その日の夜、談話室でハリー達を見つけた私はすぐさま駆け寄り、まずはロンに体調を伺うと本人はケロリとしていたので安心した。
「ロン、大丈夫なの?」
「あぁ‥まぁね。もうこの通り。あれくらいどうってことないよ」
ロンは自分のところに真っ先に来てくれたのが嬉しかったようで、陽気な声で答えてくれた。いつも憎まれ口を叩いちゃうところもあるけど、こういうところは素直でかわいい。なんだか弟ができたみたいで嬉しかった。
続いてハーマイオニーに向き直り、私はぎゅっと彼女を抱きしめた。私のその行動に彼女は「サラ?どうしたの?」と驚きを隠せないでいるようだった。
「あんな言葉、気にしなくていいからね」
「Mudbloodと言われたことね」
「‥言わなくてもいいのに」
「ありがとう心配してくれて。でもそんな差別、私はどうってことないわ」
「‥強いね、ハーマイオニーは」
「友達が、いてくれるもの」
そう話すハーマイオニーは少しだけ頬を染めて、ハリーとロンを見た。彼女らしからぬ素直な表現に2人ともタジタジになっているが、2人にしても友達という言葉に嘘はなく、誇らしくてたまらないのだろう。
ロンは体を張ってハーマイオニーを守ろうとし、失敗に終わってしまったロンの元にいち早く駆けつけたハリーも彼女に何かしらの勇気を与えたに違いない。
友達の力ってすごい。きっと彼女は今日という日にそれを強く感じ取ることが出来たのだろう。
私が何か言おうなんてお門違いもいいところだ。
言葉にしない代わりにもう一度抱きしめた。こんなにも優しくて聡明な彼女を、マグル出身の偏見だけで差別するなんて間違ってる。
どうか彼女が笑って魔法界で学び、活躍できますように。
そう願いを込めて抱きしめる手に力を込めた。
**
「あれ?ジョージ‥」
「あ、サラきたきた」
「今日は朝も早かったし疲れてるだろうから寝てるかと思ってたのに」
いつものように夜中談話室に降りると、そこにはジョージがいた。今日はジョージ達選手のみんなは日が昇るか昇らないかくらいの時間に連れ出されていたので、絶対に起きていられないだろうと思っていた。それに休んでほしいという気持ちもあった。
「俺たちは気づいたら競技場にいたんだ。起きたのはきっとサラ達と同じくらいだよ」
「え、それもどうなの」
確かにフレッドとジョージはウッドさんに引きずられて出て行ったけど、まさかずっと寝たままだったなんて。
ウッドさんの苦労が偲ばれるようである。
「サラ、防衛術のレポートやった?」
「まだ完成してないよ。本は読んだから先生好みに適当に書くつもり」
「悪い考えだなぁ」
「ジョージは?終わったの?」
「まさか!読んですらない」
何度も言うようだけど、それってどうなの。
決して口にはしなかったが、私の考えなんてジョージには筒抜けで「俺はサラに写させてもらうつもりだから」と言う。だから大丈夫だって。
はい?
ちょっと待って。落ち着こう。そして5秒前にジョージから放たれた言葉をもう一度思い出してほしい。
「俺はサラに写させてもらう」
彼はそう言わなかっただろうか。
「ごめん聞き間違いだといけないから確認なんだけど、私のを写すって言った?」
「うん」
うん、じゃない!!なんでそんなキョトンとしてるの。当たり前じゃんみたいな。何言っちゃってんのみたいな。もしそう思っているのなら一発殴らせてほしい。
なにしろ先生に、というより私にたいして失礼である。(先生はまぁいい。ロックハート先生自体が失礼の塊みたいなものだ)あなた達双子は罪悪感を一体どこに置いてきたの。
「サラなら写させてくれるって信じてるよ」
「いやいやいや、まずは頑張ろうよ!」
「だってこんな本、読んでなんかの役に立つと思う?俺やフレッドの方があいつより防衛術を理解してると言っても過言じゃないぜ?」
「それは‥そうかもしれないけど」
「俺は提出した事実だけあれば良いんだ。本当に役に立ちそうなものは自分達で勉強するから大丈夫さ」
なにが大丈夫というのか。
今の会話から一体なにを大丈夫と思えというの。
けれど、ジョージの言うこともまた然りである。
課題に出されたから読んでみたものの、この本を読んでの率直な感想といえば、本当に闇の魔術に対して有効かどうかサッパリ不明だということである。
「俺たちからしたら提出しただけでも期待以上なんだよ」
なんて潔い言葉。ここまできたらもはやなにも言うまい。
というのも、彼のことを考えたとしてもこの双子なら自分達で本当になんでも出来てしまいそうだからだ。なにより彼には何度もお世話になった恩がある。
そう結論づけた私は「仕方ないなぁ」と渋々出来上がったら見せてあげる約束をした。ジョージはガッツポーズをして喜んだ。
「ただし見せてあげるだけだよ。ちょっとは文章変えたりしてね」
「朝飯前さ!」
そうこうしてると私の課題は出来上がったのでジョージにどうぞと渡す。彼は「ありがとな」と昼間のように頭を撫でてくれたので、まぁいっかと思った。
けれど、語尾を少し変えただけの9割9分私のものを丸写しした課題が3つ分提出されていたのを知るのはもう少し経ってからで、ジョージに渡すと必然的にフレッドとリーに回ることを実感させられたのだった。
Bloody hell!!