秋空ー前ー


隣に座る金髪のロングヘアがぴくりと揺れる。本人曰く金髪ではなくミルクティーベージュだと言っていたが違いはわからない、おそらく彼女の事を知る者は皆口を揃えて金髪と言うだろう。

「ん〜...七海今何時〜?」

長い前髪を手で押さえながら顔を上げる名前が眉を寄せて目をつぶっている。寝惚けている筈だがもぞもぞとポケットから携帯を取り出している。

「16時20分です。とっくに授業は終わりましたよ」

あなたが寝ている間にね、と皮肉を言うのは胸の内に留めておいた。
当の本人は覇気のない声で「ありがとー」と呟いて携帯を開いてカチカチと弄りだした。

「ご飯どーする〜?」

私に言ったのか?と未だ携帯に目を向ける彼女の横顔を見る。聞こえなかった?とこちらを見た彼女とようやく目が合う、もう寝惚けてはいないようだ。

「戻って来てから寮で食べます。現場は近いですし、そんなに時間は掛からないでしょう」

今日はこれから二人で任務が入っている。1年生同士で組む事は珍しくないが、二人きりというのはまだ片手程。彼女がこの学校に来てからまだ半年しか経っていないというのに、彼女のその持ち前の明るさからか彼女はすっかり高専の人間と打ち解けていた。...教師から定期的に叱られているのを見るが、ぬらりくらりと毎度交わしている。

「マジ?お腹空くよ〜」

ちょっと待ってね〜と鞄を膝に乗せて中を漁る。あった!と呟くと小さな黄色い箱を取り出し、箱を開けて中の袋をひとつ取り出す。

「ほい!」

ぽんと机の上に置かれた銀色

「やっぱカロリーメイトはチョコでしょ」

それを任務の時に灰原と分けて食べているのを何度か見かけた事がある。呪具を持ち歩く者以外鞄を持ち歩く生徒は少ないというのに、彼女は移動の度に何かしら持ち歩いている。その正体はこれだったのか。

「うんま〜、あたしも帰って来てからご飯食べよ〜っと」


そういえば、転入初日にも同じようにチョコレートをもらったな、とふと七海は思い出した。



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