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昨日の夜は結局羽ペン1つ動かすこともしないまま終わり、今日は選択科目の魔法生物飼育学がありとても楽しかった。今までの座学や教室で行う授業も楽しいけれど、外で開放的に行われる授業はもっと好きだと思った。
ケトルバーン先生はユニコーンの生態について詳しく説明してくれて、実際にユニコーンと触れ合う時間も設けてくれた。初めて触れるユニコーンの毛はふかふかでとても肌触りが良く、それにとても気品ある優しい目をしていたのが印象的だった。

全部の授業がこれほど楽しければいいのに、実際にはそうはいかないのが魔法薬学である。
今週はどの授業も授業自体の説明が多かったが、来週からは内容自体が難しくなるはずだ。
夜中、談話室で行う勉強にも気合が入るのは至極当然である。

「あ、サラそれ違う。そうすると出来上がるのはDelflating Draughtだよ」

なるほど、ぺしゃんこ薬ね。
魔法薬学は寸分の狂いも見逃してくれないくらい繊細さが必要らしい。アバウト、適当、まぁこれくらいかが大好きな私としては大さじのものを正確に測るために小さじで小分けにするなんて自分ではきっと考えもつかなかった。ちなみに今私が覚えたいのはSwelling Solution、ふくれ薬である。

私はジョージにお礼を言って羊皮紙を書き換える。
1、2、3年時で習う範囲の教科書類はハーマイオニーやパーシーから借りていたものの、優等生達の教科書はなんていうか書き込みがすごくて、もはや本そのものの文字が読み取れなかったほどである。(ハーマイオニーはまだいいけど、パーシーは書き殴ってる部分がほとんどで、もはや本人ですら読めているのか謎なくらいである)

「あ、そういえば」
「ん?」

ジョージが思い出したかのように私を呼ぶので、私は羊皮紙に書き込んでいた手を止めてジョージを見る。
ジョージはたまに私の手元を覗き込みながら自分の課題をやっていたけれど、ほとんどが未だ白紙状態である。
っていうかそれ夏休みの宿題だよね。真っ白すぎるでしょ大丈夫なの。
言葉には決してしなかったが、視界に入る羊皮紙の真っ白さに度肝を抜かれた。

「明日クィディッチの練習があるんだ」
「クィディッチ?‥そういえば選手だって言ってたね」
「そうそう。サラも練習見に来る?アンジェリーナやアリシアもいるし、選手じゃないけどリーも実況だから必ず見に来てるんだ」
「いいの?!」

やった!クィディッチ!
小さい頃お父さんにクィディッチの話を聞いてから一度見てみたいと思っていたのだ。練習だけど、それでも本物のクィディッチ。お父さんがやっていた‥
私は素直に喜びを隠しきれないでいると、ジョージは「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ」と笑った。

「私のお父さんもホグワーツでクィディッチやってたってよく話してくれてたの。見てみたいってずっと思ってたから」
「へー。どこのポジション?」
「なんだったかな。ビート?」
「もしかしてビーター?」
「そうそれ!」
「ビートって!」

私の言い間違いにジョージは大いに笑った。笑いながらジョージとフレッドもビーターなのだと教えてくれた。
こうやって豪快に笑っている姿はフレッドによく似ている気がするけど、やっぱりちょっとした仕草が違うんだよなぁ。
私がそんなことを思っているなんて露ほども知らないジョージは、黙った私がまたからかわれすぎて怒っていると思ったのか「ごめんごめん」と謝ってきた。
何がそんなに面白いのか、目から少し涙は出てるし笑いを隠しきれていないそんな謝罪は何の意味もない。
いや別に怒ってはいないけど、こんなにも気持ちのこもっていない「ごめん」は初めてである。

