「...あれ?名前旅行じゃなかったっけ?」
硝子が寮に戻ると談話室には七海、灰原、苗字が揃っていた。年末の帰省前に彼氏と旅行なんだ〜と惚気ていたはずの彼女の姿がそこにある。まあ概ね急な任務だろうと予想は付くのだが。
「硝子センパーイ!あけおめです!もー聞いてくださいよ〜」
ローテーブルに集まっていた名前が自分の方はバタバタと駆けてくる、犬みたいだ。本当最悪だったんですよ〜と相変わらずのテンションの彼女に、きっと旅行中に急な任務で彼氏の機嫌を損ねたか、迎えに来た補助監督か同級生かを浮気相手だと勘違いされたところだろう。
「...でねっ?一方的に別れるとか言われて〜。も〜マジムカついて!あんな男、こっちから別れるっつーの!」
「なに、苗字またフラれたの?」
談話室の入口で話していた名前の後ろにぬっと大きな影が現れた。またあいつ...
「五条先輩?またって何ですか〜」
振り向いた彼女の頭にポンと五条が手を乗せる、相変わらず悪い顔でニヤニヤしてる。考えてる事が浅はかなんだよ
「俺が慰めてやろうか?」
「結構です」
「...即答かよ.....」
「...ずっと気になってたんだけどさー」
名前の入学以来何度も見てきたこのやり取りをじっと聞いていた灰原が名前の方を見て言った。
「なんで五条先輩はダメなの?いつも来るもの拒まず〜って感じじゃん苗字」
「え〜?」
「性格クズだからでしょ」
「オイ硝子」
ん〜、と灰原の言葉に小首を傾げる名前は逡巡し、
「なんでだろ、わかんない!」
あっけらかんと笑った。はぁ?と後ろの五条は不機嫌そう。もう本能でダメだと認識してるんじゃないのか
「たしかに五条先輩カッコいいもんね。彼氏だったらマジ最高かも」
え、何どうゆうこと。てか五条ちょっと嬉しそうなのムカつく、やめろ気持ち悪い
「でも〜、五条先輩と隣歩くのはちょっとムリってゆうか〜.....基本術師は性格クソだからやっぱムリかな〜!」
分かってるじゃんこの子
「皆、明けましておめでとう。珍しいね、苗字もここにいるなんて」
「あっ夏油センパーイ!」
あけおめでーす、と挨拶する名前に「じゃあ夏油先輩は?」と灰原が聞いた。「ん?何の話?」と今度は状況の飲めない夏油が首を傾げる。
「あ〜...夏油先輩はめっちゃいい人なんだけど、表向きいい人ってヤバい性癖とかありそうでムリかな〜」
え、ディスられてる?新年早々何この空気。
「...クッ、クッ...傑、バレてるじゃん...」
「....悟...」
肩を震わせて笑う五条と硝子に夏油は冷たい視線を送る。
「...夏油先輩って....」
「.....」
「....灰原、七海、そんな目で見ないでくれ」
寮に戻った矢先何この会話、なんで後輩に性癖ナンタラ言われてるんだろうか私は。
とりあえず悟、そろそろ笑うのやめてくれ
「ってか否定しないって、マジ?夏油先輩やっぱそっち系なの?ウケる」
たぶんこれ以上言っても火に油だろう、とははっと笑ってとりあえず後ろの五条を一発殴っておいた。