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「全く、チルのいたずらには困ったものですね。」
軽く笑みを含みながら溜息をつき、そっと私の方へ手を伸ばしてくれた。
するとその手にゆっくりと引き込まれるように私の身体は降りていった。
助かった、これで地面に足を付けると思ったが着地場所は床ではなく男性の腕でお姫様抱っこという形で戻ってきた。
「えっ、えっ、あの。」
世像外の出来事に、自分でも顔が真っ赤になっていくのが分かるくらい熱くなっていった。
「失礼、急に床へ降りるより私が受け止めるほうが怪我等しないと思いまして。
ん、顔が赤くなっておりますが熱でもおありですか?」
「違う違う、お、おろして、ください…。」
そうですか、と呟きそっと降ろしてくれた。
この人たちは本当に何なのか、でも普通の人間ではないということだけは今身を持って知ったところである。
「それでは本題に入りましょうか。」
男性が指を鳴らした瞬間、周囲が真っ暗になり辺り一面がスクリーンになったように映像が映りだした。
これは何だ?まだ自分は夢を見ているのか?
あれか、最近根詰めて勉強しすぎて学校の下校時刻まで寝ているんだ。
そうだと思い込んで自分の頬を摘んでみた、痛かった。
「夢では御座いませんよ。こちらに映っていますのは貴女様の今後の人生になります。私共は貴女様に良き人生を謳歌してもらいたく存在しているのです。」
「良き人生…。」
今で十分楽しいんだけどな。
いじめとかもないし、友達もそこそこいるし、勉強だってついていけてる。
ただ楽しめてないと言えば。
「アンタさ、恋愛したことないでしょう。」
チルの言葉が心に突き刺さる。
否定したいところだが出来ない自分に恥ずかしくなり再び顔が赤くなっていくのが分かった。
「そのようですね、このお方のこれまでの人生には恋愛と言うイベント事はないようです、なぜですか?」
眼鏡の淵を指で持ち上げながら私に問う。その表情はまるで塾の講師がなぜこんな問題も解けないのですか貴女はと責めているようにも見えた。
私だって恋の1つくらいしてみたい。誰かに恋をしてどきどきしてみたい。
普通の女の子みたいな事をしてみたい。
「だって…」
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