「ジョージ笑いたいの我慢出来てないよ」
「うん、ほんとごめん」
「もう!」
「サラが可愛いくらいに面白いのが悪い」
「なっ‥」

これだから英国紳士は!サラリとそういうことをすぐに言う!
私が言葉に詰まっているとジョージは「そう言うところがだよ」と言い笑った。もう‥と私が手でパタパタと顔を扇ぐと目の端に笑いをこらえきれてないジョージが映る。なんだか昼間はフレッドに馬鹿にされるし、夜にはジョージにからかわれるし、双子と関わるとロクなことがないとロンは言っていたけれど、それは本当だったようだ。

「ジョージの意地悪」
「サラは反応がいちいち可愛いんだよ。ついついからかいたくなるんだ」
「むぅ。今に見ててよ。ジョージのこと私がからかってあげるから!」
「それはそれは。楽しみに待ってるよ」

なんで余裕なの!人が真剣に言っているのに!


**


次の日の朝はなんとも慌ただしかった。
まずまだ夜も明けていないうちから、アンジェリーナやアリシアはバタバタと身支度を整えていて「サラ、急いでるからまた後でね!」と言い、さっさと部屋から出て行ってしまった。
次に談話室に降りると双子がウッドと呼ばれる人に散々文句を言われながら(この双子はなんでこうも目覚めが悪いんだ!!と一方的に怒鳴っている)引きずられるようにして連れ出されていた。ちなみに、2人はまだ寝ているようで、引きずられてという表現はあながち間違いではない。
私はというと、選手じゃなくてよかったと心の底から安堵し、再び夢の世界に落ちることに決めた。

そして再び目を覚まし、身支度を整えてから談話室に降りると偶然にもリーと鉢合わせた。

「おはよ、サラ」
「おはようリー。今日ってクィディッチの練習あるんだよね」
「そ。朝凄かったろ?休日の練習日はいつもこんな感じさ。今日はいつにも増して、だけど。俺たちもそろそろ大広間行くか?」
「そうだね、一緒に行こう」

私たちは連れ立って大広間まで歩いて行った。何気にリーと2人で話すのは初めてのことだ。私は少しだけ緊張していて、それにいち早く気づいたリーは「なになに?俺と一緒に居てドキドキしちゃった?」と意地悪な笑みを浮かべて言ってきた。類は友を呼ぶというが、やっぱり双子の親友である。

「リーまでからかわないでよ」

私の顔はきっと赤い。昨日の夜もジョージに言われたけど、いちいち反応するのがいけないんだ。案の定リーからも「サラはいちいち可愛い反応してくれるからな」とニカッと笑ってそう話した。

「けど、俺以外にも誰かにからかわれたのか?」
「ジョージだよ。昨日いっぱいからかわれたばっかりなの」
「へぇ‥ジョージが、ね」
「なあに?」
「いや、なんでも」

なにそれ、すっごい気になるんですけど。
リーはそんな私の考えなんてお見通しのようで「まぁ気にするな」とサラリと流されてしまった。どうして双子やリーってこちらが聞きたいことをこうも軽く流すのか。

ここで身を引く女の子がいたら重宝されるのだろうけど、そこは諦めの悪い私である。その後もずっと「ねーなになに?教えてよー」と尚もしつこく尋ね続けると、リーは「はいはい、サラちゃんもう着いたからねー」と小さな子どもを諭すかのように私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「サラはしつこいのがたまに傷だな」とぽろりと口からこぼれたリーの言葉は、しっかりと私の耳に届いたことだけはお伝えしておきたい。


**


朝食を食べ終わった私とリーはそのまま競技場へと足を進める。競技場に着くと、ロンやハーマイオニーはもう既にそこにいて、2人揃ってマーマレード・トーストを頬張っていた。

「よ、お二人さん」
「ロン達も観に来てたんだね」

私たちが声をかけると、おはようの挨拶に続いてロンが「ハリーの様子を見に来たんだ」と教えてくれた。
それにしても先ほどから聞こえるカシャ、カシャという音は一体全体何だろう。それにはリーも同意見のようで、「なんか変な音しないか?」と言いながら辺りをキョロキョロと見渡している。
すると、ロンがトーストを口に入れながら「あれだよ」と音の根源を指差した(ハーマイオニーは物を口に入れたまま喋らないで!と怒っている)。

