目が覚めたとき、隣に灰原と七海はいなかった。
「起きたか」
声に驚いて慌てて起き上がると、サングラスを掛けていない五条先輩がこちらを見ていた。
「ぁ...」
酷く痛む喉に手を伸ばそうとすると、コツンと窓枠に手が当たり、ここが車内だと気付く。
「土地神は祓ったよ。...よく耐えたな」
五条先輩の手がポンと頭に乗った。倒したのか、あれを...やっぱり五条先輩はすごい...それより、
「七海達なら先に高専に戻った。俺が着いた時、七海がお前を帷の外に連れ出してたよ」
口を開こうとしたのを見て、五条が話す。
灰原は、
「灰原は.....、間に合わなかったよ」
開いた口が塞がらなかった
「俺が着いた時には既に、息を引き取ってた」
嘘だ、と言いたかった
そんなはずない
だって三人ならやれる、大丈夫って
言ったよね、灰原
「...しばらく休め、名前」
いつかみたいに五条先輩が近付いて、肩を貸してくれた。五条先輩の肩に額を付けて目を閉じる。
涙が溢れて止まらない
最後に触れた右手の温もりが消えないように、そっと手を握りしめる。
ねぇ灰原、
あたしたち、なんの為に術師になったんだっけ