「急だが俺はこれから出張に行くことになったから、この後は自習しといてくれ」
一年生の教室、時刻はまだ昼前。
担任の言葉にそれまで机に向かって俯いていた三人が顔を上げる。
「先生、それは任務でしょうか?」
「灰原、あぁそうだ。人手が足りなくてな」
ピシッと右手を真っ直ぐ突き上げた灰原が真剣なまなざしで担任を見上げた。
ここは高専だけあって良くも悪くも個性的な生徒が多いが、本来学生とはこうだよな、と担任は満足気に頷いた。
「ラッキー、皆でカラオケ行こ」
こういう奴とかな。
「おい苗字」
移動授業でさえもダラダラと支度をする苗字が見たこともない速さで荷物を鞄に仕舞っていく。
「授業抜け出して遊びに行くなんて、初めてだからワクワクするよ!」
「灰原、お前まで・・・」
「・・・」
「っ七海!?お前だけは違うだろ!?」
無言で鞄を取り立ち上がる七海の肩を思わず担任が掴むと、眉間にシワを寄せた七海が振り返る。
「この二人だけで行かせた方が問題でしょう」
「ウッたしかに・・・」
「先生、ホント怪我とか気を付けてね?マジうちらのことは気にしなくていいから」
心配してる風に目をキラキラさせて見上げてくる苗字。
こいつ結構あざとい時あるんだよな。術師はサバサバした女性が多いから、こういうザ・女子みたいな典型的なの弱いの分かっててやってるんだろうし。
でも実際苗字みたいな奴にやられると弱いんだよな・・・結構可愛いし・・・ってそうじゃない。
「じゃーね先生!あとで写メ送ってあげる〜」
「先生!お気を付けて!」
「お先です」
ちくしょう、こんな時ばっか団体行動極めやがって。
担任の任務がちょうど落ち着いた頃、苗字から届いた『渋谷なう』というメールには、笑顔の苗字を囲うようにマイクを持った灰原と渋い顔で不器用なピースをする七海の写真が添付されていた。