「こっちを向いて、ハリー!こっちだよ!」

どうやらロンによると、ハリーの熱烈なファンらしい。小さな男の子(コリンというらしい)はハリーの姿を収めようとマグルのカメラで先ほどから撮りまくっているそうだ。ちなみにあのカメラにはハリーしか写っていないらしい。それは熱烈どころの騒ぎじゃない。もはやストーカーである。
先日、ロックハート先生に絡まれているハリーを見ていたので、彼は本当に苦労が絶えないなぁと写真を撮るコリンを見ながら思った。ハリーには一度お祓いに行くように強く勧めたいものである。

競技場を見るとアンジェリーナやアリシア、双子やハリーが高らかに箒で飛んでいた。その中には朝、双子を引きずっていたオリバー・ウッドさんも居て、選手達に色々指示を出しているが、一方でコリンの方をチラチラと見ているので、余程カメラの音が気になって仕方がないように思えた。
その隣で双子の1人がこちらに向かって小さく手を振っている。きっとジョージだ。私がそれに気づくと、彼は嬉しそうに笑ったので私も手を振り返した。

そんな時だった。ジョージは何かに気づくと、ウッドさんに何かを呟き、どこかを指差した。それに皆が気づきジョージの指し示す方を見ると、なんとそこにはグリーンのローブを着込んで、箒を片手に、競技場に入ってくるスリザリン生が居たのである。

「なんだよあれ。なんでスリザリンの連中がいるんだ」

ウッドさんは勢いよくその群れの中に突っ込んでいき、双子やハリーもそれに続いている。誰がどう見ても爽やかな朝の情景が一気に不穏な空気に様変わりした。

「私たちも行きましょう」

ハーマイオニーのその言葉を皮切りに、ロンとハーマイオニー、そしてリーと私でみんなの元へと急いで向かった。


**


私たちがたどり着いた時には既に大乱闘寸前だった。
フレッドとジョージは箒を握りしめて苛立ちを露わにし、ウッドさんはスリザリン選手に向かって文句を言い、ハリーとアンジーとアリシアは不快感を全開にしてスリザリン生達を見ていた。

「どうしたんだよ?なんで練習しないんだ?ていうかあいつ、なんで、こんなところにいるんだよ?」

ロンのいうアイツとはドラコ・マルフォイのことである。シルバーブロンドの髪に青い瞳、人を蔑んだあの目。私は彼の父親ルシウス・マルフォイに過去一度だけ会ったことがあるけど、彼はその息子というにはなんというかあからさますぎて、親子ってすごいなとただただ感心させられた。

聞けば、マルフォイ君はスリザリンの新しいシーカーで、あのスネイプ先生から新しいシーカー育成のために競技場での練習を許可された、というのだ。

「僕の父上が、チーム全員に買ってあげた箒を、みんなで賞賛していたところだよ」

そして、スリザリンのみんなが手にしている箒。それはニンバス2001という代物で、マルフォイ君のお父上様が選手全員にプレゼントしたという。
それって買収じゃないの。あまりにも堂々とインチキをしていて、逆に清々しいくらいである。
箒マニアのリーとしては目の前にあるニンバス2001に驚愕し、瞬きすら忘れてしまったみたいだが、私としてはその堂々たる姿にさすがだなとただ1人感心させられていた。

「少なくとも、グリフィンドールの選手は誰一人としてお金で選ばれたりしてないわ。才能で選手になったのよ」

確かに。さすがハーマイオニー、その意見はごもっともである。
私は思わずハーマイオニーに拍手をしたが、それがスリザリンからの反感を買ってしまったようでほぼ全員から睨まれる事態となった。危ない危ない。目立つことだけは極力避けたい。
しかし私の心の中はハーマイオニーへの割れんばかりの拍手喝采が未だ続いていることだけは忘れないで頂きたい。

