あの後ジョージと一緒に大広間に行った私は、みんなにきちんとごめんなさいと伝えることができた。
みんな本当に減点に関しては気にしていないようで、そんなに気にしなくても良かったのにと皆口を揃えて話し出し、何よりアンジェリーナとアリシアは「あんな因縁つけられて怖かったでしょう。勇気を出して私たちに向き合ってくれてありがとう」と言ってくれて、私の心はスッと軽くなっていくのを感じた。
「みんな‥ありがとう。私、もっともっと頑張って勉強して‥いつかスネイプ先生から加点させてみせる!」
私の決意が伝わったのか、双子とリーは口笛をヒューと吹いて囃し立て、そんな3人に続きみんな次々に拍手喝采に応じてくれて、グリフィンドールの席だけがまるで何かに優勝したかのようなお祭り騒ぎとなった。
そんな中ジョージはまるで良かったねとでも言うように私に微笑んでくれたので私も静かに笑顔を返した。
「サラ!よく言ったな!けど、本当に気にすることなんてなかったんだぜ?」
「そうそう!なんせ我らが弟ロニィ坊やなんて去年一夜の内に50点の減点を受けたことがある!」
「え、嘘でしょ」
「おい!勝手に掘り返さないでくれよ!」
リーとフレッドの言葉に続いて、それにあれは仕方なかったんだ!とロンは猛抗議していたけれど、ロンのそれに比べたら私の20点なんて蚊ほども気にすることはなかったことを知り、心配して損した気分になったことはここだけの話である。
「え、ハリーもなの?」
「‥まぁね」
「君もじゃないか!ハーマイオニー!」
「煩いわね、私を巻き込まないで!」
**
「よし!」
みんなが寝静まった頃、また談話室に降り立った私は魔法薬学の教科書を読むために暖炉前のソファに掛けた。今日の決意を聞いて、ハーマイオニーと双子の兄パーシーはいたく感心してくれたようで各々の教科書を貸してくれたのである(双子やロンはゴミを見るような目でその現場を見ていたのを私は見逃さなかった)
私が読み進めていると、急に男子寮の方から階段を降りる足音が聞こえて来た。私は慌てて教科書を片し、自室に戻ろうとしたが、それよりも足音の主が現れる方が先で私はその場から動くことが出来なくなってしまった。
「あれ?サラ?」
「えーっと‥」
「ジョージだよ」
「あ、ジョージ。こんばんは」
こんな時間に談話室で何してるの?とごもっともな質問を投げかけてきたかと思いきや、昼間と同様私の隣に腰を下ろした。
「私昼間言ったでしょ?みんなにも宣言しちゃったし、有言実行だよ」
そう言い、ほらっと魔法薬学の教科書を見せる。ジョージは少しだけ目を開いて「すぐに行動に移すなんて思ってなかったからちょっと驚いたよ」と言った。
そして教科書を手にとって見ると、「これパースのじゃないか。大変だ!ガリ勉が移る」と、まるで何かの菌にでも触れたかのように嫌がる素振りを見せ、それがなんだか可笑しくて私もケラケラと笑った。
「私もね、こんなに早く行動するとは思わなかった。一応昨日もここで勉強してたんだけど、ペラペラ読むばっかりで。でも今日は気持ちの入り方が違ったの」
これが気合いって言うのかな?とジョージに微笑むと、そうだねと言って微笑んでくれた。
「こんな時間にやるなら誰か誘えば良かったのに」
「さすがに自由な時間を割かせるわけにはいかないよ。アンジーやアリシアにだって1人の時間くらい欲しいと思う」
「じゃぁ俺は?」
え?
一瞬何を言われているのかサッパリ分からなくて、返す言葉が見つからずそのままジョージを見て固まってしまった。でもそんなことジョージはお見通しらしくて、少しだけクスッと笑ったかと思ったら「俺は1人の時間よりここでサラと勉強しても良いなって思うけど?」と続けた。
「‥ジョージが勉強見てくれるの?」
「そう。nice ideaだと思わないかい?」
「‥‥」
「あ、なんだよその目は!俺だって日々悪戯商品を作ってるんだ。魔法薬学くらいどうってことない」
ジョージは自信満々に答えてくれているけど、果たしてその大きな自信は一体どこからやってくるのか。
けど、アンジー達の話によれば双子は悪戯に力を注いでいるために札付きの罰則常習犯だけど成績自体は悪くないらしい。というよりも、彼らの作る悪戯商品(アンジーは碌でもないと吐き捨てていた)はそこそこに高度な魔法技術が用いられていて、先生達もその情熱を少しだけでも勉学に注いでくれればと嘆いているらしかった。
「じゃぁお願いしても‥いい?」
「仰せのままに。お姫様」
お姫様って‥。よくもそんな恥ずかしい台詞、真顔で言えるなぁ。
私の顔はきっと赤い。英国紳士ゆえの畏まった言い方だとは頭ではわかってはいても実際それを(増して同い年の男の子に)言われると恥ずかしくもなるものだ。
「あはは。サラ耳まで真っ赤!」
「ちょっと黙ってて」
こうして、私とジョージの夜の勉強会が始まったのである。