敷地内の桜の木が花を咲かせた。名前は進級と共に準一級術師になった。
「相変わらず苗字忙しそうだね」
「最近夜外出する姿も見ませんね」
授業終了と共に迎えに来た補助監督と任務に向かう彼女を見送り、七海と灰原は食堂でトレーを持って向かい合わせに座った。
1年の時はほぼ毎日恋人のところに行くと言って寮にはいなかった彼女、そんな彼女の名前の付箋が貼られた夕食のトレーがテーブルの隅に置いてあるのを七海は横目で確認する。いつだったか一緒に任務に向かった際に七海がしていた事だ。それはすっかり恒例になっていた。
「今日は伊地知と二人なんだって、忙しいよね苗字」
「きっとその後また別件のフォローに駆り出されるのでしょう」
近頃、というより元より、近くで手古摺っている任務があれば彼女は便利屋さんの如くフォローに駆り出されているのは周知の事。事実、何度かそれで助けられたこともある。
「よく体力続くよね、あんな細いのに」
「体力というより呪力じゃないですか。ただでさえ呪言は呪力消費が激しいのに、連続で発動できている時点ですごいですよ」
「1級になるのも時間の問題かなぁ」
「...」
「七海?」
急に黙った七海に首を傾げる灰原がこちらを見やる。
「...以前、五条さんと夏油さんが話していたんですが」
「...え?」
七海は淡々と、その時の事を話し出した。
思わず息を呑む灰原だったが、彼の心のどこかに空いていたピースが、ストンと嵌った気がして思わず眉間に力が籠もった。