しかし次の瞬間事件が起こる。
ハーマイオニーがマルフォイ君に正論を吐き捨てると、彼は青白い顔を真っ赤に変えて、事もあろうか聞き捨てならない一言を放ったのである。

「誰もおまえの意見なんか求めてない。生まれそこないの『Mudblood』め」

私は耳を疑った。それはグリフィンドール側の人間みながそうであるようで、双子はマルフォイに殴りかかろうとし、アリシアは「よくもそんなことを!」と金切り声を上げた。それもそのはず、その言葉は例のあの人の名前くらいタブー視されている言葉である。いくら純血主義の家系であっても、常識ある人間は決して口にはしない。最悪の言葉だった。

「マルフォイ!思いしれ!」

ロンは大柄なスリザリン選手(ウッドさんはフリントと呼んでいた)の後ろに隠れているマルフォイ君に杖を向け、思いっきり呪いをかけた。
が、思い知ったのはなんとロンの方だった。
ロンはずっと杖が壊れていて正確な魔法が使えなかったようで、今回も失敗に終わる。いや失敗に終わればまだ良かったのに、自分で放った呪いが逆に自分に返ってきてしまったのである。
呪いがかかったロンは急に苦しみ出し、次の瞬間なんと口からナメクジを吐いた。

お、おお‥。なんともグロテスク。

正直あんなものが口から出るなんて、ロンが可哀想すぎる。でも考えても見てほしい。人がナメクジを吐く姿は想像を絶するほどに気持ちが悪いものである。

これにはスリザリン選手は手を叩いて大笑いした。マルフォイ君なんて目から涙まで溢れている。でも私も油断はできない。ロンがナメクジを吐く姿に自分まで吐き気が止まらないので、この場で吐いてしまわないかそればかりが気になって仕方がなかった。ロンが可哀想な気持ちは強いが、正直なところスリザリン生を睨みつけることで自分の正気を保つことに今は必死である。彼の兄である双子はロンに近寄ろうともしなかった。

その後、すぐにロンの元に駆け寄っていたハリーとハーマイオニーが「ハグリッドのところに行こう!」と言い、勇敢にもロンを両脇に抱えて連れて行ってしまった。ロンは歩いてはうずくまって吐くを繰り返していて、中々先には進んでおらず、その度にスリザリンから大爆笑されていた。

哀れ、ロン‥。

手助けできなかったせめてもの償いに今度蛙チョコレートをプレゼントしよう。

私が遠い目でロンを見続けていると、私のことを見ている視線に気がつき、ふとそちらを見る。
「よお、グレイス」
その人物とはスリザリンの選手の1人で、選手のくせになぜか太っていた。
なんで?運動してるんだからせめてマッチョにならないの?
いけすかない笑みを浮かべて、初対面にしてはどうにもこうにも不躾で失礼な挨拶をしてきたその男に私は嫌悪感を隠しきれなかった。

「‥なにか?」
「俺はグラハム・モンタギュー。噂の編入生が同じ学年だって知って一度話して見たかったんだ」
「それはどうも」
「グリフィンドールに入るくらいだから勇敢かと思いきやそうでもないみたいだな」

言いがかりはやめてほしい。ずっと傍観者でいたのだから、最後まで傍観者でいたいのに、私をトラブルの渦中になぜ巻き込む。
一瞬でうんざりした私はこのまま無視を決め込むか、文句の10や20でも言ってやろうか考えていたら、「言いがかりはよせよ、モンタギュー」と横から声がかかる。フレッドとジョージである。2人は私をかばうようにして、私とモンタギューの間に入ってくれた。

「編入して間もない女の子に不躾に声をかけるなんてさすがモテないだけのことはあるな」
「なっ‥」
「それにその薄汚い笑みはやめた方がいいぜ?女の子じゃなくても鳥肌もんだ。それとも好感の持てる笑い方ってやつを教えてやろうか?」
「黙れウィーズリー!」

2人の罵倒に二の句を継げないでいるモンタギューはバカにされたことを顔を真っ赤にして怒っている。
いつの間にやってきたのか、私の隣にはリーもいて「あのモンタギュー、俺たちとは犬猿の仲なんだよ」と教えてくれた。
確かにこのメンバーは一生歩み寄れそうにもない。双子とモンタギューは未だに互いを煽り罵倒し合っていて、その勢いは止まりそうになかった。

