自分も早くハリーに呼んでもらいたい。そう思った。おじさんでも、シリウスでもいい。この子の成長を見るのが酷く楽しみだった。



「外にいてもなんだし、中へどうぞ」



 ラミアの言葉に6人はぞろぞろと屋敷の中へ入る。見知らぬ屋敷にシリウスは少し驚いていた。



「ここ、セルウィンの屋敷だよな…?」

「うん。こんなに人を招待するのは初めてだよ」



 ラミアは楽しそうに笑った。何日か前から準備してたんだと大きな扉を開ける。広がる大広間にほうと息を吐いた。派手すぎないシンプルな装飾がなされ、それはシリウスの好みだった。ホグワーツに負けないくらいのご馳走の並んだ机につい目を奪われる。シリウスの好物が並び、いい香りが任務でお腹をすかせたシリウスの鼻をくすぐった。




 屋敷しもべ妖精によって全員にグラスが配られた。するとジェームズはシリウスの腕を引っ張り簡単に作られた壇上に乗った。



「今日は我らが親友の誕生日!こんな陰鬱な世の中だが、だからこそこんな日くらい笑顔で過ごそう!」



 そこまで言うとジェームズはシリウスに向き直って、グラスを差し出した。



「シリウスのこれからの幸せを願って!誕生日おめでとう!」

「おめでとう!」



 俺はこんなに幸せだったのかと、シリウスは小さくしかしはっきりと零す。つい浮かんだ笑顔は学生のころと同じキラキラしたものだった。



「ありがとう!」





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Happy Birthday! Sirius Black!
一時間クオリティですが、ぎりぎりで間に合いました…。
ジェームズとリリーがヴォルデモート卿による襲撃を受けず、生存しているifです。因みにハロウィンの前日、セルウィン嬢はポッター家を訪れてサプライズの作戦を練っていました。
本編ではシリウスを祝うことなくポッター夫妻は殺害され、シリウスはアアズカバンへ投獄されてしまいます。
最近何を書いても切ない系だったので、シリウスを幸せに出来てよかったです!
お誕生日おめでとう!シリウス!

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