ウッドさんは一連の流れで最初の勢いをなくし、アンジーやアリシアと共にとぼとぼと帰っていった(アリシア達はウッドさんを慰めているようだ)。そうこうしていると、言い合っていた双子の1人がこちらにやってきて「サラ、行こう」と私の肩にポンと手を置き、手を取って歩き出したので、私は転ばないように一生懸命ついて行った。


**


どれくらい歩いたか分からないけれど、気づいたら湖近くの大きな木のところに辿り着いていた。
そこに着くやいなや、彼はくるりと私に振り向き直って、「大丈夫だった?」と聞いてきた。その時初めて私は彼がジョージだと確信を持って気づくことができたのである。

「うん、平気だよ」
「あいつ、‥モンタギュー。なんでサラにわざわざ話しかけたんだろ」
「単に私が珍しかったんじゃない?編入生が自分と同じ学年で興味あったって言ってたし」
「だとしてもいきなりサラに話しかけるなんて頭おかしいよな!」

どうしたんだろう。これはジョージの皮を被った誰か別の人物なんじゃないだろうか。いや、ジョージなはず。ジョージ、だよね?でもなんだかジョージじゃないみたいだ。私たちはまだ日の浅い関係だけど、ジョージはいつだって冷静で、こんな風にイライラを前面に出したりは決してしない人だということを私は理解していたから。

「ジョージ怒ってるの?」
「そりゃぁ怒るさ!だってサラが‥っ」
「私が?」
「‥いや、うーんと、その。‥リーが言ってただろ?あいつは俺たちとは犬猿の仲だって」
「うん」
「そんな奴に友達が絡まれてるのは嫌だったんだよ」

ジョージ。なんて良い人なの。友達のためにここまで怒れるなんて。
ジョージはこの時ようやく怒りが沈んだようだけど、対して私は感動で胸がいっぱいになった。

「ありがとうジョージ!私もジョージが絡まれてたら絶対助けてあげるからね!」
「え?」
「こんなことならさっき文句の100や200言っておくんだった!ジョージ、今度からは私に任せてね!」
「あ、ありがとう‥」

ジョージは呆気にとられているようだが、感動で気持ちが最高潮の私はそんなこと気にする余裕などなかった。次は絶対に私がモンタギューからジョージを守ってみせる!と固く決意し、未だ握り合っていた手に力を込める。

「あ!」
「ん?」
「そうだジョージ‥さっきは、その‥守ってくれてありがとう」

私がジョージの手を包むようにしてお礼を言うと、ジョージは少し目を見開いて、そうかと思うと今度は顔を真っ赤にして「‥サラって天然?」ときいてきた。は?失礼にも程がある。

「そんなことないよ、しっかりしてる」
「いや、しっかりはしてないさ」
「なんで!ちょっとうっかりすることがたまーにあるだけだよ」
「‥そうじゃないんだけど。まぁそういうことにしといてあげるよ」
「むう!なんだかなージョージにはいつもそうやって流されてる気がするなー」
「でもさ、真面目な話。モンタギューにはもう関わらない方がいい」
「うん‥」
「‥サラがあいつに絡まれるのはなんか‥嫌だからさ」

そう言うとジョージは手を口に当てて、また顔を赤くさせた。やっぱりいつものジョージらしくない。ジョージはいつだって冷静で、逆に私が赤くさせられてるのに。

「ジョージがそう言うなら‥うん。分かった」

私が素直にそう言い頷くと、ジョージは今度は優しく笑って私の頭を撫でてくれた。
今日は朝から目まぐるしかったし、スリザリンとグリフィンドールの根深い因縁争いが起こったし、ジョージの意外な一面も見えて、まだ半日も終わってないはずなのにもうお腹いっぱいである。寮に戻ってお昼寝でもしよう。頭を撫でてくれるジョージの手があったかいなぁ大っきいなぁなんて思いながら私は目を閉じた。



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